第157話「深海6000メートルの大冒険!?~日本の逆襲、南鳥島レアアース泥で中国に一矢報いるか~」
マリコ「どうもー!サチコ・マリコでーす!」
サチコ「よろしくお願いしますー」
マリコ「サチコ、私な、最近スマホの調子が悪くてん」
サチコ「へー、何が悪いん?」
マリコ「なんかな、充電がすぐ切れるし、カメラの起動も遅いし」
サチコ「それ、スマホが悪いんやなくて、あんたの使い方が悪いんちゃう?」
マリコ「ひどい!でもな、新しいスマホ買おうと思ったら、店員さんに言われてん」
サチコ「何て?」
マリコ「今、スマホの部品が足りなくて、入荷が遅れてますって」
サチコ「ああ、それはレアアースの影響かもしれへんな」
マリコ「レアアース?何それ、レアなステーキ?」
サチコ「肉ちゃうわ!希土類って呼ばれる17種類の金属元素のことや」
マリコ「17種類!?私、金属って言ったら鉄と銅と金と銀しか知らへんねんけど」
サチコ「お前の知識、小学生レベルやな。ネオジム、ジスプロシウム、テルビウム、イットリウム、ガドリニウム...」
マリコ「待って待って、全部ガンダムの登場人物みたいやな」
サチコ「モビルスーツちゃうわ!元素や、元素!」
マリコ「で、そのレアなんとかが足りへんの?」
サチコ「レアアースや!2025年の4月から中国がレアアースの輸出規制を始めてな、日本の産業界に大打撃を与えとるんや」
マリコ「中国が?また中国か」
サチコ「また、って言うなや。でもまあ、中国はレアアースの採掘で世界の約70%、精製・分離では約90%のシェアを握っとる」
マリコ「90%!?ほぼ独占やん」
サチコ「せやねん。世界中のハイテク産業が中国のレアアースに依存しとる状態や」
マリコ「でもさ、レアアースって何に使うん?うちの生活に関係ある?」
サチコ「めっちゃあるで。あんたが今持っとるスマホ、使っとるやろ」
マリコ「使っとるけど」
サチコ「スマホのバイブレーション機能、カメラのオートフォーカス、スピーカー...全部レアアースを使った磁石が入っとる」
マリコ「えー、そうなん」
サチコ「電気自動車のモーターにも必須や。ネオジム磁石っていう超強力な磁石がないと、EVは走られへん」
マリコ「テスラとかも?」
サチコ「テスラも、トヨタのハイブリッドも、全部や」
マリコ「風力発電は?」
サチコ「風力発電のタービンにも高性能磁石が必要や。あと、MRIの医療機器にも使われとる」
マリコ「MRI!?私、去年MRI撮ったわ」
サチコ「あの巨大な機械の中の磁石に、レアアースが使われとるんや」
マリコ「へー、知らんかったわ。てことは、レアアースがないと、スマホも車もMRIも作られへんってこと?」
サチコ「極端に言えばそうや。せやから、レアアースは産業のビタミンって呼ばれとる」
マリコ「ビタミン!?私、毎朝マルチビタミン飲んどるで」
サチコ「あんたのビタミン事情はどうでもええねん。少量で製品の性能を劇的に向上させるから、ビタミンに例えられとるんや」
マリコ「なるほどなー。で、そのビタミンを中国が止めたと」
サチコ「せやねん。2025年4月に中国政府は、アメリカへの報復措置として、ジスプロシウムとかテルビウムとか、7種類の重要なレアアースの輸出規制を始めた」
マリコ「アメリカへの報復?日本関係ないやん」
サチコ「最初はな。でも2026年1月6日、中国は日本にも軍民両用品目の輸出規制を発表したんや」
マリコ「軍民両用?」
サチコ「軍事にも民間にも使える製品のことや。レアアースもその対象に含まれるんちゃうかって言われとる」
マリコ「なんで日本にまで?」
サチコ「高市首相が国会で台湾有事について発言したのが気に入らへんかったらしい」
マリコ「台湾の話したら、レアアース止められるん?怖いな」
