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サチコとマリコの時事ネタ漫才  作者: 藍埜佑


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14/32

第164話「ミネアポリスの悲劇と3000人の連邦捜査官~スマホが映した真実、州vs連邦の憲法戦争、そして日本への警鐘~」

マリコ「どうもー!サチコ・マリコでーす!」


サチコ「よろしくお願いしますー」


マリコ「サチコ、私な、今日はサチコにひとつ聞きたいことがあんねん」


サチコ「珍しいな。何?」


マリコ「アメリカのミネソタ州ミネアポリスで起きた連邦捜査官による市民射殺事件について」


サチコ「...マリコ、あんた、いつからそんな国際ニュース見るようになったん?」


マリコ「最近、アメリカのドラマにハマっててん。FBIとか、捜査官が活躍するやつ」


サチコ「ドラマか。で、ドラマと現実の区別はついとるんやろな」


マリコ「ついとるわ。だからこそ、今回の事件がおかしいって分かんねん」


サチコ「ほう。どうおかしいん?」


マリコ「だってな、1月7日にレネー・グッドさんっていう37歳の女性が、アイス捜査官に射殺されたんやで」


サチコ「...アイス?」


マリコ「アイスクリーム捜査官や」


サチコ「そんな捜査官おらんわ!ICEや。Immigration and Customs Enforcement。移民・関税執行局」


マリコ「あ、そっちか。私、てっきりバニラかチョコレートか調べる部署かと」


サチコ「そんなもん調べるかい。ICEは移民の取り締まりをする連邦機関や」


マリコ「で、その2週間後の1月24日に、今度はアレックス・プレッティさんっていう37歳の看護師が、シービーピー捜査官に射殺された」


サチコ「CBP。Customs and Border Protection。税関・国境取締局な」


マリコ「二人とも37歳って、なんか因縁めいてるな」


サチコ「因縁やない。偶然や」


マリコ「でもさ、サチコ。二人とも射殺されたのに、政府は正当防衛って言うてるんやで」


サチコ「そこが問題なんや。政府の説明と、実際の映像が全然違う」


マリコ「映像?誰が撮ったん?」


サチコ「市民や。スマホで撮影してた」


マリコ「スマホ!?私らと同じやん」


サチコ「そう。今の時代、誰もがジャーナリストになれる。そして、その映像が真実を暴くんや」


マリコ「かっこええこと言うやん。で、映像には何が映ってたん?」


サチコ「まず、レネー・グッドさんの事件から説明するわ」


マリコ「お願いするわ」


サチコ「1月7日、ミネアポリス南部で、ICE捜査官ジョナサン・ロスがグッドさんを射殺した」


マリコ「ジョナサン・ロス...なんか聞いたことあるな」


サチコ「ドラマの登場人物ちゃうで。実在の人物や」


マリコ「で、政府は何て言うてたん?」


サチコ「ICEは『グッドさんが車で捜査官を轢こうとしたから、正当防衛で撃った』って説明した」


マリコ「車で轢こうとした!?それはあかんわ」


サチコ「ところがや。市民が撮影した映像を分析したら、全然違う状況やったんや」


マリコ「どう違うん?」


サチコ「ニューヨークタイムズがフレーム単位で映像を分析した結果、グッドさんは捜査官から離れる方向にハンドルを切ってたことが判明した」


マリコ「離れる方向!?じゃあ轢こうとしてへんやん」


サチコ「せやねん。しかも、ロス捜査官は車の前に自分から立っとった」


マリコ「自分から前に立って、撃ったってこと?」


サチコ「そういうことや。グッドさんは逃げようとしただけなのに、至近距離から3発撃たれた」


マリコ「3発...頭部と胸部に当たったんやろ」


サチコ「よう知っとるやん」


