表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
二億年生きた吸血鬼   作者: 前田 進士
第一章~叶えたい悲願~
8/28

集落

 

 アジトから少ししたところに、小さな集落観たいな場所がある。まぁ集落と言っても人は住んでおらず、人間同士が情報交換するとき、よく使われる、集落と扮したたまり場観たいな場所ではあるが。

 そもそも男がいるので、とてもじゃないけど、住み込むことは出来ない。

 が、短期間だけ行くなら、情報網として、非常に良いだろう。


 リュフォーが行こうと誘ってきたことは驚いたが、まだ時間もあるし、二つ返事で承諾した。


「まだ明け方なだけあって、人は少数だね・・・」

 レスイはリュフォーにつられて集落に付くと、周囲を軽く一瞥した。

 あちらこちらに、古びた建物がいくつか並んでおり、非常に小規模だが、酒場や依頼掲示板なんてモノもある。

 時間が時間なだけに、人影は殆んどないが、何処のお店からも、光が放出されており、開店はしている。

「そうね、でも、やっぱり私達に注目しているみたい。女ってだけで此処まで目立つのはいやね」

 確かに少数だが、幾つかの視線を感じる。女と言うことも勿論あるが、それを抜きにしてもレスイとリュフォーは、超が付くほどの美少女。目立って、当然と言えば当然である。

「そう言えばさぁ、リュフォー、なんでこんな時間に、集落に行こうとなんて言い出したの?」

 ただ単に、行こうと誘われただけで、何の目的なのかは聞いていない。

「別に大した理由じゃないよ。ただ、集落に一人で行くには心もとないし、ちょっとした気晴らしみたいなもの」

「へ~・・・、でも、その割には、進行方向に迷いがない気がするんだけど?」

 リュフォーの足は、明らかにどこか、特定の場所に向いている。レスイは集落へ頻繁に来る訳じゃないから、ここら辺の地形には少し疎い。

 此処に来ることは、それ相応の危険が伴うし、リュフォーもそんな頻繁に来ている訳じゃないだろう。

「・・・いい期会だからね、それに、ちょっとレスイに紹介したい人がいて」

「紹介したい人?」

「ついでに吸血鬼のことについても」

 レスイは困惑気味に首を傾げると、リュフォーは目的地に着いたのか、ある店の前で立ち止まった。

「……ここは?」

 周囲の建造物と変わらず、相対的な建物。赤いカーテンが照らされ、中の様子が見えるわけではないが、明かりはすでに灯っている様子。

 リュフォーは何の遠慮もなくカーテンを潜ると、手招きして、レスイに入るよう、促してきた。

 少し困惑しながらも、リュフォーの後に続いて入る。カーテンをめくり上げ、入ったそこには・・・、

 無数の女神像が奉られていた。

 リュフォーはそれらを無視し、奥へと、どんどん歩みを進めていく。

「カマエラさん、いますか?」

 リュフォーは口元に手を当て、声を張り上げる。

 レスイは無数の女神像に目を奪われながらも、リュフォーの後へと続く。

 ・・・しかしカマエラかぁ、私の知らない名前だ。

 すると、その奥の突き当り、背に巨剣を流離えた、一人の大男を発見した。椅子に座りながら、こちらを見ている。

「カマエラさん」

 どうやら、この人が目的の人らしい、全身に酷いあざや傷跡が残されており、その見た目からは、強者の貫録を感じさせる。

「・・・リュフォーか、今日は何の用・・・ん?そこの小童は誰だ?」

 軽い挨拶をしたと思ったら、リュフォーの背後佇むレスイに気が付き、言葉を詰まらせ眉を顰めた。

「この子は、私達星群アステリズムのリーダー、レスイ・ビリオン。で、レスイ、この方は暴欄ぼうらんの現リーダー、カマエラさんよ」

 暴欄のリーダー・・・。

 ここ『砂漠のムカデサブルム』には、格5人ずつで形成された、三希さんきパーティーというモノが存在する。


 圧倒的武力を持ち、此処、小規模の集落を監視し支配する、破壊の諸侯しょこう暴欄ぼうらん


 私利私欲、自分たちの目的のためにしか動かず、完全なる利己主義な実力者『才知エスプリ


 そして私達、聖剣を掲げたレスイを筆頭に、美少女のみで構成されているパーティー『星群アステリズム


 この三希パーティーは、ここら辺の人たちよりも圧倒で、人類復興の三つの希望的な意味で、付けられた。


 で、この方が、この集落の秩序を定め、治められる、暴欄のリーダーであらせられるらしい。


「ほう、こいつが・・・」

 カマエラも、怪訝そうに、眉を顰め、レスイを見据えた。

「レスイ、カマエラさんは強いよ、いくら貴方でも、聖剣なしじゃキツかもね」

 そう言って、リュフォーは挑発的に笑いかけてくる。

 少し、っむと来て、一戦交えてみたいと言う衝動に駆られるが、今は抑制して、我慢する。

 ・・・まぁ、『暴欄』のリーダーの噂はかねがね聞いている。

 今現在『砂漠のムカデサブルム』最強と謳われるレスイだが、その次に強いと謳われているのが、このカマエラさんらしい。

 なんでも、全長10メートルにも及ぶ魔物を、拳のみで撃破したとか。超硬質な、魔獣の殻を、ワンパンで打ち砕いたとか・・・。

 流石に比喩も入っているとは思うが、カマエラさんの、風格を見ていると、全ての取沙汰が、あらがち嘘ではないのではないかと思えて来る。

「その言い方だと、聖剣ありじゃ、オレは絶対に勝てないみたいな言い方だな、オイ」

「さすがにカマエラさんでも、聖剣を持ったレスイリーダーには勝てませんよ、っていうか、相手にもならないと思いますよ?聖剣を手にしたうちのリーダー、本気でおかしいぐらい強いですから」