サチコ「せやねん。これが経済的威圧ってやつや。中国は資源を武器にして、気に入らん国に圧力をかけてくる」
マリコ「ヤクザみたいやな」
サチコ「まあ、国家レベルのヤクザやな」
マリコ「で、日本はどうなるん?」
サチコ「野村総合研究所の試算によると、レアアース輸出規制が3カ月続いたら、日本のGDPは約6600億円押し下げられる」
マリコ「6600億円!?私の年収何年分やねん」
サチコ「あんたの年収知らんけど、たぶん数万年分やな」
マリコ「数万年!?縄文時代から働いても足りへんやん」
サチコ「計算合うてるか知らんけど、とにかくとんでもない金額や」
マリコ「どの産業が一番ヤバいん?」
サチコ「自動車産業や。EVやハイブリッド車の駆動モーターにネオジム磁石が必須やねんけど、その中に入っとるジスプロシウムとテルビウムっていう重希土類は、中国依存度がほぼ100%なんや」
マリコ「100%!?完全依存やん」
サチコ「せやから規制が続いたら、自動車の生産量が17.6%減少するって試算も出とる」
マリコ「トヨタとか日産とか、大丈夫なん?」
サチコ「実際、2025年の5月には、レアアース磁石の中国からの輸出が前年比で7割減って、日本の自動車メーカーも一時生産停止に追い込まれた」
マリコ「うわー、えらいこっちゃ」
サチコ「風力発電も12%減、電子部品も8.5%減。日本の産業構造の根幹が揺らいどる」
マリコ「でもさ、サチコ」
サチコ「なんや」
マリコ「レアアースって、中国以外では採れへんの?」
サチコ「採れるで。埋蔵量で言うたら、中国は世界の約36%から40%くらい。ベトナム、ブラジル、ロシア、インドにもある」
マリコ「ほな、そっちから買えばええやん」
サチコ「そう簡単にはいかへんねん。採掘できても、精製・分離の技術が中国に集中しとるんや」
マリコ「精製?」
サチコ「鉱石から純粋なレアアースを取り出す工程や。これには高度な技術と設備がいるんやけど、世界の精製能力の90%以上が中国にある」
マリコ「ほな、オーストラリアで掘っても、結局中国に持っていかなあかんの?」
サチコ「今まではそうやった。オーストラリアで採掘しても、精製は中国に依存しとった」
マリコ「なんでそうなったん?」
サチコ「レアアースの精製には環境汚染がつきものでな。放射性物質とかも出てくる。先進国は環境規制が厳しいから、汚い仕事は中国に任せてきたんや」
マリコ「あー、なんか聞いたことある。安い労働力と緩い規制で」
サチコ「せやねん。で、気づいたら中国に首根っこ掴まれとった」
マリコ「自業自得やん」
サチコ「まあ、そういう面もあるな」
マリコ「でもさ、日本は昔から中国に依存しとったん?」
サチコ「それがな、2010年に一回痛い目に遭っとるんや」
マリコ「2010年?何があったん?」
サチコ「尖閣諸島沖で中国漁船が海上保安庁の巡視船に衝突する事件があったやろ」
マリコ「あー、あれか。船長が逮捕されたやつ」
サチコ「せや。その後、中国が日本へのレアアース輸出を事実上止めたんや」
マリコ「えー!そんなことあったん」
サチコ「レアアース・ショックって呼ばれとる。当時、日本のレアアース輸入の約90%が中国からやったから、産業界は大パニックや」
マリコ「90%!今より酷いやん」
サチコ「せや。それで日本は慌てて対策を始めた。調達先の多角化、リサイクル技術の開発、代替素材の研究、戦略備蓄の強化...」
マリコ「色々やったんやな」
サチコ「その結果、中国依存度は90%から約60%まで下がった」
マリコ「おお、改善しとるやん」
サチコ「でも、さっき言うたジスプロシウムとかテルビウムとか、重希土類はいまだに72%から100%が中国依存なんや」
マリコ「肝心なやつは依存したままなんか」
サチコ「せやねん。軽希土類の多角化は進んでんねんけど、重希土類は中国以外にほとんど産地がないんや」
