第166話「6対3の歴史的判決!イーパの終焉と150日の大脱走~関税の帝王が恐れた2つの言葉と、三権分立の崖っぷちで踊る男~」
マリコ「どうもー!サチコ・マリコでーす!」
サチコ「よろしくお願いしますー」
マリコ「サチコ、私な、2月20日にすごいニュース見てん」
サチコ「何かあったん?」
マリコ「アメリカの最高裁がトランプさんに『ノー』って言うた」
サチコ「...お、珍しいな。マリコが国際ニュース持ってきた」
マリコ「珍しくないわ。最近は世界情勢もちゃんと追っとるで」
サチコ「どうせまたYouTubeで見たんやろ」
マリコ「YouTubeのどこが悪いねん。ちゃんとした情報が流れとる」
サチコ「最近はフェイクニュースも多いけどな。まあ、ええわ。で、何があったん?」
マリコ「トランプさんが関税かけとったやろ。いろんな国に」
サチコ「あー、相互関税な。世界中に『お前の国が高い関税かけとるから、うちも同じだけかけたる』っていうやつ」
マリコ「そうそう。それがな、最高裁に違法やって言われてん」
サチコ「6対3でな」
マリコ「そう、6対3。サチコも知っとるやんけ」
サチコ「一応、ツッコミで解説役やからな」
マリコ「ほな今日は私が先に言うたるわ」
サチコ「えっ、マリコが先に?」
マリコ「たまには役割変えてもええやろ」
サチコ「...まあ、やってみたらええわ。どうせ途中でボケるんやから」
マリコ「ボケへんわ。真面目にいくで!」
サチコ「はいはい」
マリコ「まずな、トランプさんが関税かけるのに使った法律があってな」
サチコ「イーパやな」
マリコ「イーパ。なんか可愛い名前やな」
サチコ「可愛くない。国際緊急経済権限法や。英語でIEEPAっていう」
マリコ「イーパって読むんか」
サチコ「まあ略称はそうなる」
マリコ「私な、最初に聞いた時、なんかのキャラクターやと思ってん」
サチコ「キャラクターって、どういうキャラクターや」
マリコ「スライムの仲間みたいなやつ」
サチコ「全然違う!法律の名前や!」
マリコ「でも、イーパって聞いたら可愛いやろ」
サチコ「可愛くないで。この法律がな、1977年に作られた緊急事態用の法律で、国家に対する異常な脅威が外国から来た時に、大統領が経済活動を規制できるっていうもんや」
マリコ「異常な脅威やな」
サチコ「もともとはテロ国家とかテロ組織への金融制裁に使われとった」
マリコ「なのに、トランプさんは貿易赤字を緊急事態やって言い張って、関税かけたんやろ」
サチコ「そういうことや。しかもな、過去50年以上、誰もIEEPAを関税に使ったことがなかったんや」
マリコ「え、50年間、一度もないん!?」
サチコ「なかった」
マリコ「それって、転職先で『今まで誰もやってへんことをやります!』って言うようなもんやな」
サチコ「まあ、そういうことや。で、最高裁のロバーツ長官が多数意見を書いてな、なんて書いたと思う?」
マリコ「なんて書いたん?」
サチコ「IEEPAには『関税』とか『課税』っていう言葉が一回も出てこない、ってな」
マリコ「一回も!?」
サチコ「一回もないねん」
マリコ「それって...メニューに値段が書いてないのに、会計で請求されるようなもんやな」
サチコ「...まあ、悪くない譬えやな」
マリコ「あと、憲法上、関税をかける権限は議会に属するっていう話もあるな」
サチコ「おっ、マリコ、そこまで知っとるん?」
マリコ「知っとる。大統領が勝手に国民に税金みたいなもん課すのは、権限の逸脱やって」
サチコ「ロバーツ長官はな、トランプの解釈通りやったら、大統領が緊急事態さえ宣言したら、どの国にも、どの品目にも、どんな金額でも、いつまでも関税かけられることになる、と指摘した」
マリコ「それ、やりたい放題やん」
サチコ「やりたい放題になるから、あかん、って言うたわけや」
マリコ「常識的な判断やな」
サチコ「常識的やな」
