僕とジェラルドの腕試し開始一分前
世界歴2000年、光の月、二日、アルクネス魔導帝国、シェド平原、シャイニィ聖王国前線基地、訓練場。
僕とジェラルドはお互いにどれぐらいの力量であるのかを図る為に訓練場に来た。
使える技や魔法を把握しておくのは大事だ。
技と技の連携、魔法との兼ね合い、隙。
それらを把握していればより効果的な連携が可能になる。
「一応確認しておくが、本気で良いんだな?」
「あったりまえだよジェラルド、
全力出してる時に連携が上手くいかないなんてシャレにならないからね」
さて、現時点での状況の確認をしよう。
僕の親友、ジェラルド・エヴェが操るは剣術。
正確には「エヴェ流戦闘術」全ての技を納めながら、その中の主に剣術の類を好んで扱う。
正直言って異常だ。
世界中の武器の技に精通し、自在に操るのだから。
魔法は使えない、彼や、彼の身内であるエヴェ流の人間はどうにも魔法が使えない者が多い。
使用属性は光、炎、雷の三属性。
因みに常人が扱える属性は
光、闇、炎、氷、風、地、水、雷、無、緑の十属性中三つまで。
魔法が使えないとはいえ、ジェラルドの素質そのものは最高ランクだ。
対してこの僕、チェスター・ソルラが使える魔法は多い。
初級、中級、上級と大まかに分類される魔法の階級の内、僕の実力で発動出来るのは中級まで。
属性については十属性全てを扱える。
まあこれについては魔術による肉体改造の結果で、常人が到達できる境地ではない。
第一僕はその改造の影響で肉弾戦が行えないのだ。
格闘や武術に必要な要素を全て魔法に捧げたのだから。
まあそんな僕に比べてジェラルドはヤバイ。
まあ、百聞は一見にしかず、見ていただこう。
「はあああああっ!」
気合を入れて叫ぶジェラルドから三属性の魔力が溢れ出す。
魔法が使えないんじゃないのかって?
あれは魔法じゃない、単なる魔力の放出だ。
ああなったジェラルドは強い。
単に魔力を放出しているだけと言っても、効力は抜群なのだ。
まず光属性。
その放出量の多さによって既にある程度の加護が発動し、
ジェラルドの防御力を高めている。
放出の仕方をある程度調節するだけで閃光やレーザーを放てる。
二つ目の炎属性。光属性のように放出させるだけで加護が発動し、攻撃力を高めている。
更に炎を噴射させることで擬似的な火球や火炎が放てるし、移動中の加速、空中での方向転換が可能。
止めに三つ目の雷属性。
これまた放出させるだけで加護が発動し、ジェラルドの思考や反応速度を上昇させる。
雷属性の魔力を放出することで相手を感電させる事も可能だ。
................さてはて。
簡単に説明しよう、なるだけわかりやすく。
魔法というのは皆さんご存知の通り魔力を消費して起こす奇跡。
魔力を魔法陣や詠唱を通す事で操り、行使する。
ジェラルドは魔法陣や詠唱が使えないが、そのまま放出することで簡易的、もしくは擬似的な魔法を行使する。
加護は本来魔力の集まる神殿や聖地などの地形で起こるか、
上位の存在から与えられる事で生まれる強化。
ジェラルドは莫大な魔力量を誇る為、さながら自らを神殿に見たてて加護を発動させるのだ。
さて、一応僕も特殊な人間の範疇な訳だけども?
この高スペック幼馴染を相手に何処までやれるかな?