マリコ「詰んどるやん」
サチコ「そこで出てくるのが、南鳥島沖のレアアース泥や」
マリコ「南鳥島?なんか聞いたことあるような」
サチコ「日本最東端の島や。東京から南東に約1900キロ離れた絶海の孤島」
マリコ「1900キロ!?めっちゃ遠いな」
サチコ「ほぼ太平洋のど真ん中や。でもな、ここは日本の排他的経済水域、EEZの中にあるんや」
マリコ「EEZ?」
サチコ「沿岸から200海里、約370キロまでの海域で、その国が資源を独占的に利用できる権利がある区域のことや」
マリコ「日本のもんってことやな」
サチコ「そういうことや。で、2012年から2013年にかけて、東京大学の加藤泰浩教授を中心とする研究チームが、この南鳥島沖の海底で、とんでもないもんを発見したんや」
マリコ「とんでもないもん?宝船?」
サチコ「宝船ちゃうわ!超高濃度レアアース泥や」
マリコ「泥?泥んこに?」
サチコ「海底に堆積した泥の中に、レアアースが高濃度で含まれとるんや。その濃度は、中国の陸上鉱山の約20倍」
マリコ「20倍!?めっちゃ濃いやん」
サチコ「せやねん。しかも、その量がとんでもない。推定埋蔵量は約1600万トン以上」
マリコ「1600万トン!?どれくらいの量なん?」
サチコ「日本の年間レアアース需要は約1万8000トンや。単純計算で数百年分」
マリコ「数百年分!?江戸時代から使い始めても、まだ余るやん」
サチコ「いや、江戸時代にスマホとかあれへんしな」
マリコ「そらそうや」
サチコ「もっと具体的に言うとな、ジスプロシウムは世界消費の57年分、イットリウムは62年分、ユーロピウムは47年分が、南鳥島沖だけで賄える計算や」
マリコ「えー!日本、めっちゃ金持ちやん」
サチコ「ポテンシャルとしてはな。この資源を活用できたら、日本は世界第4位のレアアース大国になれるって言われとる」
マリコ「第4位!?どこが上なん?」
サチコ「中国、ベトナム、ブラジル...で、日本が4位に入る可能性がある」
マリコ「資源小国って言われとった日本が、資源大国に?」
サチコ「夢のある話やろ」
マリコ「めっちゃ夢あるわ。でも待って、なんで海底に泥があるん?」
サチコ「ええ質問やな。これは約3450万年前の地球の寒冷化と関係があるんや」
マリコ「3450万年前!?恐竜の時代?」
サチコ「恐竜はもうおらへん。新生代や。その頃、地球が寒冷化して、海洋の循環が変わったんや」
マリコ「海洋の循環?」
サチコ「海山の周りで湧昇流っていう上昇する海流が発生して、栄養豊富な深層水が表層に上がってきた」
マリコ「栄養豊富?」
サチコ「せや。それでプランクトンが大発生して、魚がめっちゃ増えた」
マリコ「魚!私、魚大好き」
サチコ「あんたの食い物の好みはどうでもええねん。その大量の魚の骨が海底に堆積して、その過程でレアアースが濃集したんや」
マリコ「魚の骨からレアアース?」
サチコ「正確にはもっと複雑やけど、魚の骨、つまりリン酸カルシウムにレアアースが吸着されやすいんや」
マリコ「へー、ほんま。魚さんありがとうやな」
サチコ「3450万年前の魚にお礼言うてもな」
マリコ「でもさ、サチコ」
サチコ「なんや」
マリコ「その泥、どうやって採るん?海底やろ?」
サチコ「そこが一番の課題やねん。水深約6000メートルの深海にあるんや」
マリコ「6000メートル!?富士山より高いやん」
サチコ「高いっていうか、深いやな。水圧もとんでもないことになっとる」
マリコ「どれくらいの水圧?」
サチコ「1平方センチメートルあたり約600キロの圧力がかかる」
マリコ「600キロ!?私の体重の10倍以上やん」
サチコ「あんたの体重は知らんけど、人間やったら一瞬でぺしゃんこや」
