1. エプロンの衝撃
活動報告のほうに載せていた小話です。
時期としては2話の後のお話。
転移魔法を使って王城の側まで戻ったディドイとフラン。
流石に、魔法で城の中までは帰れない。城に施された防護魔法に弾かれてしまうからだ。
なので、城外の適当な場所に転移して、その後は徒歩で正門から中に入ることになる。いつものことである。
しかし今日はなんだか、やたらと街行く人からの視線を感じる。
王子であるフランも、若手ながらも将来有望な魔法使いであるディドイも有名人だ。だから、街中を歩けば声を掛けられることも多い。
だが今日は正面から声を掛けられないが、ヒソヒソとした話し声と好奇の目をやたらと感じる。
なんだ?と首を傾げていると、前を行くフランの肩が震えている。
「フラン、何かあるのか?」
「いや、何もないさ」
嘘くさい。
しかし、こういう時のフランは何も話してはくれないことは、経験上よく分かっている。腑に落ちないながらも、追求は諦める。
そして少し歩いて王城の正門前へ辿り着き、入城の手続きを行うために門番へ話し掛けると……。
「フラン第三王子、ならびに魔法使いディドイ帰城した。入城の手続きを」
「はい、畏まっ……ぶふっ!!」
「ぐっ……!」
門番二人がディドイを見た瞬間、噴き出したのだ。
「は?」
「デ、ディドイ殿……」
「なんだ?」
「い、いえ……! 身分証のご提示をお願いします」
何故だか目が合わない門番に、いつも通りの入城手続きを行って貰い、城へ入る。
そしてその後すれ違う人々が時々噴出するという不思議現象が続きつつ、フランの執務室近くまで辿り着いた時。
同僚の魔法使いに出会うと、またそいつも噴出して爆笑しだした。
「ぶっは!! デ、ディドイ! 何着てんだよ!?」
「は?」
「その、ピンク……!」
「ピンク?」
同僚の指摘に、視線を自身の身体へと下ろすと――。
いつも通りの魔法使いのローブ。
の上に着たままの、ロッカのピンク色フリフリエプロン……!!
「っ!!!!」
一挙動でエプロンを脱ぎ去り、背後に居たフランを振り返る。
「フラン! 気付いてただろ!?」
「ははは! ここまで気付かないとか、ディドイは以外と抜けてるな!」
「気付いてたなら言え!」
「え、嫌だよ、面白くない!」
「うぁぁぁぁ! これだから、フランは!!」
頭を抱えるディドイに、フランと同僚の爆笑が掛けられるのだった。
そして。
「将来有望な魔法使いのディドイが、ピンク色フリフリエプロンを着用して登城した」という話は一日足らずで城中に知れ渡り、しばらくの間、ディドイを見た大半の人間が噴出するという光景がよく見られるのだった。