光と炎
閃光が僕の視界を奪う。
何も見えない中、僕は必死になってバックステップを繰り出す。
ブンッと木刀が空気を切り裂く音が聞こえた。
「-荒ぶる風よ!一帯の敵を薙ぎ払え!-【範囲旋風】!
鋭い風が僕を中心に駆け抜ける。
地面を蹴って、少し間を開けてから着地音。
「今のにチェスターが反応したのは始めてだな!」
ようやく視界が回復してジェラルドを見たら満面の笑顔だった。
ああ、これはスイッチ入ったな。
ジェラルドは殺し合いなどは嫌いでも勝負自体は好きだ、戦闘馬鹿だ。
そのスイッチが入った、もう勝負がつくまで止まらないだろう。
「-無情なる嵐の刃よ、汝の鋭さを見せつけよ!-【嵐の刃】!」
一閃、ジェラルドにも負けない一閃がジェラルドに襲いかかる。
「【光牙剣】!」
くっそ!弾かれた!
光の加護で固めた【光牙剣】はジェラルドの得意技、僕の中級魔法がガイン!と金属音を響かせてあっさりと返されてしまう。
ジェラルドの三つの属性の魔力の中で一番優れた光の魔力を使う光属性の技は言ってしまえば本気の証。
こちらも全力で相手をしなければ負ける!
僕はローブの中から複数の魔道具を取り出す。
愛用の魔法の杖「賢者」はあらゆる魔法に対応する万能かつ高性能な杖だ。
だが詠唱を挟む魔法の性質上、ジェラルドに対して対応が遅れがちになる。
そこでこの魔道具達が役に立つ。
十の指輪からなる「虹色の指輪達」
そして腕輪の形をした「魔力補給機」
これらを装備した後、「虹色の指輪達」に魔力を送り込む。
十属性の魔法石に詠唱の代わりに刻み込まれた魔法陣が魔法石に満ちた魔力を加工し、放つ。
十属性の初級魔法がジェラルドに向かって飛んで行く。
【火球】【風の刃】【拡散する水弾】【岩石弾】【雷撃】
【氷結の矢】【聖者の小刀】【影の短剣】
【弾丸の種】【魔力弾】
着弾点に土煙が立ち昇り、ジェラルドの姿が消える。
放った本人がちょっと引くぐらいの波状攻撃だ。
初級魔法とはいえ消費が大きいがその辺りは「魔力補給機」の集めた魔力と自身の自然回復力で補える。
この戦法は簡単だ、至ってシンプルだ。
僕の豊富な魔力を使ったゴリ押し。
「虹色の指輪達」に刻み込まれた魔法は魔力さえあれば無詠唱で使える、ここに集中力は要らない。
後は「賢者」でとびっきりの魔法を詠唱すれば良い。
「うおらあああああああ!!」
まあわかってはいたけどね!
ジェラルドは【光牙剣】を使って「虹色の指輪達」の魔法を斬り裂いて突き進んで来る。
ゴリ押しだけで勝てる相手じゃ無いのはわかってる。
さあ、詠唱を。
とびきり強烈な魔法を!
「-始原の焔、開闢の焔よ、その力を我に与えよ、我が願いは勝利、導かれるは未来!眼前の敵を焼き尽くし、再びその使命を果たせ!-【神の焔】!」
光属性と炎属性の複合上級魔法【神の焔】。
僕の全力、僕本来の炎属性と光属性の魔法。
全身から力が抜ける。
魔力切れだ。
最終手段を使った、全力を出した。
「象るは神!司るは太陽!振るうは汝の如き力!神の名を与えられし技を見よ!エヴェ流戦闘術奥義!」
ジェラルドがより強い光を纏い、【神の焔】に向かって跳ぶ。
「光り輝け!【天照大御神】!」
太陽の様に輝く剣が【神の焔】を斬り裂く。
その光景を最後に、僕の意識は途絶えた。