~序章~
「オレの安眠を妨げた愚か者は貴様か?」
不機嫌そうに呟き、クリスタル内部で睡眠を取っていた青年が、クリスタルを穿ち鬼没した。周囲に凄まじい威圧を放ち、仁王立ちで風格を見せつける様な佇まいをする。
「っ!・・・あ、貴方様が、あの、何でも願いを叶えてくれると言う伝説の吸血鬼なのですか‼」
思わずと言った調子で少女は叫び、驚愕の声と共に喚呼した。
ここはダンジョン最下層。視界の先には、一面クリスタルが広がっており、周囲を神秘的な光で照らしている。
そしてたった今、そのクリスタルの中心部に、まろやかな動きで美青年が仁王立ちをしている。
その動作や姿はとても美しく、逆光するクリスタルの青い光が、対照する青年の赤い瞳を際立たせる。
正統派のイケメン、どこか過激の印象を与える、儚くて無常な美青年。
これが噂に聞いた吸血鬼なのかと、探し求めていた吸血鬼なのかと、少女は目を見開き、少し窮してしまう。
見た目は完全に15,6歳・・・だが、噂では悠久の時を生きる吸血鬼、見た目通り年齢ではないだろう。
この世界では吸血鬼は最強の種族。伝承では、もう何年も前に絶滅した最高異種と認知しているのだが。噂は本当だった、やはり絶滅したと言うのは語弊だったんだ。
少女は歓喜を浮かべた。青年はそんな少女を神妙な目つきで見つめ、匂いを嗅ぐようにクンクンと鼻を鳴らす。
「貴様・・・人間か?」
「わ、私の名前はレスイ・ビリオン!・・・もしあなたが噂の吸血鬼ならばお願いです!どうか、どうか、私の仲間を助けてください!」