マリコ「ドラマで勉強したもん。3発って、確実に殺す気やん」


サチコ「その通りや。検死結果でも、頭部を含む3発の銃創が確認されて、殺人として分類された」


マリコ「殺人...でも、捜査官は逮捕されへんの?」


サチコ「されてへん。それどころか、トランプ大統領とかホワイトハウスは『捜査官は正当防衛や』って擁護しとる」


マリコ「おかしいやろ。映像があるのに」


サチコ「おかしい。でも、それがアメリカの現実や」


マリコ「で、もう一人の事件は?」


サチコ「アレックス・プレッティさんの事件な。こっちはもっとひどい」


マリコ「もっとひどいって...」


サチコ「プレッティさんは、退役軍人病院のICU看護師で、グッドさんの射殺事件に抗議する活動に参加しとった」


マリコ「看護師...人の命を救う仕事やん」


サチコ「1月24日の朝、プレッティさんはスマホでCBP職員の活動を撮影しながら、交通整理をしとった」


マリコ「撮影してたんか」


サチコ「その時、CBP職員が女性を地面に押し倒したんや」


マリコ「女性を!?」


サチコ「プレッティさんは、その女性をかばおうとして間に入った」


マリコ「正義感やな」


サチコ「すると、職員はプレッティさんと女性の両方に催涙スプレーを噴射した」


マリコ「催涙スプレー!目に入ったら痛いやつやん」


サチコ「その後、5人から6人の連邦職員がプレッティさんを地面に押さえつけた」


マリコ「6人で一人を!?」


サチコ「で、その状態で、誰かが『銃を持っている!』って叫んだ」


マリコ「銃!?」


サチコ「叫んでから約5秒後、CBP職員のヘスス・オチョアとレイムンド・グティエレスの二人が発砲して、プレッティさんを射殺した」


マリコ「5秒で!?確認する時間もないやん」


サチコ「しかもや。複数のメディアが映像を分析した結果、プレッティさんが手に持ってたのはスマホで、銃は腰のホルスターに入ったままやった」


マリコ「スマホと銃を間違えたん!?」


サチコ「間違えたというより、もっと悪質や。ある映像では、職員がプレッティさんから銃を取り上げた後に撃ったことが映ってる」


マリコ「取り上げた後!?じゃあもう脅威ちゃうやん」


サチコ「脅威やないのに撃った。しかも地面に押さえつけられた状態で、10発以上撃たれた」


マリコ「10発...それ、処刑やん」


サチコ「処刑に近い。ちなみに、プレッティさんは合法的な銃携帯許可を持ってて、犯罪歴もない善良な市民やった」


マリコ「許可持ってても撃たれるんか...アメリカ怖いわ」


サチコ「怖いやろ。でもな、これで終わりやない」


マリコ「まだあるん?」


サチコ「政府の対応がもっとひどいねん」


マリコ「どうひどいん?」


サチコ「まず、国土安全保障省長官のクリスティ・ノームが、プレッティさんを『国内テロリスト』って呼んだ」


マリコ「国内テロリスト!?看護師さんやで!」


サチコ「ホワイトハウス副首席補佐官のスティーブン・ミラーは、プレッティさんを『暗殺者』『法執行官を虐殺しようとした』って言うた」


マリコ「虐殺...映像と全然ちがうやん」


サチコ「全然違う。でも政府はそう発表した」


マリコ「で、映像が公開されたら嘘がバレたと」


サチコ「そう。で、慌てて説明を変えた」


マリコ「変えたんかい」


サチコ「CBP司令官のグレゴリー・ボビーノは解任された」


マリコ「解任...トカゲの尻尾切りやん」


サチコ「まあ、そういうことやな」


マリコ「でもさ、サチコ。なんでこんなことが起きてるん?」


サチコ「ええ質問やな。背景にあるのは、トランプ政権の移民政策や」


マリコ「移民政策?」


サチコ「トランプ大統領は、2025年1月20日に就任して、すぐに『不法移民は国家的緊急事態』って宣言した」


