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プロローグ
あれは、満月の夜のことだった。
わけが分からず、少年はただ立ち尽くしていた。
粗末な、いかにも急ごしらえというような祭壇の上に、四つの棺が置かれている。
息がつまりそうだった。
場は重々しい空気に包まれ、口を開くものは皆無だった。
多分、みんなも少年とおなじ気持ちだったのだろう。
わけが分からない。信じられない。いや、信じたくない……。
そんな気持ちだったに違いない。
月明かりとは裏腹に、場はとても暗かった。
あの時の光景は、少年の頭から離れてはくれない。まるで、火で焦げ跡が焼きつけられたみたいに。
自分の感情、母の顔……そして、あの少女の表情……。
彼女のあんな顔、見たくなかった。
だから、少年は決めたのだ。
いまよりも、もっともっと強くなる。
だれよりも強くなるんだ。
もう二度と、あの少女にあんな顔をさせないために。
満月は、嫌みなほどに明るかった。