ブラックホールさん
ブラックホールさんが僕にこう言った。
「私は何でも吸い込めます」
確かにそのマックロクロな、底がまったく見えないブラックホールさんを見ていると其れは本当の様に思える。僕もただ見ているだけなのに、体も、そして魂さえも思わず吸い込まれそうな深い深い魅力的な黒穴だ。
「何でもと言いますが、しかしそれは大変な事じゃありませんか。例えばお腹は居たくならないのでしょうか」
「いやいや、私のお腹はそれこそブラックホールであり、無限に続くのです。不思議かもしれませんが、そうなのです。何処までも落ちる穴。それがブラックホールなんですよ」
不思議だ。だって穴はどこかで尽きるモノ。そこにはトリックがあるはずだ。例えば僕が食べ物を食べたら、それは体を通っていつか別のモノになって出ていく。うーん、ブラックホールは便秘なんじゃないんだろうか。少し熟考して、
「じゃあ、僕を吸ってみてください。貴方の深淵を見てみたい」
そういった瞬間、僕はブラックホールさんに吸い込まれて、消えた。
そこは何時までも何処までも続き、堕ちていく深淵。
僕は少し寂しくなった。