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第1章第2話 ~大魔王降臨~

「・・・・・・眠い。」


木漏れ日輝く森の中。顔に日の光が当たって目を覚ます。


眠気で頭がぼーっとしており、「起きたくないなぁ」と思うほど気持ちがいい暖かさである。


「・・・・よいしょっと。」


それでも起きなきゃと目を開けて体を起こす。


この異常事態に緩慢と寝ていたら死んでしまうと考えたからだ。


そう、辺りは深い森の中。都会のコンクリートジャングルではなく人の手の入らない大自然の真っ只中。


そして同様に自分の体の違和感も確かめなければならない。先ほどから腕に当たっている本来自分が持っていない筈の物体が気になっているからだ。


都合よく近くにあった水たまりを覗いて自分の容姿を確認する。


「ふむ、やっぱり・・・か。」


水に反射して現れたのは、小柄な体型の美少女であった。


肩までかかる綺麗な黒髪と黄金色をした瞳を持ち、頭頂部には猫耳。


顔形は可愛いと思える造形をしていながら、目元が少し吊り上げっており、カッコ可愛いと表現できる容姿。


体には金の装飾の付いた白いレオタードと黒を基本として所々に赤い線が入った鎧。


腰の後ろから伸びている細長い尻尾は丸みのある装甲のようなもので出来ており、尻尾の先には刃物のような物が付いていて、先の方から十字に重なっているように見えていた。


そしてその姿は自らが作り上げたゲームのキャラに容姿がそっくり―――というかそのものであった。


つまりは信じがたいことに、自分がつい先ほどまでプレイしていたSFファンタジー系オンラインゲーム『カオスゲート・サーガ』で作り出したキャラになっているということである。


なぜそうなっているのかまでは分からないが、今現在の状況は一昔前に流行ったライトノベルに出てくる状況と酷似しているために、それと同じ状況になったのではと思い、然程取り乱すことはなかった。


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2120年.VR技術が確立し進歩した時代。


今ではその技術は様々な分野へと応用・転用され、現代社会に根付いていた。


科学研究や医療、日常生活にあって当然の物となって久しい昨今。当然それは娯楽であるゲームにも使われている。


というよりも初めに使われたのはゲームが最初であったと言える。


『カオスゲート・サーガ』


日本国内に数ある人気ゲームの1つで、フルダイブ型VRMMORPGである。


国内だけでなく世界中で人気のゲームで、それぞれの国で独立したサーバーで運用されており、その総数は1億人規模にも及ぶという。


人気の元となる理由はいくつか存在し、一つはキャラの作り込み要素である。


それぞれ1000種類ある身体パーツを自由に選択し細かい単位まで操作することが可能。髪の長さから瞳の色、指の長さや陰部と言った部分まで、相当に細かいパーツまで作成することが出来るのである。


二つ目は選択できる種族の多さ。


人間だけでなく有名どころのエルフやドワーフ、獣人といったものだけでなく、スライムやアンデッドなどのモンスターも選択出来、その選択数は600種類にも及ぶ。当然それぞれに対応するパーツも用意されているため、その作り込み要素を構成するパーツは1万種類を優に超すものと言われている。


三つ目は自分の選択次第で好きな職業に就くことが出来ることである。


このゲームにはアバタ―キャラの種族や職業に関係するレベルというものが存在せず、アバタ―キャラでトレーニングを行ったり、覚えた各種スキルを鍛え上げることにより成長して強くなっていく。


そのため選んだアバタ―キャラの育成の仕方によっては、自身が理想とするビルド構成でのロールプレイだって行えてしまうのである。


そしてこのゲームの舞台となるのが『アンリミト』と呼ばれる世界であり、その世界に点在する6つの大陸である。


『カオスゲート・サーガ』はストーリーとしての基本骨子となるものはあるが、それに沿ってプレイするわけではなく、プレイヤーの好きな遊び方でこのゲームを楽しむといったコンセプトで作られている。


冒険者としての活躍や農業を行う農民、人類の敵対者として世界を征服する等、プレイヤーの行動如何によって様々なプレイを行え、またプレイヤーの起こす行動によって流動的なイベントも発生する時もある。