マリコ「ところでサチコ、6対3っていうのはどういう内訳やったん?」
サチコ「ここが面白いねん」
マリコ「面白い?」
サチコ「多数派の6人はな、ロバーツ長官と、ゴーサッチ判事と、バレット判事と、それとリベラル派の3人や」
マリコ「ゴーサッチとバレット...あれ、その人ら、誰が任命したん?」
サチコ「トランプが任命した」
マリコ「...自分が任命した人に《《裏切られたんか》》」
サチコ「裏切りじゃないけど、トランプからしたら《《裏切りに見えたやろな》》」
マリコ「自分で「育てた」子どもに「それは違う」って言われるようなもんやな」
サチコ「反対した3人はな、カバノー判事とトーマス判事とアリートや」
マリコ「反対した方は全員、保守派やんな」
サチコ「そうや」
マリコ「ややこしいな。保守派が6人おるのに、3人は賛成で3人は反対って」
サチコ「それがな、保守派の判事が全員トランプの言うことを聞くわけやないってことを示してるんや」
マリコ「法律家としての判断を優先したんやな」
サチコ「そう。ロバーツ長官とゴーサッチ判事とバレット判事は、保守的な憲法原理、議会主権とか権力分立とかを守ることを優先したんや」
マリコ「かっこええやん」
サチコ「かっこええけど、トランプはえらい怒った」
マリコ「どれくらい怒ったん?」
サチコ「記者会見で、多数派の判事たちを「国の恥だ」「非愛国的だ」って言うた」
マリコ「国の恥!?」
サチコ「しかも「外国の利益に影響されとる」って根拠もなく主張した」
マリコ「外国の利益?証拠あるん?」
サチコ「ない。証拠なしに言うた」
マリコ「それ、でたらめやん」
サチコ「でたらめや」
マリコ「しかも、ゴーサッチとバレットについては「家族にとっての恥だ」って言うたんやろ」
サチコ「...マリコ、それも知っとるん?」
マリコ「知っとる。自分で任命しといて「家族の恥」はないやろ、って思たわ」
サチコ「普通はそういう発言せえへんもんな。現職大統領が、自分が任命した最高裁判事を個人攻撃するなんて、アメリカ史でも異例中の異例や」
マリコ「これって、就職試験の面接官が「あなたを採用した私が恥ずかしい」って社員に向かって公言するようなもんやな」
サチコ「おお、完璧な譬えやないか!」
マリコ「せやろ。あと、民主党系の3人については、「愚か者で腰巾着だ」って言うたんやろ」
サチコ「腰巾着って、ラップドッグっていう英語でな。要は「飼いならされた犬」ってこと」
マリコ「最高裁の判事に「犬」は言いすぎやろ」
サチコ「言いすぎや。普通の民主主義国家の指導者はそんなことは言えへん」
マリコ「やっぱトランプさんは異常やな」
サチコ「異常やけど、それがトランプスタイルや」
マリコ「で、サチコ。怒りながらも、トランプさんは何かしたんやろ」
サチコ「すごい素早かったで。判決が出た当日のうちに、新しい大統領令に署名した」
マリコ「一日で!?」
サチコ「一日で。122条っていう別の法律を使うて、全世界の輸入品に一律10パーセントの関税をかけると」
マリコ「また関税や」
サチコ「しかも翌日には「やっぱり15パーセントにする」って言い出した」
マリコ「一日で変えるんかい!」
サチコ「朝令暮改とはこのことや」
マリコ「もはや朝令翌朝暮改やな」
サチコ「うまいこと言うな」
マリコ「ほな、その122条っていうのは何や?」
サチコ「1974年の通商法122条や。国際収支が深刻に悪化した時に、大統領が最大150日間、最大15パーセントまで輸入品に関税をかけられるっていう法律や」
マリコ「150日って、何日やっけ?」
サチコ「約5カ月や」
マリコ「5カ月のカウントダウンやな」
サチコ「そうや。しかもこの法律、《《過去に一度も使われたことがない》》」
マリコ「また前例のない使い方か!」
サチコ「また前例のない使い方や」
マリコ「トランプさん、前例ない法律の使い方が好きやな」
