ジェラルド・エヴェの猛攻
「-荒ぶる炎よ、一帯の敵を焼き尽くせ!-【範囲焼却】!」
僕を中心に炎が駆け巡る。
エヴェの独特な魔力コントロールのセンスは
通常の魔法が使えない代わりに、
独自の魔力放出法を生み出した。
エヴェ流魔法行使術と呼ばれるそれは、各人毎の技術や経験、感性で変幻自在に変化する。
ジェラルドが得意とするのは単純明快、放出だ。
体全体から三属性の魔力を放出し、
加護、加速、強化をこなす。
単純故に強く、応用性も高い。
ジェラルドと戦う際、気を付ける事は一つ。
「【襲雷破】!」
「【水の盾】!」
自分のペースで戦う事だ!
ジェラルドが練習用の木刀から繰り出した衝撃波と雷属性の魔力を水の盾で受け止める。
ジェラルドは万能だ。
その気になれば遠近中どの距離でも戦える。
距離をとったからといっても油断は禁物。
幸い僕は魔法に関しては天才。
今は初級と一部の中級を無詠唱で発動出来る。
魔法使いの基準でいえば随分な化物だけど、
ジェラルド達エヴェや前衛職の人々にとっては只の厄介なだけの魔法使いだ。
「【火球】!【風の刃】!
【拡散する水弾】!【岩石弾】!」
無詠唱で四属性の初級魔法を連発する。
直線的な火と岩の弾丸をジェラルドは難なくかわし、
光の魔力を一層強く放出させて水の散弾と風の刃を打ち消す。
「【閃光襲雷炎舞】!」
ジェラルドの剣が輝き、舞の様な動作で振られた剣から三属性の魔力を纏った衝撃波が僕を襲う!
っつーか、危なっ!!
「【大気爆裂】!【漆黒の盾】! 」
空気が炸裂し衝撃波を殺し、闇が三色の光を辛うじて掻き消す。
くそっ!
ジェラルドのペースに乗せられてちゃ駄目だ!
訓練場の地形を利用して回避?
ジェラルドは身体能力で上を行く!
考えろチェスター!
負けたくないなら考えろ!
思考に没頭していた一瞬の出来事だった。
ジェラルドの魔力の輝きが強くなり、僕は視界を奪われた。