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平均とは一体何なのか

ちょっと試験的に文字数を増やしてみます。

多分見づらいけどしばらく挑戦してみます。

 さ、気を取り直させずに俺の番に行こうか。

 なぁに心配するな、ミスターアベレージと呼ばれてたかどうかは定かじゃないけど、学生時代から『平均』が枕詞まくらことばに付いてた学業スポーツ日常その他諸々を送ってきた人間だ、兄の威厳などという薄っぺらいプライドなぞとうに砕けておるわ!


 ……そもそも異世界転移ないし転生=チーレム俺TUEEE科学発展させまくりで地位も名誉も金もうっはうはな天下無双、という『ぼくがかんがえたさいきょうのぼく』みたいなのを世に広めたのは誰だよ。

 女神の髪の毛ざっくりやった技術とか持ってるのはあくまでもイレギュラーみたいなもんだけど、元来俺は趣味なんかをやって平々凡々と生活したい側の人間だったのに……サバイバル技術に長けた上に現代日本で使い道なんてそこらに落ちてる石ころより無い格闘術みたいなのを俺に教えてくる父親、柏手でプラズマを発生させられるとにこやかに豪語したり、いたいけな妹に黒魔術を率先して教えてくる母親のせいで、俺自身が平凡を望んでいても周りがもう平凡じゃないんだよなぁ……実際に妹達のステに完全に平凡とか普通とかその辺の自重が一切見られないし。


 まぁいいやもうどうにでもなーれ(棒読み)


 女神曰く『設定した数値以上で起動する魔法陣に引っかかった』みたいだから、もう平均なんて望めないんだろうなぁ……と思いながら水晶に触れてみた。




HP :全

MP :部

ATK:平

DEF:均

INT:的

DEX:だ

AGI:よ




「あー……こういうパターンね分かる分かる」




 分かるかボケ。


 あれか? 水晶さんも俺の心情を汲み取って慰めてくれてるんか? ってバカ。

 今まで数値化してたのが何故に俺の番で文字になって出てきてんだよ。しかもなんだ『全部平均的だよ』って綺麗にステ欄に収まるように表示させやがってあらまぁお上手ですね。


「ぜ、全部平均的だよ、ですか……? 今の今まで、過去においても全てのステータスを数値化してきた水晶が、何故あなたの時だけ文字になってるんですか?!」

「俺が聞きたいよ。確かに昔から平均とは親友以上家族未満ぐらい親密なお付き合いをさせていただいてたけど、こんな例外引き起こすような平均は聞いた事がねぇ……例外引き起こす平均って何だよ」


 例外ってのは平均から逸脱してるから例外って言われるんだよ、いい意味だろうが悪い意味だろうが。平均がよかったから一緒に過ごしてきたの! 分かる? この罪の重さ。


「も、もう一回! もう一回測定をお願いします! イレギュラーにも程があります!」


 全くもってその通りなのでもう一回水晶に触れてみる事にしました。




HP :100

MP :100

ATK:100

DEF:100

INT:もう全部100って事でいいんじゃない?

DEX:それな

AGI:終わり! 閉廷! 以上! 皆解散!




 人のステ欄でチャットみたいな事してんじゃねぇよオラァン! しかもINTが賢くない雑なレスしたり、DEXが器用というかマルチで使える返答したり、AGIが高速で終わらせにかかってるしふざけ倒してんのかと小一時間問わせろ。


「……も、もう一回! もう一回だけでいいですから! 先っぽだけで! やってもらえませんか!?」

「……いいけどさぁ」




HP :H(半端に)P(パンチ食らってもどうって事無いです)

MP :M(真面目な話、)P(パねぇっす、半端ねぇっす)

ATK:A(あっという間に)T(敵を)K(片づけられます)

DEF:D(どう足掻いても)E(Enemyが)F(フィニッシュ決められないぐらい強固です)

INT:I(一番)N(何となく)T(使っても強いですね)

DEX:D(出鱈目に)E(エンターキー押しても)X……なんだよエックスってどう使うんだよ

AGI:ひゃ~! おめぇ早ぇえなぁ! オラ驚いちったぞ!