マリコ「怖いな...」
サチコ「せやから、人が潜って採掘するのは不可能。特殊な技術がいるんや」
マリコ「どんな技術?」
サチコ「エアリフト方式っていうてな。パイプを海底まで伸ばして、圧縮空気を送り込む。すると泥と海水が混ざって、浮力で上がってくるんや」
マリコ「掃除機みたいな感じ?」
サチコ「まあ、似たようなもんやな。巨大な海底掃除機や」
マリコ「6000メートルのホースを伸ばすんか。すごいな」
サチコ「スカイツリーの高さが634メートルやから、約10本分の長さのパイプを海に下ろすことになる」
マリコ「10本分!?想像つかへんわ」
サチコ「で、この技術を実証するために、2026年1月12日、ついに試験採掘が始まったんや」
マリコ「え、もう始まったん!?」
サチコ「せや。海洋研究開発機構、JAMSTECの地球深部探査船ちきゅうが、静岡の清水港から出航した」
マリコ「ちきゅう?地球?」
サチコ「船の名前や。人類史上最高の掘削能力を持つ科学船で、全長210メートル、高さ130メートルの巨大な船や」
マリコ「130メートル!?ビルみたいやな」
サチコ「海に浮かぶ要塞みたいなもんや。この船から特殊なパイプを海底まで伸ばして、レアアース泥を吸い上げる」
マリコ「いつまでやるん?」
サチコ「航海期間は1月12日から2月14日までの予定や。約1カ月かけて、南鳥島沖で試験採掘を行う」
マリコ「2月14日!?バレンタインデーやん」
サチコ「バレンタインは関係ないわ」
マリコ「でも、ロマンチックやな。深海からチョコみたいな泥を引き上げるなんて」
サチコ「泥はチョコちゃうし、ロマンチックでもないわ。国家の命運をかけたプロジェクトやで」
マリコ「あんた、少しは乙女心持った方がええで」
サチコ「余計なお世話や!んで今回の試験は、機器の作動確認がメインや。量を問わず、6000メートルの深海からレアアース泥を引き上げることができれば成功」
マリコ「成功したらどうなるん?」
サチコ「2027年1月から、もっと大規模な試験を行う予定や。1日あたり約350トンの泥を採掘する能力を実証する」
マリコ「350トン!?どれくらいの量やねん」
サチコ「大型トラック約12台分くらいかな」
マリコ「毎日12台分の泥を深海から吸い上げるんか。すごいな」
サチコ「で、2028年度以降に商業生産体制を構築する計画や」
マリコ「2028年か。あと2年やな」
サチコ「政府は2030年ごろに商業採掘が始まる可能性があるって言うとる」
マリコ「ほな、あと4年で日本は資源大国に?」
サチコ「まあ、楽観的なシナリオやとな。課題も山積みや」
マリコ「どんな課題?」
サチコ「まず、コストの問題。深海6000メートルでの採掘は、探査船の燃料費、機器の維持費、人件費...とんでもなく金がかかる」
マリコ「どれくらい?」
サチコ「正確な数字は分かれへんけど、採掘・精製までの一貫コスト削減には、5年から10年の技術進化が必要やって言われとる」
マリコ「中国の陸上鉱山より高いんやろな」
サチコ「せや。中国は既に設備が整っとって、スケールメリットもある。低コストで生産できる体制が確立しとる」
マリコ「ほな、日本が採掘しても、値段で負けるん?」
サチコ「最初のうちはそうかもしれへん。でも、南鳥島の泥には決定的な強みがあるんや」
マリコ「強み?」
サチコ「まず、放射性物質がほとんど含まれてへん」
マリコ「放射性物質?」
サチコ「中国の陸上鉱山では、レアアースと一緒にトリウムとかウランとかの放射性物質が出てくるんや。これの処理にめっちゃコストがかかるし、環境汚染の原因にもなる」
マリコ「南鳥島の泥は?」
サチコ「ほとんど含まれてへん。クリーンなレアアースって呼ばれとる」
マリコ「クリーン!環境に優しいんや」