サチコ「好きやな。コレクションしとるんかと思うわ」
マリコ「使ったことない法律コレクター」
サチコ「ほんまにそう見えるな」
マリコ「ほな、もう一個聞いていいか?」
サチコ「何や?」
マリコ「財務長官のベッセントさんが「関税収入はほぼ変わらない」って言うたんやろ」
サチコ「言うた。別の法律を使っても、2026年の関税歳入はほぼ変わらないという財務省の試算があると」
マリコ「それって...」
サチコ「何?」
マリコ「負けた感があんまりないな」
サチコ「...せやねん。そこがトランプの怖いとこや」
マリコ「最高裁には負けたけど、実質的には負けてへんってこと?」
サチコ「「戦略的撤退」っていう言い方もできる。最高裁に「イーパはあかん」と言われたら、即座に別の法律に乗り換えた。結果として関税は続く」
マリコ「タコ焼き屋で「たこ焼きは売られへん」言われたら、「じゃあ明石焼きで出す」ってなるみたいな?」
サチコ「...まあ、似たようなもんや」
マリコ「でも明石焼きはたこ焼きの兄弟みたいなもんやから、本質は変わらんと」
サチコ「そうや。150日の間に、さらに別の法律、232条とか301条とかで新しい根拠を作るつもりや」
マリコ「232条、301条...法律の番号が多すぎてついていかれへん」
サチコ「じゃあ整理しよか。4つあるねん」
マリコ「4つ!?多いな」
サチコ「まず1つ目がイーパ。国家緊急事態の時に使う経済制裁の法律。今回、関税には使えないと判決された」
マリコ「死んだ!」
サチコ「死んではない。ほかの用途には使える。2つ目が122条。今トランプが使ったやつ。国際収支の赤字を理由に150日限定で最大15パーセント」
マリコ「期限付きやな」
サチコ「3つ目が232条。国家安全保障を理由に関税をかける法律。鉄鋼、アルミ、自動車がこれで、今回の判決では生き残っとる」
マリコ「生き残ったんか」
サチコ「4つ目が301条。外国の不公正な貿易慣行に対する報復の法律や。中国への高関税はこれが根拠やった」
マリコ「4つ全部を漫才でたとえると...」
サチコ「たとえんでええ」
マリコ「いや、たとえるわ」
サチコ「絶対おかしなるから」
マリコ「聞いてくれ。イーパは「緊急なら何でも使える万能包丁」やったけど、今回「関税料理には使われへん」と言われた」
サチコ「...ほう、もうちょっと聞こか」
マリコ「122条は「150日間しか使えない限定版出汁巻き玉子用フライパン」や」
サチコ「なんで出汁巻き玉子専用やねん」
マリコ「232条は「国防省が認定した国家安全保障用の圧力鍋」や」
サチコ「意味不明やけど、まあ聞こう」
マリコ「301条は「相手がずるいことしたら使える報復用の熱々土鍋」や」
サチコ「完全に意味が分からんくなった。そろそろ料理の譬えやめてくれへんか」
マリコ「でも、イメージは合うてるやろ」
サチコ「合うてへんわ!」
マリコ「合うてる!イーパが使えなくなっても、他の鍋が残っとるから関税料理は続けられるわけや」
サチコ「「料理」言うな。でも...まあ、構造は合ってるか」
マリコ「やっぱり合ってた」
サチコ「認めたくないけどな」
マリコ「ところでサチコ、一番の問題はお金の話やろ」
サチコ「どのお金の話?」
マリコ「もう集めてしまった関税や。1300億ドルから1750億ドルやって言うてたやろ」
サチコ「1300億ドルから1750億ドル。そのくらいの幅がある」
マリコ「それって、今の円相場で計算したら...20兆円から27兆円くらいか」
サチコ「そんなもんやな」
マリコ「返さなあかんの?」
サチコ「最高裁は「返せ」とは言わなかった。返還の方法については、下級裁判所でこれから争え、という形や」
マリコ「判決でなんも言わんのかい」
サチコ「反対意見を書いたカバノー判事がな、「こんな大混乱になるから判決を支持できない」みたいなことを言うた。英語でmess、ぐちゃぐちゃな状態になるって」