それだけでなく、『カオスゲート・サーガ』を運営していた会社は、自分たちが展開していた他のゲームとの連携・行き来すら可能にさせていた。


設定こそそのゲーム世界に沿ったものを基準にしていたが、ロボットや宇宙船などのSFモノや、ホラー系、FPSなどの銃撃アクション系などのアイテムやモンスターなどをファンタジー世界にぶち込むなんて暴挙を行ったりすることもあり、その所業がより混沌としている様から敬遠するプレイヤーも多くいたが、その名に恥じないゲームだと逆にのめり込んでしまうプレイヤーもまた多くいた。


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そんなゲームの世界に、何の因果か自分が入り込んでしまっているのである。


肌に当たる風の感覚や匂い、触れている地面の感触が完全にリアルのそれなのがはっきりと分かる。


ゲームでは此処までリアルに感じられる程五感をトレースさせることは出来ない。


五感を完全にトレースした場合、もし怪我をしたら現実の肉体にまで影響が及んでしまう可能性も考えられ、法律により禁止されているからだ。


そして今私がこの場所にいるのは、()()()()()()()()()()()()()()()()が原因ではないかと考える。


・・・考えるが、切羽詰っている状況下の中でそれを思い出しても意味はなく。まずは自らの安全確保が先であろう。


とりあえずは自分の体の確認から始める。


元々の自分の体ではないのでどんな不具合があるのか分からないからだ。


まずは自分のアバタ―キャラについて思い出してみよう。


『ティキグニア・フェルヌス・クディア』。


種族は『獣魔族(ビーストデビル)』と呼ばれる獣武種(ビースト)魔導種(デーモン)混血(ハーフ)で、性別は女性。身長157cm、スリーサイズもその身長に合わせた平均的な体型。


混血(ハーフ)』とは言葉通り異種族との間に生まれた種族であり、基本的に元となった種族からは半端物として嫌われている。


親の種族によってステータスや能力が決まり、また混血の特徴として両親の特性を引き継ぐことが出来、デメリットは両親双方のデメリットも引き継ぐことである。


フェルヌスの場合は混血の元となったのは、母親に当たる存在は状態異常耐性が低く、魔法行使が苦手というデメリットを持つ獣武種。その中でも一際身体能力が高く設定されていて王族とも呼ばれている『虎王族』。


そして父親に当たる存在が魔法系全般を得意とする魔導種の中でも、奇形的な容姿をしていながら手先が器用であり、魔法行使をもっとも得意とし、光属性及び回復魔法使用不可能で、被光属性ダメージ二倍、回復効果が反転するといったデメリットを持つ『邪龍族』という魔導種の種族の一つなのである。


また混血のメリットはそれだけでなく、受け継いだ片親のデメリットはもう片親の持っている能力がそのデメリット分の能力を上回っていれば、その部分は消失し上書きされるのである。


これらの情報をまとめると、『ティキグニア・フェルヌス・クディア』と呼ばれるキャラは、高い身体能力を持ち、魔法行使を得意としており、状態異常に罹りやすい。光属性のモノは使用出来ず、自身への被ダメージは二倍となる。また回復魔法も使用不可能であり、掛けられると回復するどころか逆にダメージを負ってしまうという特徴と能力を持っている。


今度はステータスを確認するためにメニューを開こうとする。


「『ウィンドウ展開』。」


それを口にすると目の前で宙に浮かぶように半透明の板が現れる。


ゲームが現実となった事で開くことは出来ないかもしれないと考えていたが、現状は開くことが出来るので一先ず安心した。


『メニューウィンドウ』と呼ばれるそれは、『カオスゲート・サーガ』における基本システムの一つであり、プレイする上で欠かすことのできないものである。


メニュー欄には左右の表示が異なり、画面左側は名前表示から始まり、『アイテムボックス』、『装備品』、『フレンド確認』、『所持スキル確認』、『戦技・魔技・特技』、『ヘルプ機能』、『オプション』の七つの表記が出ている。