マリコ「緊急事態!」


サチコ「で、2025年12月4日に、Operation Metro Surgeっていう大規模な移民取締作戦を発表した」


マリコ「オペレーション・メトロ・サージ...かっこええ名前やな」


サチコ「かっこよくない。これが悲劇の始まりや」


マリコ「どういう作戦なん?」


サチコ「ミネアポリス・セントポール都市圏に、約2000人から3000人の連邦捜査官を派遣したんや」


マリコ「3000人!?めっちゃ多いやん」


サチコ「ミネアポリス警察は600人しかおらんのに、連邦は3000人送り込んだ」


マリコ「5倍やん。占領軍か」


サチコ「実際、ミネソタ州知事のティム・ウォルツは『違憲な占領』って言うてる」


マリコ「州知事が占領って...そんな対立してるん?」


サチコ「めちゃくちゃ対立しとる。ここがポイントやねん」


マリコ「ポイント?」


サチコ「アメリカは連邦制やから、連邦政府と州政府の権限が分かれとる」


マリコ「ああ、州によって法律が違ったりするやつ」


サチコ「せや。で、ミネアポリスは『サンクチュアリ・シティ』っていって、移民を保護する都市なんや」


マリコ「移民を保護?」


サチコ「不法移民であっても、市は連邦の取締りに協力せえへん。人道的な立場やな」


マリコ「優しいやん」


サチコ「トランプ政権はそれが気に入らんかった」


マリコ「なんで?」


サチコ「トランプの公約は『不法移民の一掃』と『大量強制送還』やから」


マリコ「一掃...ゴミ扱いか」


サチコ「しかも、ミネソタ州知事のティム・ウォルツは民主党で、2024年の副大統領候補やった」


マリコ「あ、カマラ・ハリスと一緒に戦った人か」


サチコ「そう。トランプからしたら政敵や」


マリコ「じゃあ、報復ってこと?」


サチコ「報復の側面が強いって指摘されとる。ミネソタを見せしめにして、他の州を脅すつもりやった」


マリコ「それで3000人も送り込んだんか」


サチコ「せやねん。で、この作戦で何人逮捕したと思う?」


マリコ「3000人送り込んだんやから...1万人?」


サチコ「政府は『3000人以上逮捕した』って発表した」


マリコ「おお、結構捕まえたやん」


サチコ「ところが、実際の報告書では1677人やった」


マリコ「1677人...半分やん」


サチコ「誇張しとったんや。しかも、逮捕された人の中にはアメリカ市民も含まれとる」


マリコ「市民も!?移民ちゃうやん」


サチコ「見た目で判断して、令状なしで逮捕したケースが多数報告されとる」


マリコ「令状なし...それ、違法やろ」


サチコ「違法や。でも、連邦政府は『緊急事態やから』って強行した」


マリコ「緊急事態やったら何してもええんか」


サチコ「あかんに決まっとる。だから、ミネソタ州とミネアポリス市は、連邦政府を提訴した」


マリコ「裁判!州が連邦を訴えたん?」


サチコ「訴えた。憲法修正第1条、第4条、第10条違反、それと行政手続法違反で」


マリコ「憲法違反...それ、めっちゃ重大やん」


サチコ「重大や。州と連邦の憲法戦争や」


マリコ「憲法戦争!アメリカ、内戦みたいになってるやん」


サチコ「ある意味、内戦や。ただし、武力じゃなくて法律で戦っとる」


マリコ「でもさ、サチコ。撃たれた二人は移民やないんやろ?」


サチコ「そう。二人ともアメリカ市民や」


マリコ「なんで市民が撃たれるん?」


サチコ「抗議活動をしとったからや」


マリコ「抗議って、言論の自由やろ」


サチコ「憲法修正第1条で保障されとる権利や」


マリコ「なのに撃たれるんか」


サチコ「撃たれた。しかも、グッドさんの事件の後、ICE職員が抗議者に向かって『お前らまだ学習してないのか、あのレズビアンのビッチが死んだのに』って言うたことが報告されとる」


