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十八 突然の話

タイトル通り、突然の展開です。

歯車は回り始めます。

「佳代様、咲様がお呼びです」


如月に咲からの呼び出しがあったのは、鈴風が帰って二日後のことであった。


「母上から? なんだろう……」


普段から食事時には顔を合わせるため、呼び出しとなると、何か大事な話のはずだが……。


(母上、あの日以来なんか様子が変だもんなぁ)


ゆったりと微笑んでいることが多い咲が、ここ二日間、押し黙ったままで、堯郷も心配していた。

何かしたのかと問われ、これ幸いと髪飾りの話をしてみたが、やはり堯郷も何故咲があそこまで取り乱したのか分からないと言う。


とにかく良かれ悪かれ、行ってみればわかることだ。如月はさっそく母の私室へと赴いた。


「佳代、今日は大事な話があるの」


咲と向い合せに如月が座るか座らないかのうちに、咲は話し始めた。

その様子にやはり違和感を覚えながらも如月は努めて心を落ち着ける。


「大事な話……ですか」

「えぇ。心して聞きなさい」

「はい」

「あなたに縁談を持ってきたわ」

「……は? 縁談……?」

「そうよ。お相手は同じ"花鳥風月"の一国、森閑国の跡取りであなたより二つ上の遙遠(ようえん)様という方よ。先方にはもうお話も通して是非にと答えを……」

「ま、待ってください母上!」

「……何かしら」

「え、縁談などといきなり言われても……」


如月は思わず中腰になったのをかろうじておさえこみ再び座る。

考えてもみなかった。縁談、つまりは結婚することだ。

ありえない。あってはならない。

だって私は殿が……。


「驚くのも無理ないわ。でも断ることは認められない」

「そんな……私に結婚などとまだ……」

「早いなんてことはないのよ。あなたももう十七、適齢期だわ」

「い、嫌にございます!」


如月の明白な拒絶にも、咲は慌てることなくじっと如月のことを見つめた。


「言ったはずです。断ることは認めないわ」

「でも……だって……」

「……夜光殿かしら?」

「っ……」


ずばり確信をつかれて如月はうろたえる。

咲は相変わらず無表情のまま言葉を紡いだ。


「夜光殿が気になっているのね。知っているわ、あなた夜光殿を好いているものね。でもそれは恋ではないわ、如月。助けてもらった恩を感じているだけ。混同してはならないことよ」


突然のことに如月は混乱していた。

恋ではなくて恩義……?


「い、いや、ううん、でも……」


必死で首を振りながら考える如月を見て、咲はたたみかける。


「とにかく、先方との話はもうついているの。いまさらあなたが何か言ったところでどうこう出来る話でもない。これからいろいろ忙しくなるから覚悟しておきなさい。話はこれだけよ、下がりなさい」

「は、母上っ……」

「聞こえなかったかしら、下がりなさい」


有無を言わせぬ咲の声と、あまりに冷たい光を宿す咲の目を前にして何も言えなくなった如月は、少しの間逡巡してから、仕方なく深々と一礼して、咲の部屋を後にした。

咲、ようやく母の威厳を発揮笑

おろおろしているのが役目のか弱い女性、という設定でもあったのですが、やはり母、やる時はやります。

次で母の真意が明らかになります。


次話もよろしくお願いします。

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