マリコ「ぐちゃぐちゃ...そらそうやな、20兆円やで」
サチコ「しかも、輸入業者が払った関税は、すでに消費者に転嫁されてる可能性が高い」
マリコ「転嫁?」
サチコ「商品の値段に上乗せされてるってこと。輸入業者は関税を払って、その分を商品価格に乗せて売ったやろ。で、消費者が高い値段で買った」
マリコ「返してもらうのは輸入業者やのに、高い買い物したのは消費者か」
サチコ「そういうこと。そのねじれが解決できへんねん」
マリコ「ぐちゃぐちゃやな」
サチコ「ほんまぐちゃぐちゃや」
マリコ「トランプさんは返す気があるん?」
サチコ「「まったく議論していない」「今後5年は法廷で争う」って言うた」
マリコ「5年!?」
サチコ「長期戦を覚悟させてる」
マリコ「5年後にお金が戻ってきても...もう倒産してる会社もあるやろな」
サチコ「あるやろな。WePay the Tariffs、「私らが関税を払ってる」という小企業団体は、即時で全額返還を要求してる」
マリコ「そらそうや。法律違反で取られたお金やねんから」
サチコ「せやけど、政府の財布から出ていくのは20兆円以上。もう一方で、122条の新しい関税でなんとか収入を確保しようとしてる」
マリコ「右の口からお金出しながら、左の口から別のお金入れようとしてるわけか」
サチコ「そういうことや」
マリコ「ところで、日本はどうなるん?」
サチコ「ここ大事やな。今まで日本には15パーセントの相互関税がかかっとったんやが、イーパの関税がなくなって、新しい10パーセントに変わる」
マリコ「5パーセント下がった」
サチコ「下がった。でも、自動車への関税は別の法律(232条)で生きてるから変わらへん」
マリコ「日本にとってのメインはトヨタとかの車やろ。結局ダメージは続くんか」
サチコ「そうや。しかも、去年の日米貿易交渉で日本が約束した5500億ドルの投資プランがあるやろ。《《その前提が揺らいでる》》」
マリコ「揺らいでる?」
サチコ「「この投資をすればイーパ関税を免除してもらえる」という取引があったとすれば、イーパが無効になったら取引の前提が崩れる」
マリコ「約束したのに、相手が別のルールになってた、みたいな感じか」
サチコ「まあ、日本政府は合意の履行を続けると言うてるけど、不透明や」
マリコ「不透明...外交ってしんどいな」
サチコ「しんどいで」
マリコ「でもさ、サチコ」
サチコ「何や」
マリコ「今回の最高裁の判決って、何が一番大事なことやと思う?」
サチコ「どういう意味?」
マリコ「関税がどうなったとか、お金がどうなったとかじゃなくて、もっと根っこの話や」
サチコ「...ええ質問やな」
マリコ「三権分立やろ」
サチコ「そう。大統領が「国家緊急事態だ」って言えば何でも一人でできる、という解釈を、最高裁が「それはあかん」と言ったわけや」
マリコ「歯止めが効いたな」
サチコ「歯止めが効いた。それが重要や。しかも、自分が任命した保守派の判事も含めて「あかん」と言ったことで、司法の独立性が示された」
マリコ「すごいな、保守派の人が保守派の大統領に「あかん」言うたんか」
サチコ「ロバーツ長官もゴーサッチ判事もバレット判事も、《《トランプに忠誠を誓ってるんやなくて、憲法に忠誠を誓ってるんや》》。ここ、大事やで」
マリコ「誰を任命したかやなくて、何に忠誠を誓うかってことやな」
サチコ「そうや。その原理が今回は機能した」
マリコ「機能した、か」
サチコ「機能した。しかし安心はできへん」
マリコ「なんで?」
サチコ「歴史を振り返ると、大統領と最高裁の対立が今回で終わることはないんや」
マリコ「続くんかい!」
サチコ「続く。たとえば有名なのがFDRや」
マリコ「FDR?エフディーアール?」
サチコ「フランクリン・ルーズベルト大統領や。1930年代のニューディール政策がな、最高裁にどんどん違憲判決出されて、FDRは激怒した」
