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第1話 魔女はダンスを踊りません!

「皆さまごきげんよう。魔女ロッカが、皆さまにまじないを差し上げますわ!」


 そう言いながらドルチェ王国王城の大広間、その天窓から飛び込んできた少女--ロッカ。

 黒いとんがり帽子から紅茶色のふわふわした髪をたなびかせ、跨ったほうきを旋回させる。

 そして眼下の着飾った貴族たちの視線が十分に自分へと注がれていることを確認し、チョコレート色の瞳をとある女性へと向けた。


「本日のターゲットは……」

「ロッカァァ! 僕だよ、フランだよぉぉ! 結婚しよぉぉぉっ!!」


 黒い魔女服に包まれた腕を振り、今にもまじないを行使しようとした瞬間、間の抜けた声に乱入された。


「ああ、もう! いつもいつも、人の仕事を邪魔して!!」

「ロッカ!」


 アーモンドのような形の目を吊り上げ、先程から叫びを挙げる青年――フランを睨み下ろす。

 しかし、そんなロッカの怒りなど欠片程も気付かない様子で、フランは青空色の瞳を輝かせた。そしてふんわりと笑みを浮かべ、ロッカへと手を差し出す。


「ロッカ、今日も逢えて嬉しいよ。さぁ、僕と一曲踊らないかい?」

「魔女にダンスを申し込む王子なんて、聞いたことないわよ!?」

「そんなことないさ! さぁ、降りてきて踊ろうよ」


 ロッカの怒りなどモノともせず、ひまわり色の髪の毛と同じように輝く笑顔を向け続けるフランに、ロッカは深いため息を吐く。

 このダンスパーティーに招待されている貴族たちも、ここ最近ではおなじみとなったやり取りを微笑ましげに見守っている。


 いつまでも、大広間の天井付近を魔法のほうきでホバリングしている自分がアホらしい。


 そう判断したロッカは、ビシリとフランへと指を差し向ける。


「いい、フラン。あたしは魔女、あんたは王子様。ダンスを誘う相手が違うわ」

「そんなことないさ。だって、僕は君に恋しているからね!」

「だ か ら! 王子が魔女に恋するなんて、あり得ないわ!」

「それこそ、あり得ないよ。恋はするものじゃなくて、落ちるものだからね! とある国の言葉でも、フォール イン ラブっていうしね!」

「どこの国の言葉よ!?」

「さぁ、どこだろうね!」


 能天気なフランの言葉に、ロッカは何かがブチ切れる音を聞いた気がした。


「もう! あんたなんて……」


 右腕に魔力を込め、フランに向けて振りぬいた。


「しばらく一人で踊ってなさい!!」


 魔力の直撃を受けたフランは、一瞬硬直し、そして音楽に合わせてステップを踏み出す。

 その様子を見たロッカは、ふふん、と鼻で笑いほうきを翻した。


「では皆さま、良き夜を!」


 そう言い残し、ロッカは大広間を後にする。

 結局今日も、仕事はできなかった……。

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