 おかしいとか言われたら少々傷つくんだけど・・・。

 レスイはリュフォーの悪気のない一言で、内心ひっそりと心を痛めた。

「っふん、それでなんだ、今日はわざわざ嫌味を言いに来たのか?」

 カマエラさんも、解ってはいたのか、咳払いで促し、これ以上追及してくることはなかった。

 女に勝てないと言う事実が、カマエラの矜持にヒビを入れたのであろう。

「いえ、今日はダンジョンの事で少し・・・あと、ついでに昨日の続きも・・・」

 それだけ言うと、伝わったのか、カマエラは首を捻らした。

「ん?あ~、例の吸血鬼に付いてか・・・」

「はい」

「ん?ちょっと待って、昨日?なにリュフォー、昨日もここに来てたの?それに『暴欄』のリーダーと面識があるなんて・・・・私知らなかった」

 リュフォーは案外、レスイ達が気づかない水面下で動くことが多い。

 その分、有意義な情報を沢山持ってきてくれるのだが。やはり、一言ぐらい何か言って欲しい。

「ごめんねレスイ、多忙のレスイに余り心配をかけたくなくて・・・」

 リュフォーは仲間を本当に大事に思っていて、仲間の為なら平気で無茶をする。リュフォーの腕自体は信頼しているが、それでも、もう少し仲間である私達を頼ってもいいと思う。

 これもリーダーである私の不甲斐なさから来ているモノだろうか?

 全く、自分の不甲斐なさが嫌になる。

「おいおい、うちに辛気臭い話を持ち込むな、これでもオレは多忙の身なんだ、用を澄ます気がないなら出て行け」

 そう言って、手をぴらぴらと振る。

「っむ、せっかちですねカマエルさん・・・でしたっけ?そんなんだから、適齢期を逃すんですよ」

「あ゛!」

「せっかちな男は嫌われますよ?」

「初対面なのに失礼だなオイ、それとカマエルでなくカマエラだ‼」

 カマエラさんが、強者の威圧を放ってくる。

 が、レスイはケロッとした様子で、受け流した。

「ちょ、レイス。確かに見た目ゴツイ割には童貞間漂うカマエラって呼ばれてるけど、この世界は女が少数なんだから仕方ないよ」

「お前等殺されたいのか?・・・っていうか、なんだ!その不名誉なあだ名は‼オレまだ27だぞ!」

「え~、ここ周辺の人、27までにも結構卒業してますよ?まぁ、正統な手段じゃありませんが。まぁ、そんなことも出来ない貴方は、見掛けによらず小心者ですね」

 やれやれと言うように、レスイは首を振る。

「・・・ほぅ、なら今ここで実施してやろうか?」

「うぁ、リュフォーこの人、この集落を統べ、取り締まる側なのに、こんな事言い出したよ、ロリコンだ、ロリコン大隊長だ・・・ここは一度粛清しといた方が良いかな?」

「そ、そうねレスイ、結構信頼できる人だと思ってたのに、まさかこんなことを言い出すなんて・・・人を簡単に信じちゃ駄目ね。っあ!でも、いま思い返せば、この人が私を見る目、少しやらしかった気がするわ」

「なんだって!家のリュフォーを、もう許さない、今からでも・・・」

「お、おい、ちょっと待て冗談だ、『剣聖のレスイ』と呼ばれるお前が言ったら、シャレにならん」

 カマエラは、少し冷や汗を掻きながら制止させた。

 この目の前にいるレスイ・ビリオンと言う女は、恐ろしいことに、やろうと思えば本当に実行できてしまうのだ。

 ここ『砂漠のムカデサブルム』で、最も敵に回してはいけない化け物とも言われている。

「はぁ、雑談はもういい、本題に入れ」

「ははは、ごめんなさい。・・・今回は折り入ってお願いしたいことがございまして、此処にいる、家のリーダーに、直接吸血鬼の話をしてもらいたいんですよ」

「・・・どういうことリュフォー?」

 なぜこの人からわざわざ直接聞かなきゃいけないのか、レスイは疑問に思った。

「レスイ、ダンジョンの吸血鬼噂あるでしょ、その噂、このカマエラさんが発信者なの」

 それを聞いた瞬間、レスイの顔から笑みが消える。

「昨日私は、シャウラからその吸血鬼の話を聞いた後、風評の出どころを探るために此処に来た、そして探って、聞きまわった結果、カマエラさんへとたどり着いたの」

 そう言って、リュフォーは真面目な顔で目を光らせるのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