2話 雨模様
僕と両親はすぐに家の庭にでて、心地よい晴天の中周りに人がおらず、魔法を発動しても大丈夫なことを確認する。
「じゃあ、水属性初級魔法のウォーターボールからやってみましょう」
「うん!」
この魔法の世界に生まれて2年、今までにたくさんの困難を超えてきた…
ハイハイの屈辱に耐えたり、おしめを変えられる恥辱に耐えたり、言語の習得に苦労したり…
だがそんな困難を超え、ついに今日僕は魔法を学びます!
あぁ、前世で夢に見た魔法を自分で使えるなんて
まず母さんが魔法を発動させる
「ウォーターボール!」
掛け声と同時に向いた方向にバレーボール大の水の塊が勢いよく飛んでいく
「さぁアレンもやってみましょう、体の中の水の流れを操作してひとつにまとめて、その塊に形を与えるような感覚なんだけど…」
「うん!やってみる!」
魔法操作は今ではほぼ意識せずにできる。体の中の水の塊を先程母さんがやったようなバレーボール大の形をイメージして大きい声で叫ぶ
「ウォーターボール!」
.......あれ?なんか水滴が手のひらについてる。雨でも降ってきたのか?なんて考えながらその水を服で拭う。
うん、これあれだ、僕の出した水滴ですね。
母さんが心配気な顔で僕の顔を覗き込んでくる。
「えっと...そうね、アレンはまだ2歳だからその....そう!その歳で魔法を発動させただけでも大したものよ!」
そんな母さんの苦し紛れのフォローを聞いてつい先ほど魔法操作はできるとドヤ顔で言ったことを恥ずかしく思いながらももう一度試してみる
「ウォーターボール!!」
再び手のひらに水滴がつく。とたんに顔の頬にも水が流れるような感覚がした。
「あれ...?」
「アレン!大丈夫よ!これから努力していけば魔力操作も魔力容量も成長していくもの!これから毎日母さんがつきっきりで教えてあげるから泣かないで!」
「そうだぞ!父さんもアレンにつきっきりでいろんな魔法を教えてあげるから自分に合った魔法を見つければいいんだ!だから泣くな!」
父さんはそう言うが僕は2人が話していた会話から、この世界は人によって多少の属性の得意不得意はあるが、初級魔法まではそれに関係なく、ある程度の魔力容量があればほぼ全ての人が使えるという事実を知っていた。そして、どうやら両親は僕が泣いていると勘違いしているらしい。まったく、僕が魔法が使えないことくらいで泣くわけないじゃないか。父さんが言う通りこの水魔法がたまたま自分に合わなかっただけだ。そう自分に言い聞かせ納得させてるはずが、頬を流れる水の流れは止まる気配はない。
あぁ、僕には魔法の才能がないんだと気づいてしまった。そんな僕とは裏腹に空は憎々しいほどに晴天であった。