「おいゴルァ! (天界から)降りろ! (神様の)免許持ってんのか?!」


 そもそもが天界みたいな場所なのに、更に上に向かってそう叫んだ俺を誰が責められようか。

 あとさっきからAGIがちょこちょこ俗世というか日本に染まってるのが見えるような文面というか発言というかしてんなオイ。


「もうだめだ……! おしまいだぁ……!」

「あんたもあんたでしっかりと日本に染まってるっていうか何故にまたピンポイントで日本に染まった?」


 化け物だか悪魔だかに直面したようなセリフ溢してる女神はさておき、もうこれはノーステータス開示でフィニッシュしてとりあえずスキル貰って下界で暮らせよっていう神様の思し召しと受け取って、いつかぶん殴ってやろうと今心に誓ったね俺は。

 え、グーでじゃないよ? グーから中指をちょっと尖らせたタイプで握りこむ形の拳でだよ。ちゃんとあるんだよそういう握り、急所に的確にねじ込めるようにね。




☆ ☆ ☆ ☆ ☆




「……先程は取り乱してしまいまして申し訳ありませんでした。何せステータスが数値化しないのは元より、チャットしたり大喜利し出したりと例外中の例外みたいな事が立て続けに来たもので……」


 めがみは しょうきに もどった!▼ らしい。


 正直俺もね、妹二人があんな頭おかしいステになってるのを見て、多少夢みたいなのを持ったよ? ラノベなんかで見る『全ステータスがアンノウン』とか、『全ステータスが∞』とか。

 でも身の丈考えたら夢でしかなかったからすぐさま頭の片隅から消してたんだけど、違う意味で頭おかしい表記になってて草も生えないよ。砂漠だよ。


「……まぁ、比較的まともだった情報から読み取るに、全部平均的だよって事前提で話を進めようか。あんな縦読み部分だけ抜粋しましたみたいなのを情報として扱っていいのかは投げ捨てておいて」


 話が進まない(メタな意味も含む)からね、しょうがないね。


「……釈然とはしませんが、その前提で進めましょう」

「……お話、終わった……?」

「やっと最後の詰めの部分かな? もうボク待ちくたびれたよ!」


 実際睦月は寝てたしな。兄さんが黒塗りの車に乗った人みたいに叫んでたってのに。

 葉月? 暇だったらしいからその辺てっこてっこ散歩して何やら色々と持ち帰ってきてたよ。見た限り何も無さそうな空間なのにどこから持ってきたんですかね、そのうさぎのぬいぐるみとかスカンジナビアンスプリッティングアックスとか。

 そのうちカマンチョメンガーとか持って帰ってきそうで怖い。


「前にもお話した通り、皆さんには3つのスキルをお渡ししたいと思います。選んでいただくスキル自体は戦闘系非戦闘系問わず多種に渡りますが、そちらの妹さん方は既にステータスが転移先の人類史史上ぶっちぎりでおかしい事になってますので、過剰な戦闘系スキルは選ばないようにお願いします」

「……大丈夫、です……そもそも、身体動かすのが苦手、なので……」

「うーん、お母さんが『無属性ってのは大概育てればアホみたいに強いからオススメよ~』って前言ってたから欲しかったんだけど……別のにしよっと!」

「…………」


 妹達はどれにしよっかなーこれがいいかなーなんて楽しそうにスキルを選んでるようで、異世界ってのに憂いが無さそうでお兄ちゃんは安心してるよ。

 でもくれぐれも、あの両親が言った事を真に受けてスキルを選ばないでほしい。あの二人は地球のものさしで測ってもそもそもおかしいから。


 ちなみに俺はもう貰うスキルは決まっている。本当はあと2つ欲しいんだけど、それは無いと困るしラノベとか見る限りだと標準装備もままあるっぽいから、言ってみて通るか試してみるとしよう。


「……おや、あなたはスキル選びに混じらないのですか?」

「あぁ、うん、あの分厚いスキルブックとやらにあるのかどうかは分からないけど、最初に話を聞いた時からある程度決まってたよ」


 電話帳とか辞書とかいうレベルを超えた本から自分が取得したいスキルを3つだけ探して選ぶとか徒労にも程があるよね。


「では、あなたが欲しいスキルを教えてください」


 ニコリと微笑みながら聞いてくる女神。そうやってると女神っぽいんだけど、言葉の端々からネットスラングとか語録とか漏れ出してるから全部台無しになってんだよなぁ……。


「……俺の欲しいスキルは、『成長』『模倣』の2つ。残りの1つでちょっとした交渉をしたい」




☆ ☆ ☆ ☆ ☆




「『成長』と『模倣』ですか……? しかも残り1つ選べるスキル枠を消費してまでの交渉、と来ましたか。うーん、今まで見た頭ぱっぱらpゲフンゲフン、夢見る青少年とは一味違いますね」


 しょうがないんだ、日本であんなラノベ見てたら誰だって強くてニューゲームがしたいに決まってるんだから……!


