弐十九 邂逅
ようやく出会えた、それなのに。
「如月! しっかりしろ、如月!」
いつもと違う、焦ったような夜光の声。しかし、如月にとっては聞くだけで落ち着くその声。そして温かなその手のぬくもりを肩に感じて、如月はぼんやりと夜光に目を向ける。
おぼつかない視界でも、それでも間違えることなんてない、その人影。
「あ、れ……っ……あ、あはは、ほん、とに、殿だ……」
「如月、お前どうしてこんな……」
「呼んだら……き、来てくれたね……え、えへへ、嬉しいな……」
目の前の夜光の顔がかすむ。
死ぬのかな。
でも殿がこうして目の前にいてくれるのがとっても幸せだから。
幸せだから……。
「と、殿……」
少しでも触れたくて。
力の入らない手を必死で持ち上げて彼の手に自分の手を重ねる。
そんな如月の手をそっと握って、夜光は如月に顔を近づけた。
「なんだ?」
「わ、私、私ね……殿のこと、大好き、なんだ……」
「……あぁ、分かっている。分かっているからもう話すな」
如月の目尻から一筋、涙が伝った。
「だから、ね、殿……っ……ず、ずっと、ずっと一緒に……ずっと側で……」
幸せなのに。いや、幸せだからだろうか。
溢れた涙が止まらない。
「私の……私の……」
ふわりと温かい殿の手に抱かれて。
如月は夜光の腕の中にいた。
「あぁ。あぁ、如月。叶えてやるさ、お前の望みならいくらでも叶えてやる」
「や、やった……っ……えへへ、殿、約、束だよ」
「そうだな。約束だ」
「……良か……た……」
「……如月? 如月っ」
「……」
もう見えない。聞こえない。
でも殿のことを感じられるから。
ただもうそれだけで。
ようやく出会えたのに……としか言えません……。
次話もよろしくお願いします。