マリコ「どれくらい激怒したん?」
サチコ「最高裁の判事を増員して、自分に有利な人間を入れようとした」
マリコ「増員!?それって、相手チームに自分のサクラを入れるようなもんやんな」
サチコ「そういうこと。コートパッキングっていう」
マリコ「コートパッキング...コートに荷物詰め込む?」
サチコ「コートは法廷のことや。法廷に自分の人間を詰め込む作戦」
マリコ「で、うまくいったん?」
サチコ「議会が拒否した。国民も「それはやりすぎ」って反発した」
マリコ「そら反発するわ」
サチコ「ただ、その圧力で最高裁の態度が変わったとも言われとる」
マリコ「圧力に屈したんか」
サチコ「「時のスイッチ」って歴史の教科書に出てくる。1937年の話や」
マリコ「ジャクソン大統領も有名やんな」
サチコ「...マリコ、あんたアンドリュー・ジャクソンまで知っとるんか」
マリコ「知っとるで。インディアン強制移住のやつ。最高裁の判決を事実上無視したんやな」
サチコ「無視したか従わなかったかは諸説あるけど、判決を「実行するなら彼らにやらせればいい」という態度を取ったとされる」
マリコ「それ、とんでもないな」
サチコ「とんでもない。でも今のトランプが一番近いのは、そのジャクソンと、FDRのハイブリッドや」
マリコ「ハイブリッド。ジャクソンとFDRのええとこ取り?」
サチコ「悪いとこ取りかもしれんけどな。判事を公然と批判するのがジャクソン的で、制度の中で別手段を探すのがFDR的」
マリコ「ただ、今回はまだ最高裁の命令に従ったんやろ」
サチコ「従った。それが重要や。「命令を実質的には無視したけど、表面上は従った」という「グレーな無視」の典型やけど、少なくとも全面無視はしてへん」
マリコ「全面無視したらどうなるん?」
サチコ「そうなったら《《憲政危機》》や」
マリコ「憲政危機...」
サチコ「大統領と司法が正面衝突して、どっちの命令に従えばいいか分からんくなる状態や。《《最後の安全装置は、軍が憲法に忠誠を誓っとることや》》」
マリコ「軍が憲法に従うなら、大統領が暴走しても止められるか」
サチコ「理屈ではそうや。でも、そこまでの事態にならんように、市場とか議会とか世論がブレーキをかけとる」
マリコ「市場?」
サチコ「株価が暴落したら、どんな大統領でも困る。経済に直接ダメージが出るから、チキンレースには限度がある」
マリコ「金の力か」
サチコ「金の力や。ある意味、一番確実なブレーキや」
マリコ「でもさ、サチコ」
サチコ「何や」
マリコ「さっきから「制度が機能した」「歯止めが効いた」って言うてるけど、次の150日でまた関税かけてくるわけやろ」
サチコ「かけてくる可能性が高い」
マリコ「ほな「機能した」って言えるん?」
サチコ「...これが正直なとこや。「法的根拠を変えさせた」という意味では機能した。でも「関税政策をやめさせた」という意味では機能してへん」
マリコ「イーパはあかんけど、122条ならええんか、みたいな」
サチコ「「この扉は入れない」って言ったら、即座に別の扉から入ってきたようなもんや」
マリコ「そして150日後にはまた別の扉から来る、と」
サチコ「来る可能性がある。301条の調査を終わらせて、より精密な根拠を作ろうとしとる」
マリコ「いたちごっこやな」
サチコ「いたちごっこや。長期的に見たら、大統領が「電光石火の一方的行動」を取りにくくなったのは確かや。議会を経なあかん場面が増えるからな」
マリコ「それはええことなんか?」
サチコ「民主主義的にはええことや。でも、短期的には政策の予測可能性が下がって、企業も困る」
マリコ「企業が困るっていうのは?」
サチコ「「来月から10パーセント、再来月から15パーセント、その次は別の法律で20パーセントかもしれない」ってなったら、計画が立てられへんやろ」
マリコ「確かにそうやな」