画面右側はアバタ―キャラの各種ステータスが表記されており、


体力を表す『HP』。


魔法使用のための魔力を表す『MP』。


運動や戦技と呼ばれる武器技などを扱う時に使用するスタミナを表す『STA』。


力の強さを表し、物理攻撃力に影響を与える『STR』。


体の頑丈さを表し、物理防御力に影響を与える『VIT』。


敏捷性を表し、走る速度や敏捷性に影響を与える『AGI』。


魔法の強さを表し、魔法攻撃力に影響を与える『INT』。


魔法の抵抗値を表し魔法防御力に影響を与える『MND』。


器用さを表し、遠距離武器の命中率や物造りの完成度に影響を与える『DEX』。


幸運度を表し、状態異常に罹る確率やレアアイテム獲得確率等に影響を与える『LUK』。



というように、十種類のステータスが存在している。


そして【ティキグニア・フェルヌス・クディア】のステータス値だが、



種族名:【獣魔族(ビーストデビル)

名前:【ティキグニア・フェルヌス・クディア】

性別:女性

称号:大魔王

年齢:25歳

『HP』:634791/634791   『MP』:70634/70634

『STA』:96840/96840

『STR』:49021(99999)   『VIT』:45921(99999)

『AGI』:58941(99999)   『INT』:63293(99999)

『MND』:61875(99999)   『DEX』49288

『LUK』:12947(99999)



と、上記の通りである。


ちなみにカッコ内の数値は武器防具を装備した際の数値であり、装備している最中はカッコ内の内容が反映される。


ステータス値を見て、その数値はゲームの時と変わらないことを確認した後、今度は装備品を確認する。


装備可能部位はそれぞれ『頭部』、『アバタ―ウェア』、『インナーウェア』、『アーム』、『レッグ』、『アクセサリー(1)』、『アクセサリー(2)』の7か所存在し、それ以外に武器と盾をを装備することが出来る。


現在の装備品は以下の通り。



【ヘッド】:『呪われし魔王の兜』

(闇属性耐性が最大値まで上がり、素ステータスの『INT』が最大値まで上昇。呪いにより効果反転。またグラフィックカスタムにより、デザインが猫耳を包むようなヘッドセットと薄透明な黒いベールを合わせた形状になっている。)


【アバタ―ウェア】:『呪われし戦女神の鎧』

(光属性耐性、回復効果量が最大値まで上がり、素ステータスの『VIT』も最大値まで上昇。呪いにより効果反転。)


【インナーウェア】:『呪われし一角獣の白布』

(素ステータスの『MND』が最大値まで上昇。呪いにより『MP』と『STA』の自動回復量が本来の10分の1にまで下がる。)


【アーム】:『呪われし龍王の手甲』

(風・火属性耐性が最大値まで上がり、素ステータスの『STR』が最大値まで上昇。呪いにより効果反転)


【レッグ】:『呪われし氷雷虎の脚甲』

(水、雷属性耐性が最大値まで上がり、素ステータスの『AGI』が最大値まで上昇。呪いにより効果反転)


【アクセサリー(1)】:『反転の首飾り』

(首飾りに付属されている宝石のスキル内容に応じた効果を反転させる。被物理ダメージ、被魔法ダメージ、回復魔法、デバフ、呪いの効果の宝石を付けている。)


【アクセサリー(2)】:『呪われし巨神の指輪』

(状態異常耐性50%上昇と『LUK』が最大値まで上昇。呪いにより効果反転)



これらの装備は『カオスゲート・サーガ』で材料を集めて自ら作り上げたものである。


また武器にも拘っており、その手に持っている主兵装である武器『パニッシュメント・ハルバード』は色々なギミックが詰め込まれたある種のロマン武器である。


・・・と、言っても普段は普通にハルバードとしての使い方しかしていないので機会があれば各種ギミックも試そうと思う。


・・・以上の基本情報を確認した後、今度は順次各メニューを調べる。


『アイテムボックス』の項目を操作して所持アイテムの確認を行う。


「ボックス内の所持品はプレイしていた頃に持っていた時のままか。アイテム倉庫にもアクセス出来るみたいだから、少なくとも持ち物で困ることはないか・・・。」


続いて『フレンド確認』について、確認する。


「・・・うん、全部灰色。この場合はあの現象が起こった時にログインしていなかったか、確認できる範囲にいないから灰色のままなのか。それともそれ以外の理由か。・・・まあ、名前が確認できるだけでも良しとするか。」


