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3話 決別

少し長めになりました

そんな悲しい2歳の誕生日から2年たち僕は4歳になった。だが相変わらず、魔力操作と魔力容量は増えていくのにウォーターボールは手のひらに水溜まりができる程度だし、ほかの属性の初級魔法も同程度の効果しか現れなかった。これはもう認めるしかない。僕はまったく魔法の才能がないのだ。しかし、それを知りながらも魔法の修行は続けた。

この世界は魔法が全ての世界である。日々の生活は魔法がなければ生きていくことすらままならない。特に冒険者になるには魔法がなければ街を出た途端に死んでしまう。魔物とは動物内の魔力が暴走して姿形が変わってしまった存在のことであり、彼らも魔法を使ってくる。そんな彼らに弓や剣で向かっていっても瞬殺されるというのは小さい子供でも理解出来るこの世界の仕組みであった。つまり僕は自分の身を守る術も持たず、自分1人で生活する方法も知らないお荷物の称号を早くも手に入れてしまったのである。


そんな状態に絶望しながら、それでも魔法への思いを断ち切れず日々を過ごしていた。そんなある日、いつも通り魔力操作をこなして眠りにつこうとすると突然轟音が街全体に鳴り響いた。


「ドォォォォン!!!」

「アレン、大丈夫?!」

大丈夫か?!」

父さんと母さんが慌てて僕の様子を見に来た


「うん、大丈夫だよ。外でなにかあったの?」

「魔物が襲撃してきた!父さんは外に様子を見てくる!アレンは母さんと一緒に逃げなさい!」

「どうして、こんな何も無い街に魔物が...」

「それはここで話してても分からない!俺は街の人を1人でも街の外に逃がすために魔物が暴れている所に行く。アレンを頼んだぞ」

「あなた!1人じゃ危ないわ!私も行きます!」

「カレンが俺と一緒に来たらアレンは一人になるだろうが!俺になにかあったらアレンは1人で残されるんだぞ!お前がアレンと一緒にいてやってくれ!」


それから母さんはしばらく黙り込んだあと、決心したような顔になり


「わかったわ、絶対に戻ってきて...」

「あぁ...必ず戻る」


母さんにそう言ったあと僕の方に向き直り


「アレン、これからの人生で魔法が使えないことで苦労するだろう。だが、これだけは忘れるな。自分が持てないものを必死に求めそれに追いすがるより、それを持つ友を見つけ、助け合い生きていけ。そして、お前も相手が持たないものの代わりとして助け合い生きていくんだ。人は決して1人では生きていけないからな。愛してるぞアレン」


最後に僕をめいいっぱい抱きしめ、すぐに装備を支度して外に出ていった。母さんも思うところはあっただろうがそれを抑えて僕の手を引っ張り騒ぎとは反対側に逃げていく。


騒ぎのあるほうでは建物に火がつき夜なのに街中は昼みたいに明るい。そしてその方角からは街の人達の悲鳴や怒号のようなものまで聞こえる。そんな声が聞こえる度に僕の手を握る母さんの手に力が入る。


そうして、必死に街から離れて日が昇りかけた頃、突然目の前に黒い物体が現れた。それを見た母さんはありえないといった顔をしている。


「ウォーウルフ...どうしてこんな人街の近くに現れるの...本来は高難易度ダンジョンでしか現れないはずなのに...」


それから母さんは僕の手を離して


「アレン、私の方を振り返らずに必至に走って逃げなさい。大丈夫、すぐに追いつくから。」


そう優しく笑いかけて、僕に母さんがいつも首からかけているお守りをかけウォーウルフの方に向き直り。


「アレン!早く行きなさい!」

「でもっ...」

「いいから!」




それからは必死に走った。途中何度も母さんの方を振り向きそうになったり、疲れからくる睡魔などを必死に堪えて走った。日が昇りあたりが明るくなった頃には隣町が見えて来た頃だった。


「ようやく着いた...」


安心した瞬間だった。後ろから衝撃が襲った。


「ガハッ」


衝撃で数メートル転げ回ったあと後ろをむくと血に濡れたウォーウルフがこちらを見ていた。後ろから突進されたらしい


「な、なんで。母さんは?」


その問の答えは返ってこない。


「ガルゥ!」


ウォーウルフはこちらを威嚇したあとすぐさま飛びかかってくる。

あぁ、2度目の人生もここで終わりか…

僕は何も出来なかった。魔法を使うという夢も、そして仲間を集めて冒険するという夢も、何も達成出来ず死んでいくんだ...

走馬灯のようなものが一瞬で脳裏に流れ、ウォーウルフがスローモーションのように迫ってくる。ほんとに死ぬ直前はスローモーションみたいになるんだなぁと呑気に考えながら、ウォーウルフと自分の距離があと1メートルほどに迫った時、僕は目をつぶって死を受け入れようとした。


ズシャ


ウォーウルフの牙が僕に刺さったんだろうなぁ


ビシャビシャ


あぁ、僕の血が流れていっているんだろうなぁ


ドサッドサッ


ドサッ?ん?あれ?なんの音だろう

そう思い恐る恐る目を開くと僕の体全体は血で濡れており、目の前には誰かが立って、その左右には半分になったウォーウルフが綺麗に左右対称に倒れていた。


「えっ?」

「少年、大丈夫か?」


目の前のコートを纏いフードで顔まで隠れている人物がこちらに話しかけてきた。どうやら咄嗟に僕を救ってくれたらしい。それだけを理解出来た僕は


「あ、ありがとうございます!」

「いや、たまたま通りすがっただけだ、別に君を救った訳ではない」


そんな無愛想な返事を返されながらも僕は安心したのか急に眠気が襲ってきた。


「あれ?」

「今はゆっくり眠るといい」


その人物のちょうど後ろから陽が昇っていて後光がさしているようだった。あぁ、この人はきっと僕の神様なんだなぁとふざけた感想を思いつきながらも、ゆっくりと僕は意識を手放した。




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