サチコ「投資を止める企業が出てくる。景気が悪くなる。インフレが進む。FRBが金利を下げにくくなる」
マリコ「関税って、結局は国内の消費者が払うんやろ」
サチコ「そうや。輸入品が高くなったら、その分を最終的に買う人が負担する」
マリコ「つまり、関税は外国に払わせてるように見えて、実は自国民に払わせてるんやな」
サチコ「...マリコ、今日はほんまに鋭いな」
マリコ「珍しいか」
サチコ「珍しい」
マリコ「うちかて考えるわ。毎日の買い物で物価の高騰を感じとるもん」
サチコ「まあ、それが一番の経済センサーかもしれんけどな」
マリコ「ところでサチコ、共和党内はどうなったん?割れたって聞いたで」
サチコ「割れた。ランド・ポール上院議員は、判決を歓迎して「最高裁が緊急権限による課税を停止させた」って言うた」
マリコ「トランプさんの仲間なのに、判決を歓迎したんか」
サチコ「共和党の中にも「大統領の権限が強くなりすぎるのはあかん」という人がおる。リバタリアン系の人は特に」
マリコ「右の中に右と、もっと右の権限を嫌う右がおるんか」
サチコ「複雑やねん」
マリコ「一方、バディ・カーターっていう議員は「明らかな司法権の逸脱だ」って最高裁を批判したんやろ」
サチコ「よう知っとるな」
マリコ「マネージャーに教えてもらった」
サチコ「前回のマネージャーか!まだチームみらいの話してるかと思ったら、今度はアメリカの政治か」
マリコ「あいつ、いろんなとこからインプットしとるんや」
サチコ「ええことや」
マリコ「で、今回の話で日本にとって大事なことって何やろ」
サチコ「一つは、アメリカの通商政策の予測可能性が下がったこと。どの法律を使ってくるか分からんから、日本企業は読みにくい」
マリコ「読みにくい相手とどう交渉するんや」
サチコ「それが問題や。もう一つは、今回の事件が「制度って機能するんだ」という希望を示したこと」
マリコ「希望?」
サチコ「保守派が多数の最高裁でも、保守派の大統領に「あかん」と言えた。チェックアンドバランスがちゃんと働いた」
マリコ「チェックアンドバランスか。前の漫才でも出てきたな」
サチコ「抑制と均衡やな。アメリカの建国理念の一つや」
マリコ「三権が互いに監視する仕組みやんな」
サチコ「そう。それが今回ちゃんと動いたのは、悪い状況の中の良いニュースや」
マリコ「ただし、警戒は続くと」
サチコ「続く。150日後に何が来るか、誰にも分からへん」
マリコ「7月の末か、8月頃やな」
サチコ「その頃、アメリカが次の「手」を出してくる」
マリコ「夏の終わりに嵐が来るんか」
サチコ「来るかもしれん。来ないかもしれんけど、備えておくことは大事や」
マリコ「でもさ、サチコ、私一つ思ったことある」
サチコ「何や」
マリコ「トランプさんって、「大統領はなんでも自分でできる」って思ってるやんな」
サチコ「そういう思想があるな。ユニタリーエグゼクティブ理論っていって、大統領が行政権を一元的に握るべきという考え方や」
マリコ「そういう人が最高裁に「あかん」って言われたら、どうするんやろって」
サチコ「今回は代替手段があったから従った。でも、代替手段がない時にどうするかが問題や」
マリコ「将来、もっと決定的な対立が来たら...」
サチコ「その時が本当の試金石や」
マリコ「試金石って、金が本物かどうか確かめる石やったっけ」
サチコ「そうや。本物かどうかを試す」
マリコ「アメリカの民主主義が本物かどうかを試す石か」
サチコ「そういうことや」
マリコ「重い話やな」
サチコ「重い話や。でもな、今日の漫才もここらで明るい方向で終わらなあかんな」
マリコ「そうや。私、一つだけ提案がある」
サチコ「また出た。マリコの提案」
マリコ「聞いてくれ。20兆円以上の関税返還問題があるやろ」
サチコ「あるな」
マリコ「輸入業者が申請して、裁判所で争って、って面倒くさいやん」
サチコ「面倒くさいな」
マリコ「私が仲介する」