サチコ「せや。今の時代、ESGとか環境意識が高まっとるやろ。クリーンなレアアースは、それだけでブランド価値がある」
マリコ「世界が欲しがる資源になるかもしれへんってこと?」
サチコ「可能性はあるな。あと、もう一つ重要なポイントがある」
マリコ「何?」
サチコ「南鳥島の泥には、重希土類が豊富に含まれとる」
マリコ「重希土類?さっきも出てきたジスプロシウムとか?」
サチコ「せやせや。通常のレアアース鉱床では、軽希土類が9割以上で、重希土類は1%から5%程度しかない」
マリコ「ほな、南鳥島は違うん?」
サチコ「重希土類の含有率が相対的に高いんや。これがめっちゃ重要やねん」
マリコ「なんで?」
サチコ「重希土類こそが、中国が独占しとって、日本が一番困っとるやつやからや!」
マリコ「あー、EVのモーターに必須のやつやな」
サチコ「そうや。2030年時点でも、西側先進国は重希土類需要の91%を中国に依存するって予測されとる」
マリコ「91%!?ほとんど変わらへんやん」
サチコ「軽希土類の脱中国依存は進んでも、重希土類は構造的に中国依存が残るんや。せやから、南鳥島で重希土類が採れるってのは、戦略的にめっちゃ重要」
マリコ「なるほどなー。でもさ、サチコ」
サチコ「なんや」
マリコ「中国はこのプロジェクト、黙って見とるん?」
サチコ「見てへんで。めっちゃ気にしとる」
マリコ「どういうこと?」
サチコ「2011年に日本がレアアース泥を発見した直後から、中国は南鳥島周辺の公海でレアアース調査を開始しとる」
マリコ「公海?日本のEEZやないとこ?」
サチコ「せや。EEZのすぐ外側で、せっせと調査しとる」
マリコ「なんで?」
サチコ「日本が開発を躊躇しとる間に、周辺の好条件なエリアを先占しようとしてるんちゃうかって言われとる」
マリコ「せこいな」
サチコ「それだけやない。2025年6月には、中国の空母が南鳥島周辺海域で活動しとった」
マリコ「空母!?戦争するつもり?」
サチコ「キヤノングローバル戦略研究所の専門家によると、中国が邪魔しに来ていて、空母の航路を見てもかなり南鳥島を意識している、ある意味プレッシャーをかけているって」
マリコ「怖いな...」
サチコ「中国にとって、南鳥島は一番面倒くさい存在なんや。自分たちが独占しとるもんが一気に崩れるわけやから」
マリコ「独占崩されたら困るもんな」
サチコ「せやから、日本は国を挙げてここを守らなあかんし、どうスピードアップさせるかが課題なんや」
マリコ「国家プロジェクトやな」
サチコ「まさにそう。内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム、SIPっていうんやけど、9府省と4つの国立研究機関が連携して進めとる」
マリコ「9府省と4つの国立研究機関!?すごい規模やな」
サチコ「せや。小野田紀美科学技術相も、特定国に依存しない安定した国産レアアースの供給体制の実現は、日本の経済安全保障上極めて重要って言うとる」
マリコ「経済安全保障か」
サチコ「実はこれな、前のベネズエラの話ともつながっとるんや」
マリコ「え、どういうこと?」
サチコ「トランプ大統領がベネズエラを攻撃した理由の一つに、石油資源の確保があったやろ」
マリコ「言うてたな。世界最大の原油埋蔵量があるって」
サチコ「グリーンランドを買おうとしてる理由の一つも、レアアースやねん」
マリコ「あ、グリーンランドにもレアアースあるって言うとったな」
サチコ「世界最大規模のレアアース鉱床があるって言われとる。トランプはそれが欲しいんや」
マリコ「資源を巡る争いが、世界中で起きとるんやな」
サチコ「せやねん。21世紀は資源の世紀って言われとる。石油もレアアースも、持っとる国が強い」
マリコ「日本も南鳥島で、その仲間入りできるかもしれへんってこと?」
