表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

遠くて近い

作者: 素生月南
掲載日:2014/09/13

夜明け前のベランダで一人釣り用の椅子に腰かけて煙草を吸う。

目の前に広がるのは毎度お決まりのいつもの世界。

そのことがすごく私を安心させる。


今まで生きてきた人生に特に後悔はない。

今の仕事が好きだし愛する家族も持てた。

ダイエットも5年前に成功してずっとそれをキープできてる。

友人も多い方だ。

旦那の稼ぎもこのご時世にしてはいい方だし

息子の洸は来年から小学生だ。


でもどうしてだろう。

なぜか漠然とした不安に最近襲われる。

襲われるのはたいていこうした朝、ぼんやりしている時だ。


去年神奈川に住んでいる母の姉が亡くなった。

52歳だった。

私からすれば伯母にあたるわけだが、

彼女には今まで数える程度しか出会ったことがない。

伯母が亡くなったという事実にというよりも、

伯母を亡くしてしまった母の悲しみが心と重なって泣けた。


「おばあちゃんになったら2人でいっぱい旅行して、

歌舞伎とかも見に行こうって言ってるの」


その台詞が私を泣かせた。


人はいつか死ぬということはだいたい皆わかっているけど

でもそのことを四六時中考えている人はあまりいない。

近しい人の病気や死に触れた時、

ぱちんとなにかが弾けたように私はそれを思い出す。


無くしたくないものがたくさんある。

ローンを組んで買ったこの家だってそうだし、

言うまでもなく家族にしたってそう。

友達もそう。


でもこの幸せな生活もいつかなんらかのことをきっかけに

終わってしまう。

誰かが死んで終わるかもしれないし、

もっと別のなにかが起こるかもしれない。

些細なことかもしれないけどそういったことを忘れないでおくと、

日々の生活をより大切に送ろうと思えてくるから不思議だ。


いつか終わってしまうもの。

いつか無くなってしまうもの。

私もこの世界から消えていく。

こんなに色々な想いを抱えていても、

それが全部私という身体ごと、

無くなってしまう。


隣の家で犬がきゃんきゃんと吠えている。

小型犬だろうか。

洸がねだるからうちもそろそろ犬を飼おうか。

太陽が昇ってきた。

今日も1日が始まる。

色々な人の想いを飲みこんで、今日も世界は回る。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