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 そして、いつしか年は過ぎ、中学校の三年になった。そんななる日のことだった。




「ただいま、母さん。何見てるの?」


悠が学校から帰ると、母親がテレビを見ていた。


「おかえり。悠、また喧嘩したの?女の子なんだから、いい加減にしなさいよ」

「売られた喧嘩を買っただけよ」


母親はため息をつく。以前、三者面談で教師に言われた。成績は問題ない。問題なのは素行だと。


「時にはこんなロマンス映画でも見なさい」


母親はテレビに視線を移した。外国の古い映画だった。それを、日本語に吹き替えている。


「なにこれ」

「お母さんが若い頃に流行った映画よ。主人公の女の子は花売りの貧しい子なんだけれどもね、きれいな言葉遣いときれいな仕草、それから、きれいな心で王子様を射止めるのよ」


くだらないと思いながらも、次第に画面に引き付けられていった。


『王子様、私ではいけません。もっと、貴方様に見合った方がおられるはずです』


テレビの中の少女は弱々しく首を振る。王子は少女の手を握る。


『僕はあなたがいいんです。僕に見合う人なんてどうでもいい。あなただから僕は惹かれたのです』


様々な困難を乗り越え、最後に少女と王子は結ばれた。映画が終わる。悠はそれでもテレビから視線を動かせなかった。


「……私、お姫様になる……」


白馬に乗って少女を迎えに来た王子に悠は夢中になる。自分にもいつかはこんな素敵な王子に迎えに来てほしい。悠は本気で思った。




 だ っ て 、 王 子 様 に 迎 え に 来 て も ら っ た 少 女 は 、 本 当 に 幸 せ そ う な ん だ も の。




 そういった悠に母親はほくそ笑む。


「じゃあ、もう喧嘩しないのよ」

「わかった」

「言葉遣いもきちんとするのよ」

「はい」



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