僕はごくごく平凡の・・・
僕はごくごく普通の学生でした。
将来の夢はごくごく普通の大学にいってごくごく普通に学生生活を満喫し、ごくごく普通の会社に就職をしたいと思っていました。
そして、ごくごく普通に出会った結婚相手とごくごく普通の生活をおくっていこうと希望(?)に満ち溢れていたのです。
しかし、運命のわかれ道は突然現れたのです。
僕の人生設計はごくごく普通の大学にいったところまでは合っていました。
ところが、大学の3年のときに彼女と人生を交えてしまったため、その後の人生の大幅な変更が余儀なくされました。
それはもう、ごくごく普通ではなく、常に波乱がつきまといスリルたっぷりな人生に…。
それはある日突然訪れました。
「ちょっとあんた」
その日はバイトがあり、僕はいつも通り…ではなく、偶々見つけたバイト先への近道を通っていた。
その道は、地元の人にもあまり知られてなさそうな道で数回通っているが、人に会ったことはなかった。
その日その道を通ったのは、本当に偶々だった。
そして、その道で声をかけられたのは…いや、人に会ったのは初めてだった。
例え、声をかけた人、初めて会った人が変わった服装をしていても…。
世の中には色々な人がいる。例えば、僕のように平凡を楽しんで生きている人や目の前の彼女のようにスパイごっこを楽しんでいる人もいる…。
「ちょっとあんた人が話かけてるの聞いてる?」
僕は、最初に周りを確認した。
僕の知り合いにこのような奇抜なファッション…いや、映画に出てくるスパイのような格好をする人はいないはずだ。
だから、僕の他に人がいないか確認をした。
だが、その場所には悲しいことに僕と彼女しかいない。
僕は仕方なく彼女に問いかける決心を固めた。
「えっ~と、僕のことでしょうか?」
「そう、あんたよ。他に誰がいるっていうの!」
僕は改めて周囲を見渡した。そして、再度同じ結論に達する。
「…誰もいませんね~。」
あゝなんていうことだ!なんで、この道を通ってしまったんだ!
いつもどうり素直にバイトへの道を通っていれば、このような奇抜…いや、スパイな格好の人に声をかけられることもなかったのに!
僕の胸のうちでは激しく後悔が渦巻いていた。
「っで、現状は把握したかしら?」
「ええ、否応なしに…」
悲しいかな僕は現状を把握した。現状として、僕はスパイな格好の人…いや彼女に捕まってしまった。
なんで、壁に押し付けられているのかは理解、出来ないが…。てか、なんで捕まえられているのだろう。
「思った通りだわ!」
「…」
なにが思った通りか知らないけどいい加減、壁からひき離してほしい…。
「あんた、この状況下で全く焦ってないわね。」
「いや、結構焦ってますが…」
このわけのわからない状況で焦らない人間がいたら是非、拝みたいものだ。
「…いいえ、受け答えしてるから焦ってないわ。」
「…」
全否定ですか…。
「焦っているのかいないのかはまぁいいわ」
…いいなら、壁から離してほしい。
僕は壁に引っ付きながら、解放を待った。
次の彼女の言葉が僕の今後の人生を変えることになるなんて全く考えもしなかった。
いい加減、腕も痛かったので…。
「あんた、私のパートナーになりなさい!」
「…」
「……」
「………」
「…………はぁ!?」
追伸
人生を変えることになる言葉はよく理解できなかった。
「秋穂ちゃん、あなた一般のかたを連れてきたの?」
僕は今、窓のない部屋にいた。僕を無理矢理連れてきたスパイな格好の彼女は現在、怒られいるらしい。
僕と彼女は隣合わせに座り、僕らの目の前には黒服のサングラスをかけた人が一人、その両端にこれまた、黒服の男女がそれぞれ陣取っている。
因みに唯一の出入口であるドアの前にも黒服の男性が立っている。
「だって、こいつ凄いのよ!」
なんだか、わかんないが今日バイトは無断欠席だ。
早いとこ家に帰りたい…。
「どうみても普通だろう。」
ええ、僕は普通の人です。
「そうじゃないの!廉も麗も黙ってて!」
スパイな格好の彼女が両端に陣取っている男女に抗議する。
そして、改めて前を向き、おそらくこの部屋にいる人物の中で一番地位が高いであろう人に僕を連れてきたわけを話し始めた。
「所長、こいつの顔を覚えられる?」
なにをいきなり言い出したんだ?所長と呼ばれた人物が僕を見る。
「私がこいつに会ったのは写真とかのデータから見て半年は経っているはずなの」
へー、そうだったんだ。
「でも、私はこいつの顔がどうしても覚えることができないのよ!それにこいつやたら勘がいいのか、写真は全部微妙にしか写ってないの!」
最近、微妙に視線を感じたのは彼女だったのか…。
「それに反射神経、状況判断、状況把握、記憶力…なにをとっても高いの!」
なんだか、最近の危機的状況がすべて彼女のせいのような気がする。
鉢が頭上から落ちてきたり、訳が解んないうちに男女のイザコザに巻き込まれたり、少しだけ見ていた地図の道を怖そうな人に聞かれたり…。
よく無事だったな~。
「それになんといってもこの平凡で覚えにくい顔!」
「……。」
「こんなにこの仕事に向いているやつはいないわ!」
彼女は言いはなった。
「確かに秋穂の言う通り覚えにくい顔だわ。」
ちょっと、お姉さん。
「そうだな。」
そして、お兄さん。
「ふむ、コードネーム・秋穂の要望通り君をコードネーム・流として採用する。」
なにより、おじさん。
「因みに僕に拒否権は?」
話からしてそんなもの存在しなさそうだけど一応。
「「「ない」」」
やっぱり。
「これより、君をスパイとして養成する。死ぬ気でありとあらゆる情報、武道などに精通してもらう。」
スパイって…、映画じゃあるまいし…。なんで、こんなことに巻き込まれたんだろう…。
僕はなかば、意識をとばしながら考えた。だけど、どんなに考えても彼女に出会ってしまったことが運の尽きということに辿りつくのだった。
こうして、気が付いたら僕は今時の映画でもありえない感じにスパイになっていました。
しかも、雇い主は国家だというのだから更に驚きです。
僕がこの事実を知ることになるのは大分先のこと。
サイトで掲載したものです。
気に入って頂けたら幸いです。