サチコ「可能性はある。成功したら、日本は資源供給国として国際社会でのプレゼンスを劇的に高めることができる」
マリコ「同盟国に売ったりできるん?」
サチコ「アメリカとかEUとかに供給できるようになったら、外交カードにもなる」
マリコ「中国みたいに、気に入らん国には売らへんって脅せるわけか」
サチコ「まあ、日本がそんなことするかは別として、交渉力は上がるな」
マリコ「なるほどなー。でもさ、サチコ」
サチコ「なんや」
マリコ「私、一つ気になることあんねんけど」
サチコ「何?」
マリコ「その深海の泥を採ったら、海の生態系とか大丈夫なん?」
サチコ「ええ質問やな。そこは研究者も気にしとるとこや」
マリコ「深海って、なんか変な生き物おるやろ。チョウチンアンコウとか」
サチコ「チョウチンアンコウは深海魚やけど、もっと深い6000メートルやと、また違う生態系があるんや」
マリコ「どんな生き物がおるん?」
サチコ「深海のバクテリアとか、ゴカイとか、ナマコの仲間とか...まだ知られてへん生物もおるかもしれへん」
マリコ「それを掃除機で吸い込んだら、可哀想やな」
サチコ「せやから、環境モニタリングも同時に実施しとるんや」
マリコ「どんな?」
サチコ「江戸っ子1号っていう海底観測装置を使って、2年間にわたって生態・環境データを収集しとる」
マリコ「江戸っ子1号!?なんでそんな名前?」
サチコ「知らんわ。でも、植物プランクトンの光合成効率の低下を検出する装置とか、ビデオ映像からAIで生物をモニタリングするシステムとか、色々使って影響を調べとる」
(※藍埜注:深海探査機「江戸っ子1号」の名前は、東京都・千葉県の中小企業が主体となった産官学金連携プロジェクトで開発されたことに由来し、「江戸」は地域、「1号」は最初の(試作)機であることを示し、ものづくり日本の技術力をアピールする意味が込められているそうです)
マリコ「AIまで使うんや。ハイテクやな」
サチコ「深海採掘が環境にどんな影響を与えるか、科学的に検証しながら進めなあかんからな」
マリコ「確かに。環境壊してまで採掘したら、本末転倒やもんな」
サチコ「せやねん。サステナブルな開発が求められとる」
マリコ「サステナブル。持続可能やな」
サチコ「お、カタカナ語よう知っとるやん」
マリコ「最近覚えてん」
サチコ「まあ、もう常識やけどな。で、もう一つ課題があって、精製技術の確立や」
マリコ「精製?さっき言うてた、鉱石から取り出す工程?」
サチコ「せや。深海の泥からレアアースを取り出すには、既存の陸上鉱石とは違う処理方法が必要かもしれへん」
マリコ「違う方法?」
サチコ「希塩酸を使ってレアアースを浸出させて、分離・精製するんやけど、泥の組成が陸上鉱石と違うから、最適な方法を確立せなあかん」
マリコ「難しそうやな」
サチコ「あと、残った泥の処理もある。中和して無害化した後、埋立資材やセメント資材として利用することを検討しとる」
マリコ「ゴミも出さへんようにするんやな」
サチコ「せや。環境負荷を最小限に抑えながら、経済的にも成り立つシステムを作らなあかん」
マリコ「大変やな。でも、やる価値はあるんやろ?」
サチコ「めっちゃある。今、日本は中国のレアアース輸出規制で、いつ産業が止まるか分からへん状態やねん」
マリコ「綱渡りやな」
サチコ「せや。兵庫県のある製造会社は、あと2カ月で備蓄がなくなるって頭抱えとるって報道されとった」
マリコ「2カ月!?そんなギリギリなん?」
サチコ「中小企業は特に厳しい。大企業は在庫を年単位で持っとるけど、中小はそんな余裕ない」
マリコ「中小企業が潰れたら、下請けとか、色んなとこに影響出るやろな」
サチコ「日本の産業構造は、中小企業が支えとるからな」