 はてさて、じゃあ何故俺はやんないのかと言えば、そんなもん公私に渡って束縛されるからに決まってるだろ。

 分かりやす過ぎる戦闘の強さなんてのは以ての外で、度が過ぎた才覚やらなんやらはほぼ間違いなく人の目に触れた途端に手駒にしたい奴がわんさか溢れ出てくるもんだ。勇者なんてもんがそれの代表だな。


 胡散臭すぎて正直信用なんて無いに等しいけど、あの水晶は『全部平均的だよ』と一番最初に表示したのを前提にすると、俺は妹達と違って目立つ要素が一切ない。ならどうすべきか?


 やりたい事やりながら生活するのが一番でしょ。


 元々趣味とかやりながら平凡に過ごしたい人間なんだ、とか言ってたけど実は特に趣味と呼べるものも無かったから、俺は今度こそやりたい事を見つけてそれをしながら平々凡々と異世界を生きてみたい。だから『模倣』のスキルで色んな職業スキルを真似してやってみて、ハマったものがあればそれを『成長』のスキルで伸ばす。

 そうして俺は俺なりに楽しんで生きていきたい。


 というような事を女神に伝えてみたら。


「す゛は゛ら゛し゛い゛て゛す゛ね゛ぇ゛……!」


 バスタオルをビショビショにせんばかりに泣きじゃくる女神がそこにいた。




 ……実は話の3分の1が嘘なのは黙っておこう。いい話で終わらせておいた方が良さそうだし。




「て゛、の゛こ゛り゛の゛ひ゛と゛つ゛て゛わ゛た゛し゛と゛な゛に゛を゛こ゛う゛し゛ょ゛う゛し゛た゛い゛の゛て゛す゛か゛?」

「うん、すんごい聞き取りづらいから、まず落ち着こう?」


 言葉の一つ一つに濁点が付いてるように聞こえるってのは、実際に聞いてみると中々に聞き取りづらい。正直昔文章で見た時も中々に酷かったけど、音として聞くとより酷い。チンチロとか鉄骨渡りとかしてる人が叫んでる時よりも酷い。


「……ん゛んっ! 失礼しました、まさかそこまでの考えがあったとは、あの国に生まれたのに素晴らしい事だと感動してしまいました……!」

「もう日本という国自体がそういう認識で固定されてるのか……いや日本人だけど違うとも一概に言えない辺りがもうダメなんだろうなぁ……」

「……さて、貴重な何でもどうぞなスキルプレゼントを1つ蹴ってまで交渉したい程の事とは一体?」

「あ、もう普通にそこに入っていくのね」


 オンオフが凄いというべきなのか……まぁそれは今は置いといて、女神の言う通り、貴重なスキルを1つ蹴ってまでしたい交渉は、ある意味社会においても当然と言えば当然な要求なワケで。




「とりあえず、少なくとも年単位で生活に困らないだけの金を俺達にください」


 生活の保障である。


「あと言語翻訳と最低限の転移先の知識、そして身を守る為に一通りの魔法が見て模倣したいです」


 身の安全である。


「最後に出来ればですが、妹二人より先に……出来れば程よく田舎でも都市でもない辺りの近郊に転移して、生活水準とか文化に身体を慣らさせてください。あわよくばひと月ぐらい。でもこっちでも同じ時間が流れると多分妹二人暇になり過ぎると思うので、あっちではひと月でもこっちでは1日も経ってないぐらいの精神と時の部屋みたいな時間軸にしてください」


 俺は突然の生活環境の変化に慣れるのに時間がかかるのである。

 妹達は暇を潰すのがビックリするぐらいに苦手らしいのである。




「…………は?」




 女神がきょとんとするのも至極当然な流れだと思うのである。

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