第1章プロローグ ~物語始~
初めての小説投稿です。どうぞよろしくお願いします。
各章ごとに完成したら順次投稿していく予定です。
月明かりが優しく照らしてくれる真夜中。
とある一軒の家の中、一人の女の子が話し出す。
「ねぇねぇ、お母さん。あの絵本を読んで!」
ベッドの上でお腹まで布団を掛けた女の子が、ベッドの横に座る母親に物語の本を読んでほしいとせがむ。
「はいはい。分かったよ。お前は本当にこの本が好きだなぁ。」
母親はそんな少女の様子に苦笑しながらも本棚に入れていた一冊の絵本を取り出す。
「だってこれ、すごく面白いんだもん。何度だって読みたい!」
「ふふ、そうか。なら今日も読んであげようか。」
母親はそう言って、本をめくりだす。
そのタイトルは『大魔王と勇者の冒険譚』と書かれていた。
「『昔々、あるところに平和な村に暮らす平凡な少年がいました。少年は農民の生まれで毎日畑を耕していました。ですが、少年にとってそんなことは苦しくありませんでした。彼は自分の家族が大好きで、自分の住んでいる村も大好きだったからです。』」
母親は少女に聞えるように優しい声音で絵本を読む。
「『そんなある日のこと。彼の村に一人の大司祭様がやってきました。それは毎年一度だけ子供たちの才能を確認する祝福の儀が行われる日でした。多くの子供たちが大司祭様の力で自分たちの才能を確認してもらいました。それは戦士や魔法使いなどの戦いに秀でた物であったり、商人や鍛冶師などの生活に根付いた物であったりしました。』」
母親は次のページをめくる。
「『そんな中平凡な少年は大司祭様にこう言われました。「すばらしい。君は勇者になれる才能を持っているよ」と。少年は驚きました。「自分にそんな才能があるなんて」と。彼の家族は驚きつつも喜びました。「まさか自分たちの子供が勇者になるだなんて」と。』」
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「『少年は大司祭様に勇者になることを勧められました。少年は悩みました。少年の家族からも勇者になることを勧められました。少年は両親と分かれるのは寂しかったのですが、「みんなが望んでいるのならば」と、勇者になることを決めました。』」
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「『少年が勇者になるためには色々と準備が必要だと、大司祭様はお貴族様へとお話を持っていきます。少年の後見人となり、彼が勇者になるのを手伝ってほしいと。お貴族様はそれを聞いて頷きました。「彼を立派な勇者にして見せましょう」と。』」
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「『そうして少年は家族と村のみんなに見送られて旅立っていきました。少年は村から離れることを寂しく思いながらも「自分はこれから勇者になるのだから」と涙を堪え、前を向きました。みんなに誇れる勇者になったら村に帰って自慢してやろうと心に決めながら。』」
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「ですがこの時の彼は、自分がこれから長く苦しい旅路を歩いて行くことになるなんて思いもしておりませんでした。」
――――――「これは勇者を目指す少年と、そんな彼にであった大魔王との冒険のお話です」―――――