族長会議
各族長達に竜妃からの手紙が届いてからそれほど待たずに続々と族長達が城に着いた。
まず最初に風竜族族長ゼフィロスその次に暗竜族族長デリス、光竜族族長シンシアが着いてその後少し置いて水竜族族長エリック、木竜族族長サーシャが城に着いたが、火竜族族長アグニはまだ来てなかった。
「・・・二人とも、アグニどうした?」
デリスがエリックとサーシャに問いかけると2人は顔を見合わせ首を傾げた。
「・・・エリック、サーシャ・・・アグニの事すっかり忘れてましたわね」
「・・・はい、すみません」
「・・・あはは、ごめんなさい」
「まぁ、アグニの事だまた迷子になってるんだろう。私が今から探してくるよ」
そう、シンシアとエリック、サーシャにゼフィロスが話していると廊下の向こうからロイスが歩いてきた。
「皆、竜王様と竜妃様が部屋で、・・・アグニはどうした?」
「あぁロイス、アグニなら多分今頃迷子になってるんだと思うぞ」
「また?エリック迎えに行かなかったので?」
「すみません、ロイス。すっかり忘れてました」
その時、廊下の向こうから物凄い勢いでアグニがやってきた。
「ちょっと待ったー!!」
「わぁ、アグニ間に合ったわね」
「ぉう、なんとかな」
アグニは息を切らしながらサーシャに返事をした。その様子を見てロイスとデリスはため息をついた。
「アグニ、いい加減に迷子にならないようになりなさい。大体方向位は分かってるでしょう?」
「おぅ・・・一応は分かっている・・・と思う」
「ハ~ァ。取りあえず、竜王様と竜妃様が待っているので皆行きましょうか」
ロイスがこめかみを抑えつつ諦めたように言うと、他の皆は苦笑いしながらロイスの後をついて行った。
しばらく歩いたらそこには繊細なレリーフが施された扉があり、扉の側には竜王付き侍従の1人、獣人族のキアンが待っていた。
「ロイス様お疲れ様です」
「キアン、戻りました。竜王様は中に居られるか」
「はい。各族長様方、竜王様が中でお待ちです」
キアンがそう言い扉を開けた。
その部屋の中には、竜王リューゼナイトと竜妃リティシアが椅子に座って待っていた。
「皆良く来てくれたな」
「皆さん、急にお呼びしてごめんなさいね」
「いいえ。それは大丈夫ですが、何か有ったのでは?」
ゼフィロスが応えると、2人は深刻な顔をした。
「取り敢えず、皆椅子に座ってくれ」
「「はい」」
皆が座りおわるのを確認してリューゼナイトは話始めた。
「皆も知っていたと思うが私達の卵が先程孵化した」
「その事で皆と相談したいことが有って急に呼び出したのだけど」
「無事孵化したのですよね?その子に何かあったのですか?」
エリックがそう聞くとリューゼナイトは頷き、実際に見た方が早いだろうと孵化したばかりのユーフィミアを連れて来るようにキアンに伝えた。
暫くしてキアンとユーフィミアを抱いた竜妃付き筆頭侍女のセシルが来た。
「竜王様、姫様を連れてきました」
「竜王様、竜妃様に各族長様方失礼します」
そして、セシルが壊れ物を扱うかのように大切に抱いている姫の髪の色を見て、ロイスを除く各族長達は目を見開き言葉を失った。
「竜妃様、姫様をお連れしました」
「セシルありがとう。ユーフィミアおいで」
「あぅ~?」
リティシアは少し寝ぼけているユーフィミアを大切そうに抱き上げ微笑んだ。
「・・・漆黒・・・」
デリスが最初に声を出すと他の族長達も皆声を出し始めた。
「漆黒だと!」「黒髪!まさか!」「どういう事です!」「えっ!こんな事ありますの!」「でも、確かに漆黒ですわ!」
皆が一斉に喋り出すとユーフィミアの目には涙が溜まりだし、次第に溢れ始めた。
「ふっ、うっ、うぇ」
「きゃあ!ユーフィミア怒ってる訳じゃないから泣かないで!」
うえ~~~んっびぇ~~~
室内にユーフィミアの泣き声が響いた。その瞬間室内に大きな突風がおきたが、風はすぐに止み族長達も落ち着きを取り戻した。
「そなた達が余りに大きな声を出すからユーフィミアが泣き出したではないかっ!」
リューゼナイトがそう族長達に注意すると、皆申し訳なさそうに謝った。
「すみません。余りに吃驚したもので声を荒げてしまいました」
「それにしても、孵化したばかりで力を使えるとは」
「えぇ、力が強い故に危険でもあります」
「・・・元々、竜王種・・・それに加え唯一の存在、扱いにくい風の一族、力が大きすぎる」
「そうね。外に出すのはある程度成長してからでないと危険ですわ」
「末恐ろしい姫様だな」
上からエリック、ゼフィロス、サーシャ、デリス、シンシア、アグニがそう言うと、それまで傍観していたロイスが声を発した。
「竜王様、もう答えは出てると思いますが如何されますか?」
ロイスがそう言うとリューゼナイトは少し考えた後皆に問い掛けた。
「皆、ユーフィミアの事はいずれ中央に伝えねばならぬが今中央に伝えればあちらはユーフィミアを連れて行こうとするだろう。だが、竜族は同族の元でなくば育ちにくい、それで中央にはこの子がある程度成長するまで容姿に関しての情報を制限しようと思う。・・・それで、各族長達の意見を聞きたい」
リューゼナイトが各族長達にそう伝えると族長達は皆少し考えた後それぞれの意見をリューゼナイト達に伝えた。
「私は、それでもかまわないと思いますが魔王陛下のことを思うとなるべく早めに伝えるべきかと・・・」
「私も同じ意見だ」
「わたくしは姫君がある程度成長してからの方がよろしいと思いますわ。それまでに姫君に伝えるべき事を伝えれば良いと思います」
「わたしもシンシアと同じ意見です」
「自分は竜王様の思うとおりにされれば良いかと」
「我も、竜王様の意見に賛成する」
上から順にエリック、ゼフィロス、シンシア、サーシャ、アグニ、デリスが言い、ロイスが最後に意見を伝えた。
「竜王様、姫君がある程度成長して自分の意思がはっきりしてきたら本人に一度説明してから中央に伝えれば良いかと思います」
「ふふ、リューゼもう決まってるのでしょう?」
リティシアがそう言うとリューゼナイトは一度溜め息をついて皆にはっきりユーフィミアのこれからについて話した。
「皆、ユーフィミアの件は竜都から外に洩れることがないように気をつけよ。ユーフィミアがある程度成長したら中央にこの事を伝えよう、それまではユーフィミアは城内から外には出さぬ。それで良いな」
そう族長達に伝えると、皆頷きそれに賛成した。
「「「「「「「はい、竜王様の仰せの通りにこの事は内密にします!」」」」」」」
そして族長達はそれぞれ姫君のこれからを思い帰宅した。
遅くなりました!
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