2話 謁見の間でも殺されるんですか?
「まずは何故そなたを勇者としたのかを説明せねばあるまい。そなたも困惑しているであろうしな」
なるほど……
異世界の私も、自分が勇者と呼ばれるようになった理由は知らないらしい。
その理由はこの後話してくれるみたいだし、推測する手間が省けた。
「皆の者!」
「「「「はっ!」」」」
この場に居た兵士のほとんどが出て行く。
残ったのは王と大臣、そして豪華な鎧を身に纏った人が数人。
おそらく国の兵士を纏める立場にある人達でしょう。
わざわざ国の重要人物だけを残したという事は──
「普通の兵士に聞かれては不味い話ですか?」
「話が早くて助かります。この事は国の極秘事項に当たるのです。私は我が国【ダリア王国】を守る騎士団の副団長を務めているファウト=アルドリヒ。どうかお見知りおきを」
私の質問に答えたのは、ここに残った人達の中でも一際巨大な剣を背中に背負った初老の男性ことファウト=アルドリヒ。
それと同時に、ダリアというこの国の名前も分かった。
にしても……この場にファウトさんより豪華な鎧を身に纏った人物は居ない。団長は何処にいるのだろうか。
「この事については私から説明いたしましょう。ノア殿もご存知の通り、この世界の魔物が近年活発化しています。原因は──」
そうしてファウトさんから話された内容は、よくある異世界転生物とまるで同じものだった。
ざっくり纏めるとこんな感じ。
──魔王が復活して、それに伴って世界中の魔物が活発化した。
ダリアには『魔王が復活した際に勇者が産まれ、勇者は魔王を倒し世界を平和に導いた』という伝承が残っている。
伝承が本当なら、魔王が復活した今、勇者がこの世界に生を成しているかもしれない。
そう考えた王は人探しの魔法を使い、辺境の村で勇者の素質を持つ私を見つけた──
魔法に加えて魔王に魔物。
私の知っているファンタジーの世界のまんまだ。
魔王が復活した事がダリアの機密事項に当たるらしい。
時間の問題ではあるけど、国民にはバレていないらしい。
「今のそなたは弱いかもしれんが、鍛えれば強くなる素質をもっておる。どうか勇者として世界を救ってくれないだろうか。勿論出来る限りの支援はさせてもらうつもりじゃ」
なるほど……私に求めている事は分かった。
それで私の返答だけど──
「お断りさせて頂きます」
「な、なぜじゃ!?」
「魔物と戦うのが怖いからです。いくら私が勇者でも、魔物との戦いを強制する権利は無いはずです!」
それっぽい事を言ってみるけど、本当の理由はスローライフを楽しみたいから。
せっかく異世界に来れたのにスローライフを楽しまないなんて勿体無い。
前世? の様に色々なものに縛られる生活はもう懲り懲りだ。
わざわざ勇者をやって同じ様に縛られる必要も無い。
「貴様、王に向かって無礼な!」
一人の騎士が私を恫喝する。
それを見た王は──
「良い、確かに勇者ノアの言う事にも一理ある。勇者はまた探せば良いのじゃ。勇者ノア──いや、ノア=フレイよ。そなたを村に帰そう」
私を村に帰すことを約束してくれた。
……ちょっと予想外。
『勇者になる事を決意するまで謁見の間から出さない!』位言われるつもりでいたから拍子抜けだ。
まあ結局私の思う通りになった訳だし何も文句は無いけど。
「では皆の者。ノア=フレイをおかえしせよ!」
そうして村へ向かう準備が整った。
王に一礼したところで、その王に呼び止められる。
「さて、これでそなたは勇者ではなくなった。と言う事でだな……」
王が言葉を切った辺りで、私の視点が一気に下がる。
……え?
「一般人が国の機密を知った罪で、そなたを首切りの刑に処す」
最後に見えたのは首から上が無い私の身体。
「ああ、私は約束は守るから安心せい。そなたはちゃんとお還しさせてもらう」
その言葉を皮切りに、私の意識は血で染まった床に溶けて消えた。
〜地点:ダリア城 謁見の間〜
…………はずだった。
「勇者ノア=フレイよ、よくぞ招集に応じてくれた」
「嘘、ウソ……!」
二度目の景色。そして二度目の転生。
一度目よりも状況が理解出来ない私は、ただ呆然とする事しか出来なかった。