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サチコとマリコの時事ネタ漫才  作者: 藍埜佑


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第218話「サンマ1匹21万円の秋!? ~北海道がブリに乗っ取られ、静岡と鹿児島がお茶で殴り合う、日本の食卓・大改編スペシャル~」

マリコ:(両手で大事そうに、見えない何かを抱えるパントマイムで登場)そーっと……そーっと……よし、ここまで来れば……


サチコ:何してんねん。また変なもん持ち込んできたんか。


マリコ:変なもんやない!今日の晩御飯のおかずや!


サチコ:おかず?何も持ってへんやんけ。


マリコ:アホか!これは「概念としてのサンマ」や!


サチコ:概念のサンマ!?


マリコ:せや!本物のサンマなんてもう高うて買えへんから、エアで塩焼きにして、エア大根おろしを添えて食べるんや!


サチコ:どんだけ悲しい晩御飯やねん!……でもな、マリコ。あながち笑えへん事態になっとんねん。今年の7月、札幌市中央卸売市場の初水揚げで、サンマにいくらの値がついたか知っとるか。


マリコ:えーっと……初物やし、ご祝儀相場で1匹3000円くらい?


サチコ:甘いわ。1キロ111万2000円。スーパーの店頭に並んだ値段は、1匹「21万円」や。


マリコ:にじゅういちまんえん!?サンマ1匹が私の家賃より高いやんか!それ、もう魚の形した純金ちゃうん!?


サチコ:純金やない、ただのサンマや。昔は10キロ1000円、1匹100円でお釣りが来る「秋の味覚の大衆魚」やったのにな。


マリコ:なんでそんなセレブ魚になってもうたん!?サンマが急にブランド品でも持ち歩き出したんか!


サチコ:あほ!サンマがシャネルのバッグ持つかいな!原因は「地球温暖化」と「海洋環境の激変」や。日本の年平均気温は100年で約1.40℃上がってて、2024年は統計開始以来最高のプラス1.48℃を記録したんや。2025年も3位に入る勢いや。しかも日本近海の海面水温は、世界平均の約2倍のスピードで上がっとんねん。


マリコ:海がお湯になっとるんか!


サチコ:そうや。サンマは冷たい水がごっつ好きやから、水温が上がった日本近海に寄り付けへんようになった。昔は毎年20万トン獲れてたのが、2024年には約3万8000トン。2025年に約6万4000トンまでちょっと回復したけど、全盛期の2割や。スルメイカに至っては、過去20年で94パーセント減。水産庁は2025年度の漁獲枠を、過去最少の1万9200トンにする案まで出しとる。


マリコ:サンマもイカも、もう「幻の生き物」になりつつあるんやな……。うちのエア・サンマ定食が、ホンマにエアになってまう…。


サチコ:サケもそうや。北海道のサケも壊滅的な不漁やねん。でもな、逆に「めっちゃ増えてる魚」もおるんやで。


マリコ:おっ!なんやなんや!安くて美味しいやつか!?


サチコ:ブリや。


マリコ:ブリ!冬の鍋の主役やん!


サチコ:もともと西日本や北陸の魚やったブリが、水温上昇でどんどん北上して、今や北海道で爆獲れしとんねん。1990年に北海道で400トンしか獲れんかったブリが、2024年には約1万6000トン!およそ40倍に増えとる!


マリコ:よんじゅうばい!?北海道の海、ブリに乗っ取られとるやん!


サチコ:サンマやサケを獲るための網や加工工場しかなかった北海道の港町は、「こんなデカい魚、どうやって処理すんねん!」って大パニックや。急いでブリ用の加工設備を作ったり、ブリの缶詰を開発したり、てんやわんややで。


マリコ:「シャケの切り身」の代わりに「ブリの切り身」が北海道名物になるんか!木彫りの熊も、くわえてる魚をブリに変えなあかんな!


サチコ:木彫りの熊にブリはデカすぎるわ!でも、サワラやタチウオ、トラフグなんかの暖かい海の魚も、どんどん東北や福島まで北上して増えとるんや。


マリコ:海の中の引っ越しラッシュやな。じゃあ、海の幸が変わるってことは、陸の食べ物も変わるんか?


サチコ:その通りや。農業も「地殻変動」が起きとる。一番分かりやすいのが、日本人の主食「お米」やな。


マリコ:お米!うち、お米大好きやで!


サチコ:知っとる、知っとる、そんな眼をキラキラさせんでもええ。2023年は猛暑の影響で、お米が白く濁る「白未熟粒」が大量発生して、最高ランクの「一等米」の比率が59.6パーセントまで落ち込んだ。2024年は75.9パーセントまで持ち直したけど、それでも西日本や東日本で品質低下の報告が相次いどんねん。


マリコ:お米が白く濁る……それ、炊く前からおかゆ状態になっとるってこと!?


サチコ:おかゆにはなっとらんわ!品質が落ちるってことや。せやから今、暑さに強い「高温耐性品種」の作付けが急拡大しとる。2024年産では、主食用米の16.4パーセントが高温耐性品種になった。


マリコ:暑さに強いお米!夏休みの部活のキャプテンみたいやな!


サチコ:まあ、頼もしい存在ではあるな。でも、お米はまだ品種改良で対応できるからマシな方や。問題は、木を植えてから実がなるまで何年もかかる「果樹」や。


マリコ:果物か!うち、みかん大好き!こたつでみかん、最高やん!