サチコ「仲介って、あんたに何ができるん」
マリコ「国際関税返還コンシェルジュや」
サチコ「コンシェルジュて。ホテルみたいに言うな」
マリコ「お客様の大切な関税を、責任を持ってお返しします」
サチコ「そんなサービス存在せえへん」
マリコ「需要はあるやろ。20兆円分の企業が困っとるねんから」
サチコ「あんたに20兆円動かせるわけないやろ」
マリコ「無理でも、相談は乗れる」
サチコ「相談料で生計立てるつもりか」
マリコ「たこ焼き1パック分の相談料や」
サチコ「単価低すぎる!」
マリコ「薄利多売や。20兆円分あったら、たこ焼き換算でも相当な量になる」
サチコ「換算するな!」
マリコ「ほな、もう一個提案がある」
サチコ「まだある?」
マリコ「関税法律わかりやすい本を書く」
サチコ「本?」
マリコ「イーパとか122条とか232条とか301条とか、ちゃんと分かりやすく説明した本や」
サチコ「まあ、そういう本はあってもええな」
マリコ「タイトルは「大統領が読みにくい法律の説明書」」
サチコ「トランプ向けに書くんかい」
マリコ「読んでほしいやん。そしたら違法に使わなくなる」
サチコ「本人が読まへんやろ」
マリコ「せや。だからイラスト入りにする。絵本版IEEPAや」
サチコ「絵本!?最高裁の法廷に絵本を持ち込むつもりか」
マリコ「分かりやすい方がええやろ」
サチコ「分かりやすいのは大事やけど、あんたが書かんでええ!」
マリコ「でも、私が今日の漫才で一番感じたのはな」
サチコ「何?」
マリコ「法律って、言葉の問題やんな」
サチコ「言葉の問題?」
マリコ「「イーパに関税って書いてない」から、大統領は関税かけられへん、って最高裁が言うたやろ」
サチコ「そうや。ロバーツ長官の言葉は「その2単語は、そこまで重い意味を持てない」やったな」
マリコ「2単語、規制と輸入、でそんな話になるんか」
サチコ「なるねん。だから法律の文言っていうのはものすごく大事で、《《一字一句に意味があるんや》》」
マリコ「漫才の台本みたいやな」
サチコ「どういう意味?」
マリコ「一字変えたら笑いがなくなる」
サチコ「...まあ、うちはそんな緻密な台本書いてへんけどな」
マリコ「だから法律家って大事な仕事やと思う」
サチコ「そうや。日本でもこれからもっと重要になるやろな」
マリコ「高市政権の憲法改正とか、防衛費の問題とか、全部言葉の問題やもんな」
サチコ「そうや。憲法の言葉一つで国のあり方が変わる」
マリコ「難しいけど、大事なことや」
サチコ「せやな」
マリコ「私ら、漫才師やから言葉は大事やって分かるもんな」
サチコ「言葉で笑わせるわけやから、一言一言が命やな」
マリコ「最高裁の判事も、漫才師も、言葉で勝負してる」
サチコ「...そう言われたら、なんか通じるものがあるな」
マリコ「三権分立と漫才師、似たもの同士や」
サチコ「それは全然似てへんで!」
マリコ「似てる!立法は台本を書く作家、行政はそれを演じる芸人、司法はウケてるかどうかを判定するお客さんや」
サチコ「お客さんが司法か。なんか面白い見方やけど、全然合うてへん気もする」
マリコ「合yてるわ。で、今回、お客さんが「この演技はルール違反や」って言うた」
サチコ「ルール違反って、笑いの文脈で言うな」
マリコ「ほな、視聴者の皆さんに最後に一言だけ言っていいか」
サチコ「言うてくれ」
マリコ「150日のカウントダウンが始まってる。7月24日頃、次の「手」が来る。そこまで、ちゃんと見てましょう」
サチコ「ええこと言うやん」
マリコ「ただ、私はその頃、国際関税返還コンシェルジュとして大忙しやと思うから漫才でけへんと思う」
サチコ「せやからなれへんって!」
マリコ「なれる!」
サチコ「なれへん!もうええわ、終わるで!」
マリコ「どうもありがとうございましたー!」
サチコ「ありがとうございましたー!」
二人「サチコ・マリコでしたー!」




