孵化~誕生~
ここはアスティーヌ国 リュゼル領 そこはアスティーヌ国の東側にある、竜族の住まう土地で竜王が治めている領地 別名を竜都と呼ばれている。
今でこそ、アスティーヌ国の王は魔王だが、かつてその昔は竜族がこの国を治めていたため今でも敬意を示し、竜族の長は竜王、その妻は竜妃と呼ばれている。
それは魔王も例外ではなかった。
そんなリュゼル領にあるリュゼル城に、ある日朗報が走った。
「っ竜王さま!た、卵が!卵が割れそうです!」
そう言いながらリュゼル城の一室、竜王の執務室に扉が壊れんばかりの勢いで飛び込んできたのは竜妃付き侍女のニーナだった。
ニーナは獣人族の娘でその特徴の耳と尻尾は猫科のもので、その尻尾を大きく振りながらそう言った。
「そうか!卵がとうとう孵るか!」
「はい!」
竜王リューゼナイトはその言葉を聞き顔をあげそう言った。リューゼナイトは龍王の特徴の金色の髪と同色の目の持ち主で、見た目は人間で言う30歳ぐらいに見えるが、実年齢は3000年ほど生きている。
その時、執務室の扉の方から少し大きい咳払いが聞こえた。
「ゴッホン。竜王様、失礼致します。」
そう言い執務室に入って来たのは、地竜の特徴の焦げ茶色の髪と少し緑が混じった焦げ茶色の目の色をした竜族、地竜の長 ロイスであった。
「おっ、ロイスどうかしたのか?」
「いえ、竜王様。卵が孵化しそうだとお聞きしましたので、竜族の代表として挨拶に来たのです。この度は誠におめでとうございます。」
「あぁ。今からリティと卵の所に行くとこだ、ロイスおまえも来い」
「はい、喜んでお供させて頂きます」
「では、ご案内致します!」
そう言い、リューゼナイトとロイス、ニーナは長い廊下を歩きながら竜妃と卵が居る場所に向かった。
しばらく進んだそこには、重厚ながらも繊細なレリーフが施された扉があった。
「竜妃さま!竜王さまとロイスさまをお連れしました!」
ニーナがそう言うと、扉がゆっくりと内側に開いた。
その中はクリーム色と薄ピンクで整えられた子供部屋になっていて、部屋の真ん中には卵が置かれた大きなクッションがあり、その周りを囲むように竜妃リティシアと竜王と竜妃の第一子 リュークバルト 第二子 シオリア 第三子 ファル 第四子 ティルクが、卵の様子を見守っていた。
「リティ、卵の様子はどうだい?」
リューゼナイトが声をかけると、リティシアと子供たちが顔を上げた。
リティシアは風竜の出身で、風竜の特徴で銀色の髪に、銀色混じりの蒼い目をしていた。
リュークバルトは時期竜王故に、父親譲りの金色髪に金色の目をしていて、シオリアとファルは髪は銀色、目は金色で、ティルクは髪は金色、目は銀色混じりの蒼色をしている。
「リューゼ、お帰りなさい。卵にひびは入っているのだけれど、なかなか割れないでいるみたいなのよ。」
リティシアのその言葉を聞き、リューゼナイトは心配そうな顔を見せた。
何故なら、竜族は卵から孵るときは自力で孵らねば強くはなれないからだった。
「・・・そうか、せめて少しでも割れれば手伝えるが」
「そうなのよね。あら、そう言えばロイス来ていたのね」
リティシアが入り口の近くに立っているロイスに気付き、そう声をかける。
「はい、卵が孵りそうだと聞きましたので竜族の代表として挨拶に来ました。」
「そぅ、でもまだ卵は「母上!卵が孵ります!」
2人が会話しているその時、卵の亀裂が一気に入り
≪ぅっぎゃぁ~~ふえぇ~ん≫
赤子の泣き声が部屋中に響いた。