マリコ「なんか、ほんまに大変なんやな」
サチコ「せやから、南鳥島のプロジェクトは、日本の生存をかけた挑戦なんや」
マリコ「生存をかけた...」
サチコ「大げさに聞こえるかもしれへんけど、レアアースがなければハイテク産業は成り立たへん。EVも作られへん、風力発電も増やせへん、医療機器も動かへん」
マリコ「現代文明が止まってしまうんやな」
サチコ「せや。だから、日本は複数の対策を同時に進めとる」
マリコ「南鳥島だけやないの?」
サチコ「南鳥島は一番の切り札やけど、それだけに頼るわけにはいかへん」
マリコ「他にどんな対策があるん?」
サチコ「まず、調達先の多角化。オーストラリアのライナス社、フランスのカレマグ社とか、中国以外の供給元を開拓しとる」
マリコ「オーストラリアから買えるようになったん?」
サチコ「2025年10月に、双日がオーストラリアから重希土類を初輸入した。将来的に国内需要の約30%をカバーする計画や」
マリコ「おお、進んどるやん」
サチコ「あと、リサイクル技術の開発。使用済みのスマホとか電子機器からレアアースを回収する」
マリコ「都市鉱山ってやつやな」
サチコ「せやせや。大都市に蓄積された廃棄物を鉱山として認識して、資源化する」
マリコ「賢いな。ゴミが宝になるんや」
サチコ「三つ目は、代替技術の開発。レアアースを使わへん磁石とか材料の研究」
マリコ「レアアースなしで磁石作れるん?」
サチコ「まだ研究段階やけど、ミネベアミツミっていう会社が、スマホカメラ用の小型アクチュエーターでレアアース不使用の製品を開発しとる」
マリコ「すごいな。日本の技術力」
サチコ「最後に、戦略備蓄の強化。いざという時のために、レアアースを国家として蓄えておく」
マリコ「石油備蓄みたいなもんか」
サチコ「せや。2010年の教訓から、企業も在庫を年単位で持つようになった」
マリコ「色んな対策をしとるんやな」
サチコ「一つに頼らへんで、複数の手を打つ。それがリスク管理や」
マリコ「なるほどなー」
サチコ「で、今一番注目されとるのが、南鳥島のプロジェクトってわけや」
マリコ「世界初の挑戦やもんな」
サチコ「せや。成功したら、日本は深海レアアース採掘技術のパイオニアになれる」
マリコ「他の国にも技術を売れるん?」
サチコ「可能性はある。ライセンスやノウハウの提供で経済的収益を得られるかもしれへん」
マリコ「日本発の技術で、世界が変わるかもしれへんのやな」
サチコ「そういうこっちゃ」
マリコ「サチコ、私も応援したいわ」
サチコ「どうやって?」
マリコ「南鳥島に行って、ちきゅうを見守ったる!」
サチコ「南鳥島は一般人立入禁止やで。自衛隊と気象庁の職員しかおらへん」
マリコ「えー、行かれへんの」
サチコ「絶海の孤島やからな。滑走路もないし、船でしか行けへん」
マリコ「ほな、スマホのリサイクルに出すわ。都市鉱山に貢献」
サチコ「お、それはええことや」
マリコ「古いスマホ、何台か溜まっとるし」
サチコ「あと、EVに乗るとかもレアアース需要に貢献することになるな」
マリコ「私、まだガソリン車やわ」
サチコ「まあ、それはゆっくりでええけど」
マリコ「でもさ、サチコ」
サチコ「なんや」
マリコ「この話聞いとったら、日本ってすごいなって思ったわ」
サチコ「どういう意味?」
マリコ「資源がない国って言われてきたのに、深海の泥から資源を掘り出そうとしてるやん」
サチコ「せやな」
マリコ「ないなら作る、ないなら掘る。その根性がすごいと思う」
サチコ「お前、たまにはええこと言うな」
マリコ「たまにはって何や!いつもええこと言うとるわ!」
サチコ「いや、いつもはボケばっかりやんか」
マリコ「ボケの中に真実があるんや!」
サチコ「まあ、それは認める」
マリコ「でもな、私思うねんけど」
