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二億年生きた吸血鬼   作者: 前田 進士
第一章~叶えたい悲願~
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睡魔

 レスイはあの場を後にし、自室へと足を運んだ。


 レスイ達星群アステリズムのアジトは、無限に連なる砂漠の道中にある。

 と言っても、適当な大岩に魔法で穴をあけ、住めるように家っぽく、改造を施しただけだが。

 今さっきまでいた場所は大広間で、部屋はそれぞれ個室があり、レスイは自分の部屋の前まで到達すると、木でできた扉を無造作に押した。

 扉は『キィィィ』と古びた音を立てながら、簡単に開放する。

 レスイは腰に刺していた聖剣を、雑に放り投げ、余り綺麗ではない、毛布に顔を埋めた。

「はぁ~」

 今までに蓄積された疲労を、一気に吐き出すようにため息を吐き、仰向けになった。

「リュフォーへのアタリ、ちょっと強かったかなぁ……」

 レスイは意味もなく手を伸ばし、魔道具で照らされた、部屋周辺を窺う。水ぼらしく、何もない部屋。

 とても、16歳の女の子の部屋だとは思えない。

「なぜそこまで夢に固執する・・・かぁ」

 ナーヤに投げかけられたこの質問。ナーヤには、それとなく建前を話したが、実はそんな大層理由じゃない。まぁ、私の生きる触媒であることは間違っていないのだけど。


 この世界は少し前まであった、上位種同士の戦争によって、様々なことが激変した。

 たくさんの生命は失われ、たくさんの大地も破壊された。

 レスイは戦時中に生まれたから、戦争が起こる前の、平和な世界は知らない。

 だが戦時中、惜しくも巻き込まれ、亡くなったレスイの母は、よく語っていた。

 なんでも昔は、辺り一面に青く茂る草木が広がり、世界は自然に満ちていたと。

 男性も女性もそれぞれ手を貸し合い、共同して一緒に生きていたと。


 今となっては到底信じられない。


 大陸は、レスイの知る限り全てが砂漠と化したし。(……まぁ、私が見てきた世界が全て砂漠だっただけで、実際どれほどが、砂漠に化したかは不明だけど)


 男と女が共同して一緒に生きていたと言うのも、在り得ない。

 なんせ今のご時世、追い剥ぎや、強姦などザラにある時代なのだから。

 いますべての人間は、安定した生活を送れていない。

 なら、尚更人間通しで力を合わせて生きて行けば、何て思うかもしれないが、そうすると、幾つかの問題点が湧いてくる。例えば性別の存在。

 今、女の需用性は非常に高いのだ。

 強者しか生き残っていないこの世界。その8割の性別は男。

 女の大体は、体格も力も男に劣っていることの方が多い。だから、女の生き残りが少ないと言えば当然だ。

 だからこそ、いま女の需用性は非常に高い。

 もしレスイが人類復興のためを思うのなら、出来るだけ多くの子を産み、繁殖させるべきなのだが。

 そうは言っても10代の少女、心と体は別問題である。


 それに、いまになって思うと、平和な世界と言うのは母の作り話だったのかもしれない。

 戦争は800年も続いたと聞いている、なら、何故私の母は800年前の平和な世界を知っているのか、

 疑問は募るが、解消はしない。

「はぁ~」

 そこで、レスイはもう一度大きくため息を吐く。追憶していたからだろうか?虚ろ虚ろとして眠気が襲ってきた。


 歯磨き、水浴び、洗濯・・・やらなければいけないことは、まだまだいっぱいある。


 それに明日の準備も・・・


 もういいや、明日やれば・・・。


 こうしてレスイは、差し迫る眠気に負け、溶けるように意識を手放した。


 

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