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十七 動き出す歯車

ようやく話を流します!

若干急展開になること覚悟ですが……よければお付き合いください。

「では、お世話になりました、咲様。またね、佳代」

「道中お気をつけてね。お父様とお母様によろしくお伝えください」

「またいつでも来てくださいね、姉さま」


鈴風が来てからの二日はあっという間に過ぎてしまい、名残りおしくも別れの早朝である。

如月と咲の見送りのもと、まだ暗いうちから寒い季節独特のにおいの中で、鈴風はきっちり風よけを顔にまき馬にまたがっていた。


「佳代のほうこそ、今度うちに来なよ、歓迎するから。ん……? それは……」


微笑んでいた鈴風がふと如月の髪に目を止める。

そこにはせっかくだからと思って如月がつけていた、夜光の贈り物が光っていた。

鈴風の言葉に視線を移した咲が息をのむ。

突然変わった雰囲気に如月は戸惑った。


「佳代? あなたそれはもしかして……!」

「え、あ、はい、殿にもらったものです、母上」

「夜光殿に!?」

「えっ……なにかまずいことでも……」

「まずいもなにもそれは……」


咲がちらりと鈴風を見る。

鈴風は少しの間顔をこわばらせていたが、やがてふわりと笑った。


「綺麗じゃない、良かったわね、佳代」

「はい……」


つられて微笑みながら、如月は咲の様子が気になって仕方がない。

しかし鈴風が馬を歩かせ始めたことでとりあえず如月は鈴風に心を移した。


「姉さま、お元気で!」

「佳代もね~」


早朝、まだ眠る人々の迷惑にならないように速足程度の速度で馬を駆りながら、やがて鈴風は視界から消えていった。

そうなってようやく如月は咲を見る。


「あの、母上……? この髪飾り、何かつけてはいけないことでも……」

「……」

「母上……?」


咲はそこでようやく我に返ったようにハッと如月を見ると、何もいわずにくるりと踵を返した。


「あ、母上っ」


なんとなく追いかけることもはばかられて、如月はその場に立ち尽くす。

滅多に声を荒げない母が声を荒げたこと。

それに今の態度……。


「佳代様、そろそろお戻りにならないと風邪をお召しになりますよ」

「うん……」


琴音にうながされて歩きながら、如月はそっと髪飾りを取り外し、美しい青色のそれを見つめた。


「ねぇ、琴音。何がいけなかったんだろう?」

「……私には測りかねます」

「嘘」

「……」

「殿が私にくれた大事なものなのに……。あんな言われ方したらへこむなぁ……」


それから宮に戻り、部屋に帰ってほっとした時、琴音が呟くように言った。


「雪姫、にございますね?」

「え? うん、そうだよ。雪姫」

「……美しき花です。私も一度しか見たことがありませんが」

「そうなの?」

「えぇ。華に恵まれるこの国でも見ること叶いません。見ることができるのは明月ノ国だけとも言われております」

「ふぅん、そうなの……」


愛おしさが湧き上がって来て、如月は髪飾りを両手で包み込んだ。

母上がなんと言おうと、この髪飾りにどんないわれがあってもいい。殿がくれた大事なものだから……。


そんな如月を後ろから静かに見つめる琴音は、やがてふと視線をそらす。

見てはいけないものを見てしまった、そんな仕草で……。

分かりやすくフラグをガンガン立ててます笑

もっとひそやかに伏線を張る技術を身に着けていきたいものです……。

次でぐるっと歯車を回していきたいと思います。


次話もよろしくお願いします。

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