サチコ「何?」
マリコ「これ、レアアースだけの問題やないと思うんよ」
サチコ「どういうこと?」
マリコ「中国に依存しすぎとることが問題なんちゃう?資源だけやなくて、製品も、食料も、色々と」
サチコ「鋭いな。その通りや」
マリコ「今回のレアアース問題が教えてくれとるのは、特定の国に頼りすぎたらあかんってことやと思うねん」
サチコ「せやな。経済のグローバル化で効率は上がったけど、リスクも高まった」
マリコ「サプライチェーンが一箇所で切れたら、全部止まるもんな」
サチコ「コロナの時もそうやったな。マスクとか医療用品が足りへんくなった」
マリコ「せやせや。あの時も中国の工場が止まって大変やった」
サチコ「だから今、世界中で経済安全保障の見直しが進んどる」
マリコ「自国でできることは自国でやる、ってことか」
サチコ「完全な自給自足は無理やけど、致命的なものは自分で確保できるようにする」
マリコ「レアアースは致命的なもんやな」
サチコ「せや。なければ現代文明が止まる」
マリコ「南鳥島のプロジェクト、成功してほしいわぁ~」
サチコ「成功するかどうかは、これからの技術開発と、国の支援次第や」
マリコ「私ら一般市民にできることある?」
サチコ「まずは知ることやな。今日みたいに、レアアースって何か、なんで大事か、知ってもらうこと」
マリコ「うんうん」
サチコ「あとは、このニュースに関心を持ち続けること。メディアが取り上げへんかったら、予算も減らされてしまうかもしれへん」
マリコ「忘れたらあかんってことやな」
サチコ「せやねん。それと、リサイクルに協力すること。古いスマホとか、電子機器を適切に回収に出す」
マリコ「都市鉱山への貢献やな」
サチコ「あとは、選挙で資源政策を重視する候補者を選ぶとか」
マリコ「政治にも関わってくるんやな」
サチコ「経済安全保障は国家戦略やから、政治家の理解と支援がいるんや」
マリコ「分かった。私、今日から経済安全保障評論家になるわ!」
サチコ「ほんな急になれるわけないやろ」
マリコ「マリコ・エコノミック・セキュリティ・アナリスト!」
サチコ「名前だけ長くても中身がないと意味ないで」
マリコ「中身はこれから詰める!」
サチコ「いや、あんたはまず漫才の中身詰めてくれって毎回言うとるやんけ!」
マリコ「それはサチコに任せる!」
サチコ「丸投げすな!」
マリコ「分業や、分業!」
サチコ「分業の比率おかしいやろ!」
マリコ「でもさ、サチコ」
サチコ「なんや」
マリコ「最後に一つだけ言いたいことあるわ」
サチコ「何や」
マリコ「深海6000メートルの泥を掘る日本の技術者さんたち、ほんまにすごいと思う」
サチコ「せやな」
マリコ「誰も行ったことのない深さに挑戦して、日本の未来を切り開こうとしとる」
サチコ「チャレンジ精神やな」
マリコ「その姿勢は、私らも見習わなあかんと思うねん」
サチコ「お前は何にチャレンジするん?」
マリコ「えーと...」
サチコ「考えてへんのかい」
マリコ「深海6000メートルの漫才!」
サチコ「どうやってやんねん」
マリコ「潜水艦の中で漫才するねん。水圧に負けへんボケをかます」
サチコ「ぺしゃんこになるわ」
マリコ「ほな、宇宙漫才!」
サチコ「宇宙行く金ないやろ」
マリコ「ほな、AIに漫才させる」
サチコ「自分でやれや」
マリコ「じゃあさ、レアアース漫才コンビ結成」
サチコ「何やねんそれ」
マリコ「ネオジムとジスプロシウム」
サチコ「名前覚えにくいわ。っていうかこいつら喋られへんやろ」
マリコ「でも希少価値高いで」
サチコ「あほ!漫才の希少価値はボケとツッコミの面白さで決まるねん!もうええわ!」
マリコ「どうも、ありがとうございましたー」
サチコ「ありがとうございましたー」
二人「サチコ・マリコでしたー!」