サチコ:わかっとる、わかっとる、せやからそんな眼をキラキラさせんでもええねん。その「こたつでみかん」が、将来できんようになるかもしれへんで。


マリコ:えっ!?なんで!?こたつが禁止されるん!?


サチコ:そっちちゃうわ!みかんの産地が消えるかもしれへんのや!和歌山や愛媛、静岡といった「温州みかん」の主産地が、暑すぎて皮と実の間に隙間ができる「浮皮」とか、日焼けの被害に苦しんどる。このまま温暖化が進めば、今世紀末には現在の栽培適地がすべて不適地になる恐れがある、っていう最悪の予測まであるんや。


マリコ:みかんが消える!?うちの冬の楽しみが!


サチコ:代わりに、みかんの栽培適地がどんどん北上して、今は新潟や北関東、南東北の沿岸部まで広がっとる。


マリコ:「東北みかん」の誕生か!


サチコ:青森の「りんご」も深刻や。暑さのせいで実がつかない「着果不良」が多発しとる。りんごの栽培適地も北上してて、将来は北海道がほぼ全域適地になるって言われとるんや。


マリコ:じゃあ、将来は「こたつでみかん」じゃなくて「こたつで北海道りんご」になるんか……なんかピンとこえへんな。


サチコ:しかも、産地の「仁義なき戦い」も起きとるで。


マリコ:仁義なき戦い!?農家のおっちゃんたちがトラクターでチキンレースでもしてんの!?


サチコ:トラクターでレースはせん!「お茶」の話や。お茶と言えばどこや?


マリコ:そら静岡やろ!富士山とお茶畑!


サチコ:その静岡が、2024年のお茶(荒茶)の生産量で、鹿児島に抜かれて2位に転落してん!


マリコ:ええーっ!?あの静岡が!?


サチコ:静岡は高齢化とか後継者不足もあるんやけど、急な暑さでお茶の葉が育ちすぎたりして品質管理に苦しんどる。一方の鹿児島は、平坦な土地で大規模な機械化を進めてて、気候適応もバッチリやった。ところが!


マリコ:ところが!?


サチコ:最新の2026年のデータでは、静岡が「てん茶」、つまり抹茶の原料の生産にシフトする戦略が当たって、生産量1万700トンで再び鹿児島を抜き返して全国1位に返り咲いたんや!


マリコ:抜きつ抜かれつの大デッドヒートやんか!静岡の執念の逆襲!お茶の葉でビンタし合うような激しい戦いやな!


サチコ:お茶っ葉でビンタなんかできるかいな!でも、気候変動を逆手にとったビジネスモデルの転換が、生き残りの鍵になるっていうええ見本やな。


マリコ:すごいなー。南から北へ、色んなもんが動いとるんやな。


サチコ:せやねん。サツマイモなんか、昔は寒冷地じゃ絶対無理って言われてたのに、今は北海道で100ヘクタールも栽培されてて、「由栗(ゆっくり)いも」みたいな独自のブランドまでできとる。逆に、和歌山や愛媛のミカン農家は、暑さに強いアボカドの栽培に切り替える実験を始めとるんや。


マリコ:北海道でサツマイモ!四国でアボカド!もう日本の地図、ぐちゃぐちゃやん!


サチコ:農水省や気象庁のデータを見てると、ホンマに日本の「食の地理」が完全に再編されつつあるのが分かる。1960年代の食卓と、2050年の食卓は、並んでるもんが全然違うはずや。


マリコ:秋のサンマ定食が消えて、北海道産のブリの照り焼きと、東北産のサツマイモご飯、デザートに四国産のアボカド……。


サチコ:アボカドはデザートちゃうやろ!おかずや!醤油マヨネーズで食うたらごっつ美味いねんで。


マリコ:でもサチコ、なんか寂しいな。それって今までの「旬」がなくなるってことやろ?


サチコ:そうやな。「秋刀魚」って書いてさんまって読むのに、その秋刀魚が獲れんようになる。梨や桃の花が咲くのも、収穫するのも年々早なっとる。「食で季節を感じる」っていう日本の素晴らしい文化が、強制的にアップデートを迫られとるんや。


マリコ:強制アップデートか……。スマホのOSみたいに「夜中に勝手にやっときますね」ってわけにはいかんもんな。


サチコ:農家の人も漁師の人も、必死で適応しようと戦っとるんや。「耐える」時代はもう終わって、「見切る・転換する」時代に入ったんやな。


マリコ:よっしゃ!じゃあうちも、今のうちに「新時代の食文化」に先回りして、新しい料理の練習しとくわ!


サチコ:ほう、例えばどんなんや?


マリコ:「ブリとアボカドの北海道みかんソース和え」!


サチコ:絶望的にマズそうやな!!無理に全部混ぜんでええ!


マリコ:デザートは「サツマイモと抹茶の完全パフェ」や!


サチコ:お、それは普通に美味しそうやな。


マリコ:やっぱり、どんなに気候が変わっても、美味しいもん食べたいっていう人間の執念は変わらへんな!


サチコ:まあ、それが一番の「適応力」かもしれへんな。お腹すいてきたし、今日はブリでも買うて帰ろか。


マリコ:えっ、うちのエア・サンマちゃうの!?


サチコ:あほ!ホンモノのブリの方が美味いに決まっとるやろ!もうええわ!


マリコ・サチコ:どうもありがとうございましたー!


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