『所持スキル確認』を見てみると、これまで獲得し、成長させてきたスキル群が出てきた。


・武具スキル

片手剣LV10、大剣LV10、短剣LV10、刀LV10、斧LV10、槍LV10、鎌LV10、鈍器LV10、鞭LV10、杖LV10、魔道書LV10、徒手空拳LV10、暗器LV10、銃器LV10、弓LV5、盾LV10、大盾LV10、鎧LV10、ギミック武器LV10


・魔導スキル

無属性魔法LV10、火属性魔法LV10、水属性魔法LV10、風属性魔法LV10、土属性魔法LV10、雷属性魔法LV10、木属性LV10、闇属性魔法LV10、死属性魔法LV10、強化魔法LV10、弱体魔法LV10、幻影魔法LV10、呪魔法LV10、契約魔法LV10、召喚魔法Lv10、錬金魔法Lv10、隷属魔法Lv10、多重詠唱LV10、並列詠唱LV10、無詠唱LV10、


・技能スキル

鍛冶LV10、裁縫LV10、料理LV10、建築LV10、掃除LV10、調合LV10、格闘(豪)LV10、格闘(柔)LV10、二刀流LV10、投擲LV10、毒LV10、麻痺LV10、睡眠LV10、石化LV10、魅了LV5、魔力操作LV10、索敵LV5、危険感知LV10、気配探知LV10、直感LV8、連撃LV10、回避LV10、踊りLV10、歌唱LV6、交渉術LV3、商売LV5、詐欺術LV3、歩行術LV10、防御術LV10、物理耐性LV10、魔法耐性LV10、鑑定LV6、隠密LV5、状態異常耐性LV5(種族的最大値)、千里眼LV4、騎乗LV6


・特殊スキル

混血LV―、大魔王LV―、王族LV―、武芸百般LV―、一騎当千LV―、将軍LV―、殺戮者LV―、蹂躙者LV―、撃滅する者LV―

強奪者LV―、破壊魔LV―、神に導かれしものLV―(NEW)、召喚されしものLV―(NEW)、


「・・・スキルは新しく追加されたもの以外は変化はなしか。多分この最後の二つが、私がこの世界に来た原因に関係するんだろうな。」


『戦技・魔技・実技』はこれまでスキルやクエスト、イベントなどで覚えてきた数々の技や魔法の事である。


「・・・うん。使用不能を示す灰色表記になっている物は無いし、問題なく使えるみたいだな。後でちゃんと使えるか試してみるべきだな。」


『ヘルプ機能』は『カオスゲート・サーガ』をプレイするために必要な情報やサポート機能が入った項目である。


「・・・モンスター・アイテム図鑑は過去記載した内容がきちんと載ったまま。各種ヘルプ内容も変わっていないな。」


『オプション』はゲームの環境設定やログイン・ログアウトが表記されていた項目なのであるが、・・・・・・


「・・・駄目だな、灰色表記になっている。これの中にログアウトボタンがあったんだけど、現状開けないのであれば帰れないのと同じだな。」


調べた結果としては、オプション機能以外はゲームをプレイしていた当時の状態のままこの世界へ来てしまったようである。


正直まだゲームの中じゃないかと疑ってはいるのだが、帰ることが出来るようになるまでは、今いるこの世界が自分の現実なのだと認識するほかないだろう。



「とりあえずは状態確認はできたし、まずは人かそれに関係する建造物でも探すか。」


そう言いながら立ち上がって歩き始める。


分からないことだらけであるが、何も行動を起こさないで待っているだけでは変化は起きないと分かりきっているので、まずは行動あるのみである。


「山中や森の中での遭難時の基本は川等の水辺を探す。そんでもって下流の方へ向かえば森の出口に行けるだろう。」


悩んでいても仕方がないので、まずはこの森から出ることから始める。


森から出れば視界も開けるし、どこか人が存在している痕跡でも見つかればそれを辿って町などにも行ける。


そんな楽観的ともいえるようなことを思い浮かべながら、私は森の中を歩いて行った。






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