蘭蕉の記憶
何も覚えていない。
自分のことなのに、何もわからない。
それは、とても怖くて、生きているのかもわからなくなってしまうことだ。
俺は今、自分がどのような人物で、何をし、生きてきたこれまでを覚えていない。かすかに、記憶を感じることができる。
今、どこかの病院のベットにいるのだろうか。
ベットの横には、花が置いてある。
窓から、見える景色は、桜が外に咲いており、とても綺麗だ。春の訪れを感じる。
なんだか、景色さえも久しぶりに見たような気がする
すこし、長く寝ていたのか、頭がクラクラすしてきた
すこし時間が経つと、扉が開く音がした。
入ってきた人は、二十代のとても可愛らしい女性だ、俺は、なんだか、彼女を見た時、頭が鈍器で殴られるような感じがした。
頬を水が垂れている感触がし、俺は泣いていることがわかった、けれど、自分がなぜないているのかがわからない。
とても怖い。何か忘れてはいけないものが、忘れてしまっているようで。
彼女も泣いていた。そのまま、俺が寝ている、ベットまで来て、泣いている。
俺はとても、彼女を抱きしめたいけれども、それはできなかった。
俺は寝ている時に、長い夢を見ていたような気がする。目が覚めたような、起きた今でも、まだ夢のようだ。
すこし、夢の話をしよう。
夢の中での、俺の話を。
俺の名前は、浦松 楓芽〝うらまつ ふうが〟
俺は、家庭環境が、あまり良くなかった。
むしろ、全然悪い方だ。
親は、家に帰ってくるたびに、俺に暴行を加えた、それも、手加減なしに、何回も何回も、顔など関係なく、手加減もなしに。何回も…
ろくに食べ物も食べさせてもらっていない、皆んなが食べたことのあるものでさえ。味がどんなのかすら想像すらできない。
俺は、虐待に関しては、何も思っていない。物心着いた頃から、殴られ続けたからだ。俺は、それ以外の生活を知らない。
俺は、そんな日々を送っていた。
家庭環境も悪いせいか、学校では、友達もいなかった。 自分のせいでもあるのかわからない。
今日も、学校に行かなくてはならない。
何も変わらない日常。ただそれだけが今日も過ぎて行くのだと思っていた。
学校へ、着いた。俺の上履きだけは、濡れていた。
たまに、花も生えている。
俺が、教室に入るだけで、クラスが一瞬静かになる。
俺の席は、窓側で、一番後ろの席だ。
机には、色々な文字やごみがのっている。
いつものことだから、気にしないがいじめる原因がわからない。俺が貧乏だからか?家庭環境が悪いからか?…そんなものは、俺だって望んだものじゃない。
そんなことを考えているから、いつまでたってもいじめる側の人の気持ちがわからないのだろう。
ホームルームが始まる。
担任から、話があるという。何事かと思ったけど、転校生が来るらしい。
俺には縁のない話だ。
入ってきた人は、女性でとても可愛らしい女の人だ、俺みたいなやつには縁のなさそうな。
担任が、彼女を紹介し出した。
「埼玉県から、引っ越してきた、立花かんなさんだ、みんな、今日から仲良くしてやってくれ。」
そう担任がいい終わり、男子たちも、女子たちも、みんな彼女に興味がありそうだ。
席は、俺の隣だ。
ホームルームが終わってからは、すぐさま人が集まってきた。
彼女は、俺から見ても凄く美人だ。
男子からも、女子からも囲まれており、
俺とは正反対だ。
昔から俺は、人の感情を読み取るのができてしまう。とくに、嫌悪や怒りなどの気持ちがな。
俺が横なんかにいると、転校生と喋りにくいからか、俺はみんなからの怒りの視線を向けられていた……だから俺は抜け出してきた。
俺は、教室が居づらく、いつも屋上で時間を潰している。幸い階段を一つ登れば、屋上があり、すぐに行ける…。
「なんでだろう………」
俺はふと声を出してしまった。
もし、親が普通の親だったら、暴力を振るわず、暴言も吐かなかったら、学校でも虐められなかったら、普通の高校生として、生きていたのなら、そう思うだけ
心が楽になる……けれども、その分現実に戻ると、余計に悲しくなる。
そんなことを考えるだけ無駄だとわかっていても、考えずにはいられない。
― ガチャ―
後ろの扉が開いた音がした。
誰がきたかと思い、振り返ると
立花だった。
俺は驚いたが、俺に会いに来るわけがないと思い、なんとも思わなかった。
だんだん足音が近づいて来る。
「ふうが君だよね…?」
俺は、名前を呼ばれるのが久しぶりすぎて、一瞬戸惑ったが、すぐに振り向いた。
「なんで、俺の名前を知ってるんだ?」
俺は、とても不思議だった、どこかで会ったことでもあったのか…
「さっき席順名簿で名前を見たから、席が隣だったし、よろしくね…?」
「俺には関わらない方がいいぞ。ろくなことがない。」
俺はつい声が出てしまった。
俺に関わっても、いいことがあるわけでもない。
逆に悪い方が多いと思う。
彼女は何か言いたげにしていたが、チャイムがなり、クラスに戻ってしまった。
学校が終わり俺は、一人クラスに残っていた。
みんなが帰り終わったら、毎日学校の花や木を見ている、学校の隣にはすぐ、林があり、花なども咲いている。家に居たくないがために、時間を潰している。
俺は自然があまり好きではない。
自由に咲き、自由に枯れていく、そんなに自由に生きていけるのに嫉妬をしている。
「また、お前か、俺には関わらない方がいい」
俺はそう言って後ろを振り向いた。
立花が後ろには居た。
「なんで、そんなに拒絶するの?」
立花が少し、切ない声で言った。
〝俺に関わって、何があるんだ。〟
そうだ、親もろくでもない、学校ではいじめられている、こんな奴に関わる意味なんて…
それがなぜ、人と関わっていけない理由になるのか、俺は俺自身で、仕切りを作ってた。