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二億年生きた吸血鬼   作者: 前田 進士
第一章~叶えたい悲願~
2/28

仲間

主人公は男ですが、予定では二章まで登場しません。

 

 無限に続く砂漠地帯に、咆哮が響き渡る。

 それは、意義もなく、理性もなく、ただ弱肉本能に従い生あるものを襲う獣。

 嗚呼、強弱もそれぞれだが、心臓を穿てば、全ての生き物同様命を絶てると言うのに、

 皮肉にも悲壮にも、人間はその獣によって、大半が撃滅されてしまった。

 それは弱者を襲うと言う本能に駆られ、思うがままに人間を駆逐したのだろう。

 嗚呼、悲しかな、人間はこんなにも強いと言うのに・・・。


魔獣スコーピオン、そっち行ったよ!」

 砂漠の砂を巻き上げながら、5人の少女達が、武器を所持して声を張り上げた。

『ギャァァォォ』

 少女たちの追う先には、とても鋭利な尻尾に、直径1メートルにもなる二本の鋏を所持した、サソリのような獣が権勢をしている。

「・・・りょーかい」

 そして、激しい攻防のさなか、五人の中、一人の少女が軽い合図を付くと、ターゲットの死角からダガーを振り上げた。

 目にも止まらない超スピード、通り過ぎ間に一閃。

 『ズドォォォン』と、巨体の魔獣の尻尾が切断される。

 魔獣は本能により苦悶を上げ、苦しみ紛れに鋏を振り回した。

「ナイス、ビリア、・・・レスイ!」

「分かってる!セヤァァッァ!!!!」

 そして彼女たちのリーダー格の少女が、後ろに待機する策略者が指示を出すのとほぼ同時期、青く光る『聖剣』を勢いよく振り上げ、ターゲットの胴体を、知里尻に切断した。

 魔獣スコーピオンの全身から血が噴き出し、周囲に血の雨を創る。

「秘儀、満身刹那・・・なんてね」

 そしてレスイと呼ばれた少女は、魔獣を細かに切断する際奪略しておいた、手のひらサイズの魔石シンゾウを、仲間たちの方へ放り投げて、笑顔を浮かべた。

「討伐完了・・・流石レイス」

「ですわね、流石わたくしたちのリーダー」

 そしてそれぞれ絶賛の声をあげながら、魔獣の死骸付近に、少女たちは集合する。

 仲間に絶賛され、褒め称えられたレイスは、ドヤ顔を創り、鼻息を荒くして胸を張った。

「ふっふーん!」

 清々しく、とても愛らしい笑顔。

 しかし、少し遅れて近づいてきた少女は、持っていた杖を魔法で消滅させて、歓喜とは別に、曖昧な顔をした。

「うん、いや、倒すことはいいんだけどねぇ、・・・これ、もっとマシな倒し方出来なかったの?」

 灰色の髪を揺らし、死骸に目を向ける。

 全身くまなく切断され、原型は見る影も残ってない。硬質な鋏部位でさえ、粉々に切断されている。

 全くと言うように鼻根を押さえ、「はぁ~」ため息を吐いた。

「そうだよぉ、これじゃあ回収済みの魔石と、ビーちゃんの切り落とした尻尾以外使い物にならないじゃん。こいつの素材、加工したら結構強い武器になりそうだったのにさぁ」

「ご、ごめんね、リュフォー、ナーヤ」

 鼻を高くしたレイスだが、仲間から的確な感想と叱責を受け、少し歯切れが悪くなる。

「まぁ、毎度のことだから諦めたけどね・・・、さて、一応魔獣スコーピオンの死骸は回収しておきましょ、胴体の部位なら調理次第では食べられるから」

「え~、こいつ食べるの?こいつ体内に猛毒があるって話だよ、調理次第では下手しい死ぬよ?リューやん調理できるの?」

「リュフォーが言うなら大丈夫、それに貴重な食糧、一遍たりとも無駄には出来ない」

 このグロテスクな物体を見て、褐色肌の少女は、引きつった表情で嫌厭けんえんするが、

 ビリアと言う小柄な少女はそれを軽く流し、リュフォーと言う少女の指示に盲従した。

 否応なく言わせないそのビリア態度に、褐色肌の少女ナーヤは一度大きなため息を溢すが、渋々な態度で仕方なく、ナーヤも死体の回収作業に移った。

「そうですわ、ね。・・・それにこの前ナーヤさんが食糧庫の監視をさぼったせいで、ほとんど盗まれてしまい、貯蔵がないことですし」

「ッう・・・ご、ごめんてシャウ姉。ついうっかり・・・」

 更に追加で指摘されたナーヤは、痛いところを突かれ少し口ごもる。

「貴方のうっかりは幾度目ですか」

「あはは・・・嫌でも別に・・・」

「はいはいそこまで、取り敢えず回収してアジトに戻ろ、言い合いはそれから」

 ナーヤとシャウラが言い合いを始めようとしたので、レイスは手を叩いて仲裁し、制止させた。

「そ、そうですわね」

「だねぇ」

 そう言うと、二人とも素直に従い、魔獣の回収作業に移ってくれる。

 レイスはそんな二人を見て、いや、そんな遠慮のないやり取りをする仲間達を見て、とても穏やかな気持ちが込み上げて来た。


 小柄でいつも無表情のビリア。

 お姉さんらしく、誰よりも秀麗なシャウラ。

 いつもみんなをまとめ、引っ張ってくれるリュフォー。

 活発で皆に元気を振りまくナーヤ。


 皆大好きで、とても大切な仲間。


 こんな無常で、残酷な世界だけど、仲間たちと一緒なら、これからも生きて行ける。

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