4話 目覚めると…
目を開くと知らない天井が目に映った。あぁ、そうか、僕は自分の街から逃げ延びてきたんだ。僕は木でできたベットの上に寝かせられていた。
初めて見る天井から目を移し部屋全体を見る。5畳ほどの広さで、ベットと小さな椅子が置かれただけの狭い部屋。ベットの横には水が溜まった桶が置かれており、誰かが僕の看病をしてくれたことがわかる。
そこから、はい出ようと体を動かそうとした瞬間全身に鈍い痛みが走った。
痛い痛い!全身筋肉痛になってる!
そりゃ、一晩中走り続けたんだ全身筋肉痛になっても何もおかしくないか。1人で納得して、痛みを堪えて体を起こし、ベットの横にある窓から外の様子を見る。
「おぉ」
思わず声が出るくらい綺麗な情景がそこにはあった。この家の周りにはほかの家は見当たらず、代わりに木々が生い茂っており、透き通った大きな湖がそこには広がっていた。
「ザ・森小屋って感じかぁ」
「目が覚めたか」
突然声をかけられたことでビクッと反応してしまい、それによってまた鈍い痛みが全身に走る。
「っ痛!」
「すまない、驚かせたか。大丈夫か?」
「はい!大丈夫です」
そこには翡翠色の髪と瞳をもった、この世の人とは思えないくらい綺麗な女性が立っていた。
「えっ?あ、あなたは?」
「私はサリエルだ」
「えっとはじめまして、アレンです」
簡単な自己紹介を終えたあと沈黙が流れる
「あ、そうだ!昨日僕を救ってくれた人はどちらにいらっしゃるのでしょうか」
「ん?私だが?」
「えっ!?いや、でもウォーウルフってものすごく強い魔物じゃ」
「私が昨日斬ったな」
再び沈黙が流れる
その沈黙をサリエルが撃ち破る
「とりあえずご飯にしよう」
「はい」
そう言って小さな寝室の横の部屋に移動するとそこはリビングだった。そして、リビングの机の上には美味しそうなご飯が二人分用意してあった。
「たまたま作りすぎて余ったから君も食べるといい」
「ありがとうございます」
食事はスープにパン、そして、薄くスライスした肉が置いてありそれをパンに挟んで食べるらしい。
「美味しいです!ありがとうございます」
「私は余った料理を食べてもらっているだけだ。礼はいい」
どうやらこのお姉さんは少しクーデレ要素が入ってるらしい。
食事を終え、2人で机を挟んで向き合って座る。
「昨日は助けていただきありがとうございました。その上こんなご馳走まで頂いて本当に感謝しています」
「君は歳の割にものすごくしっかりしているんだな」
「いいえ、そんなことはありません。それよりさっき魔物を斬ったと仰ってましたが、サリエルさんは高名な魔法使いなのですね」
「いや、そんなことは無い。私は一切魔法が使えないからな」
「はっ?」
それを聞いて思わず敬語を忘れてしまう。
「いや、でもウォーウルフはものすごく強い魔物だって...」
「そうだな」
何がなにやら全く分からず頭がショートしてしまう。
そこから再び沈黙が流れてしまう。
今日は沈黙している時間が人生で1番多い日だろう。たこの世界に来て4年しか経っていないが…
「魔法を使わずに魔物を倒すなんて可能なんですか?」
「可能だな」
「どうやって?」
「剣で。...ついてこい」
そう言うとサリエルは徐ろに立ち上がり小屋を出ていった。
サリエルに後ろからついて行くこと約5分、森の中でも少し開けたとこに到着した。
「ここで何をするんですか?」
僕にとっては初めての街の外。街の外には魔物がいっぱいいると聞いており、昨日、その魔物に襲われたばかりである。そのトラウマが蘇り自然と足が震える。
「少し離れていろ」
そう短く僕に告げて開けた場所の中央に近づいていくと、突然森の中から3メートルほどの大きな蛇が出てきた。
「シャーッ」
蛇が威嚇してくる。
「サリエルさん!危ないですよ!」
僕は咄嗟に声を上げるが彼女は全く聞いていない。
「まぁ、こいつでいいか」
サリエルはそう言うと腰に差していた剣を抜き、踏み込んだと思うと、弾丸のような速さで蛇に向かって飛び一瞬で蛇を細かく輪切りにしてしまった。
「こうやって倒す」
僕は状況の理解が出来ずただ輪切りになった蛇を眺めていた。
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