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僕らが出会った日

世界歴1990年、シャイニィ聖王国、某公園。


ズタボロだった。

身も心もズタボロだった。


僕は痛みを訴える身体を動かして必死に走る。


家の期待に答えたかった。


母も父も優しかったが、厳しかった。

聖王国を、聖王の傍にて支える我が家は腐敗し聖王を是正すべく動いた。


才ある者が必要だった。

魔術師として、文官として才ある者が。

力が必要だった。

無理やりにでも悪政に終止符を打つ力が。


僕が産まれた時、両親は歓喜した。

才ある者が産まれた事に喜んだ。


二人は次に力を望んだ。


僕は産まれながらに強い魔力を持っていた。

光と炎、聖王国を代表する二つの魔力。

それは確かに強い力だったが両親はそれ以上を望んだ。

世界に存在する十の魔力を持つ魔術師を欲した。


若ければ若い程良かった。

歳月を重ねれば重ねる程魔力は身体に染み付き、他の魔力を受け付けなくなるからだ。


魔力の塊、魔力石というものがある。

燃料としても使われるそれは、溶かして血に混ぜる事で後天的に属性を追加する事ができる。


ソルラの一族の研究が生み出した結果だった。


異物を身体に流し込まれ、激痛に悶え苦しんだ。


耐えきれなくなって家を飛び出した。


家から離れた公園の辺りで足が動かなくなった。

苦しい。


必死に走っていたから息切れが酷いし、見知らぬ場所に来てしまったので帰り方もわからない。


見知らぬ土地に不安を感じて、公園のベンチに腰を降ろす。




どうしよう。

両親の期待を裏切ってしまった。


十歳かそこらの子供が考える事ではないが今の僕にとっては大問題だ。


「よっ!」


右側から思いっきり蹴られて地面に転がる。


「なーんでユートーセーくんがこんなトコにいんのかな〜?」


「オレらにイジメられにきたのカナー?」


「ううっ......」


三人の悪童が僕を見下している。

こいつらは学校で僕をいじめてくる奴らだ。


「オラオラ!なにかいえよー!」


「ビビってなんもいえねーんじゃねー!?」


倒れた僕に奴らは容赦無く蹴りを入れてくる。


ああ、もう嫌だ。


何度も何度も蹴りを入れられ、魔石を入れられた痛みとあいまってもう全身の感覚が無い。


もう、もう全て手放して。

手放して死んでしまいたい。


「【破魔光(はまこう)】!」


「「「うぎゃっ!!」」」


一筋の光が悪童達を吹き飛ばして行く。


初級魔法の様なそれは魔法陣も詠唱も介さぬ単純なる力の奔流。


エヴェ流魔法行使術(エヴェ・マジック)と呼ばれるそれは、

まごう事なくエヴェの少年の手から放たれていた。


「てめぇらなにアホらしい事してんだ?」


「う、ううっ.....」


「げえっ!?ジェ、ジェラルドじゃねえか!?」


悪ガキ一号が狼狽えている。

現れた少年は何者なんだろう?


「人ん家の近所でムナクソわりーことしてんじゃねー!【紫電流(しでんりゅう)】!」


「うわわわわっーーー!?」


「にっ、にげろーっ!!」


「おおおっ、お前ら!おぼえてろよー!!」


バラバラに飛び散る雷の流れに押し流され様に悪ガキ達が逃げたしたあと、

公園には静寂さと僕たちだけが残っていた。


「まったく.....少しは学習しないモンかなー」


「あ、あの.....」


「ん?おー、大丈夫か?お前あいつらにけっこー蹴られてたろ?痛くねーか?」


「あ、いや、平気だよ」


「ウソだな!ぜってーどっかの痛みガマンしてますって顔してるぜ!」


見抜かれてる。


「あ、いや、ホントに平気だよ、平気、大丈夫」


「いーから俺ん家行くぞ、しっかりと手当てしてやっから」


彼はそう言って僕の手を強引に引いて歩いて行く。


そう、この日が僕とジェラルドが出会った日。


僕の人生を変えた出会い。




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