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二億年生きた吸血鬼   作者: 前田 進士
第一章~叶えたい悲願~
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 場の空気が、またもや危うくなる。

「本気で言ってるのレスイ・・・?まさか、根拠のない噂話を信じたんじゃないよね?」

 リュフォーは、前髪を手で払いのけ、怪訝深くレスイを睨んだ。怒りを含んだような瞳だ。

「うん、今回だけは私もリュフォーの意見に賛同する。さすがに動機が不純・・・まぁ、レスイがそれでも行くって言うのなら、私は行くけど」

 珍しくレスイの意見に、ビリアまでもが否定的な感情を露わにする。しかしレスイは、ケロッとしたように笑い、冗談めかすように、プラプラと手を揺らした

「本当かもしれないじゃん、それにさぁ、もしその噂が本当だったら、私の悲願が叶うかもしれないし・・・」

 軽いレスイの言葉に、全員が表情を硬直させ黙り込む。

「貴方・・・今は私たちのリーダーなんだよ?そんな軽はずみな判断しないで!」

「そ、そうですわ、それにです。わたくしから振っておいてなんですけど、恐らく作り話かと・・・」

「関係ないよ、例えその情報に確証がなくても、噂が流れて来たってことは、0,1パーセントでも可能性がある、なら、私はその僅かな希望にでも全てを掛ける」

 何の迷いもなく決断し、胸を張る。

 ……此処まで躊躇がないと言葉もない。リュフォーは目の前にいる狂気レスイに、恐怖と暗澹あんたんを覚えた。

 それでも、必死に反論しようとするが、すぐに出た杭を打たれる。

「そんなの・・・」

「それに!言ったよね、貴方たちのリーダー張るのはいいけど、私は、私の夢を最優先に行動するって」

 黙り込む、黙り込むしかない。確かに彼女は言っていた、それが私たちのリーダーを張る条件だと。

 リュフォー達の扶翼ふよくとセットで・・・。

「ねぇ、どうしてレーちゃんは、なんで夢に固執するの?」

 レスイはいつも自分の夢追いかけて止まなかった、それが彼女の長所でもあって、奇人でもあった。

「私には夢を追いかけることしか出来ないから・・・それが人生の終点でもあって、生きる糧だから・・・それに、別にダンジョン攻略はそこまで悪い話じゃないと思うよ?確かに今まで手を出さなかったけど、ダンジョン内には超激レアのアイテムがあるかもだし。明確な目標があるなら行動も取りやすい。もし噂が誤報でも、マイナス要素だけではない」

 レスイは言いたいことを言い切ると、少しの静寂が流れた。

 数秒の静寂、その静寂を遮ったのは、リュフォーだった。

「・・・分かったわ、確かに今まで手を出さなかっただけで、マイナス要素ではない、それに、それが貴方がリーダーになる、契約だったしね」

 約束は守る。そう付け加えると、リュフォーは、他の三人を見回した。

 リュフォーの結論に、だれからも異論は出ない。

「そうと決まれば行動あるのみ、準備しなくちゃ。吸血鬼は・・・まぁ過度な期待はしすぎず、かる~くダンジョンを攻略しよう。それに実はあたし、ダンジョンに眠る未知の功績に、前々から興味はあったんだ」

 少しギスギスとしていた空気は、そのナーヤの軽めの言葉で崩落し、場の空気に明るさを取り戻す。

 こういう時のナーヤは、みんなの間を取り持ってくれるからありがたい。

「軽く言いますけどねナーヤ、様々な種族が立ち向かいましたけど、いまだにそのダンジョン攻略されたことがないのよ、少しは危機感を覚えなさいな」

「私達なら問題ない」

「っふふ、そうねビリア、確かに私達なら問題ない。さすがにナーヤは阿保で馬鹿で楽観的過ぎるけど、シャウラ、あんまり力み過ぎても、返って毒よ?」

「・・・ねぇ?今あたしを必要以上にディスル必要あった?」

 こうして私達星群アステリズムに、いつも通りの空気が戻る。

 またナーヤが弄られ、泣きついてきたが、レスイは苦笑しながら軽く促し、手を叩きみんなの注目を集めた。

「そうと決まれば、即決行、ダンジョン攻略は明日ね。各々準備を整えとくように」

 そう言って、少し長引いたが、この定例会を締めくくろうとした。

 するとシャウラから、怪訝そうにして、眉をひそめた。

「明日?・・・リーダー、場の空気を壊すようで申し訳ないのですが、もっとダンジョンに関する情報を取集してからの方がよろしいんじゃなくて?」

 シャウラの意見は最もだ、知恵は力なり、情報次第では勝てる試合も勝てなくなってしまう。

 だが、レスイはッフと鼻で笑い、どや顔で胸を張った。

「ふっふ~、その辺は大丈夫、あのダンジョンの情報は一応集めてあったから、そんな噂は今日初めて聞いたけど・・・ちょくちょくリュフォーに情報を譲渡していたし、その点は抜かりない」

 ピースサインを送る。それだけ言うと、シャウラは「さすがですわ」と、絶賛の言葉を上げ、パチパチと手を叩た。

「異論は・・・もうないね、じゃあ、また明日、今日は解散」

 今度こそ、この場はそれでお開きになった。


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