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異世界でも自由気ままに  作者: 留季鴉
プロローグ
1/22

現実世界にて

「あー、あちー」


 真夏の太陽の下、彼は学校からの帰路についていた。彼こと天堂誠一は、一部の業界では知らない人がいないほど有名な人物である。


 3歳から祖父が営んでいる道場で天堂流武術を学んだ結果、10歳で師範として認められた。天堂流武術とは、刀や槍から始まり弓や暗器などあらゆる種類の武器を使い、相手を殺すことに特化した武術の流派である。もっとも、現代日本ではその真価が発揮されることはまずないと言っていいだろう。


 また彼の両親は世界的に有名なデザイナーで、誠一が生まれてからは仕事を休み、彼に付きっ切りになって世話をしていた。そんな両親からの影響なのか、誠一が4歳になったある日、部屋の壁に落書きをしている誠一を彼の両親が見つけた。それは子供の落書きと言うにはあまりにも美しく、写真と見間違うほどの風景画であった。両親は誠一の美術の才に気づき、思いつく限りの美術品や歴史的建築物のデザインなどを彼に学ばせた。すると誠一はそれらを瞬く間に吸収し、6歳になった彼が描いた絵や建築物のデザインは1枚で数千万円は当たり前、オークションに出せは数億円に跳ね上がるようになっていた。


 そして彼の才能はとどまることを知らず、9歳になったとき、「デザインするだけではつまらない。」と思い始めた彼は物作りを始める。彼自身がデザインし、持ち前の器用さで作り上げるとどうなるのか。匠と言われてきた職人たちは、彼の作品を見て感動の涙を流し、万人を魅了する一品が出来上がるのは当然のことなのかもしれない。


 そんな彼の元に何度か襲撃者がやってきたのだが、その頃には天堂流武術を極めていたので撃退することは容易だった。おそらく誠一の技術力を独占しようとしたのだろうが、そんなことはこの世の誰にも不可能であろう。


 そして今、彼は17歳になった。身長は180cmで、髪は短く切り揃えられた清潔感のある黒髪。顔立ちは凛としていて、10人すれ違えば9人は確実に振り返るだろう美青年である。彼自身が向上心旺盛なので、武術の鍛錬を怠るどころか他の流派にも手を伸ばし、鍛え上げられた彼の体はもはや芸術の域に達しているといっても良いだろう。高校では文武両道で成績は常にトップ。何をやらせても完璧にこなしてしまうのだが、そのせいで彼女ができないことに誠一は気づいていない。女性から見てあまりにも完璧すぎるため、雲の上の存在として見られてしまうのだ。彼は基本的に他者に優しくマイペースな性格で完璧超人という認識をされているが、誰も知らない彼の秘密がある。


 天堂誠一は所謂オタクなのだ。あらゆる方面に手を伸ばし己を高めようとしているときに出会ったオンラインゲームにはまり、アニメや漫画やラノベにものめり込んでいった。特に異世界ものと呼ばれるものが彼は好きだった。この世界ではやりたい事が無くなって来ているし、自分を高めることも限界が来ていることを彼は気づいていた。なので彼は行けるものなら異世界に行ってみたいと思っている。誰も知らないのは誠一にその手の話題を持ち掛けてくる人がいないからである。


 そんな彼が暑さに愚痴をこぼしながら歩いていると、遠目にサッカーボールが車道に転がって行くのが見えた。そのボールを追って1人の少年が車道に飛び出ようとしている。その少年は向こう側からトラックが、猛スピードで迫っていることに気づいていないようだ。このままじゃ間に合わないと思った時にはすでに体が動いていた。


「まにあえぇぇぇ!!!」


 鍛え上げられた身体能力を全て使いギリギリのところで少年を押し出した。次の瞬間、全身に強い衝撃が伝わってきた。地面を何度か転がったところでやっと止まった。視界の端で何かを叫んでいる人達がいるが、助けた少年もいることが確認できた。 


(あぁ、よかった。)


 そこで誠一は意識を手放した。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

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