マリコ「レズビアンのビッチ!?死んだ人にそんなこと言うん?」


サチコ「言うた。人権意識ゼロや」


マリコ「最低やな」


サチコ「で、抗議者に対して、催涙ガス、唐辛子スプレー、フラッシュバン手榴弾を使って威嚇した」


マリコ「手榴弾!?戦争か」


サチコ「戦争みたいなもんや。連邦職員は覆面してて、名札もつけてへん」


マリコ「覆面!?誰か分からんやん」


サチコ「分からんようにしとるんや。ProPublicaっていうメディアが、プレッティさんを撃った二人の名前を調査で突き止めて公開した」


マリコ「ヘスス・オチョアとレイムンド・グティエレス」


サチコ「よう覚えとるやん」


マリコ「さっき聞いたもん」


サチコ「43歳と35歳や。で、二人とも休職処分になった」


マリコ「休職だけ?逮捕ちゃうん?」


サチコ「逮捕されてへん。FBI主導で調査中っていうことになっとるけど、州の捜査当局は証拠にアクセスさせてもらえへん」


マリコ「アクセスできへん!?なんで?」


サチコ「連邦が独占しとるからや」


マリコ「独占...証拠隠滅する気やん」


サチコ「実際、ウォルツ知事は『連邦が現場を封鎖して、証拠を持ち去って、裁判所の命令を無視して、誰にも見せへん』って批判しとる」


マリコ「裁判所の命令も無視するん!?法治国家ちゃうやん」


サチコ「法治国家やけど、連邦が強すぎるんや」


マリコ「強すぎる...権力の暴走やな」


サチコ「暴走や。で、ミネアポリス市長のジェイコブ・フレイは、グッドさんの射殺映像を見て『これは完全なでたらめだ。ICEはミネアポリスから出て行け』って言うた」


マリコ「市長が『出て行け』!?ストレートやな」


サチコ「しかも原文で言うと『To ICE, get the fuck out of Minneapolis』や」


マリコ「ファック言うたん!?市長が!?」


サチコ「言うた。それくらい怒っとる」


マリコ「当たり前やわ。市民が二人も殺されてるんやから」


サチコ「ミネアポリス警察署長のブライアン・オハラも『2026年、ミネアポリスで起きた殺人事件は3件。そのうち2件は連邦捜査官によるもの』って言うてる」


マリコ「2件...連邦が市内の犯罪の主犯やん」


サチコ「しかも『ミネアポリス警察は去年、900丁の銃を回収して、何百人もの暴力犯を逮捕したけど、誰も撃ってへん』って」


マリコ「誰も撃ってへん!地元警察の方が優秀やん」


サチコ「優秀っていうか、訓練されとる。でも連邦職員は違う」


マリコ「どう違うん?」


サチコ「Operation Metro Surgeで派遣された3000人のうち、多くは移民取締の経験が浅い職員やった」


マリコ「経験浅い!?そんな人に銃持たせて街に放つん?」


サチコ「放った。しかも、武力使用基準が曖昧やねん」


マリコ「曖昧って...いつ撃っていいか分からんってこと?」


サチコ「分からんというより、広く解釈されとる」


マリコ「どう広いん?」


サチコ「連邦法執行官は『合理的と判断したら』撃っていい」


マリコ「合理的...誰が判断するん?」


サチコ「本人が判断する」


マリコ「本人!?それ、撃ち放題やん」


サチコ「ある意味そうや。だから問題なんや」


マリコ「州警察とか市警察とは違うん?」


サチコ「違う。州や市の警察は、最近どんどん基準が厳しくなっとる」


マリコ「厳しい?」


サチコ「緊張緩和の義務、首絞め禁止、発砲前の警告義務とか」


マリコ「まともやん」


サチコ「まともや。しかも、ボディカメラの装着が義務化されとる」


マリコ「ボディカメラ...体につけるカメラやろ」


サチコ「せや。で、連邦職員はどうやったと思う?」


マリコ「つけてへんかったん?」


サチコ「つけてへんかった。Operation Metro Surgeで派遣された職員の大半が、ボディカメラなしで活動しとった」


マリコ「なしで!?証拠残したくなかったんか」


サチコ「残したくなかったんやろな。でも、プレッティさんの射殺後、批判が高まって、慌ててボディカメラ配備を発表した」


マリコ「後出しやん」


サチコ「完全に後出しや」


マリコ「でもさ、サチコ。市民がスマホで撮影しとったから、真実が明らかになったわけやろ」


サチコ「そう。スマホが武器になったんや」


マリコ「武器...あ、だからプレッティさんはスマホ持ってて撃たれたんか」


サチコ「そういう見方もできる。コメディアンのジョン・スチュワートが『プレッティが持ってたのは大量証明兵器や』って皮肉った」


マリコ「大量証明兵器!?スマホのことか」


サチコ「スマホのカメラのことや。『嘘に基づく体制にとって、真実を捉える証人ほど危険なものはない』って」


マリコ「かっこええこと言うやん」


サチコ「かっこええけど、悲しい現実や」


マリコ「で、サチコ。この事件、その後どうなったん?」


サチコ「大規模な抗議運動が起きた」


マリコ「どれくらい?」


サチコ「数万人規模や。しかも真冬のミネソタで」


マリコ「真冬!?寒いやろ」


サチコ「1月のミネソタは氷点下やで。それでも人々は街頭に出た」


マリコ「命がけやな」


サチコ「命がけや。で、プレッティさんが射殺された当日、NBAのティンバーウルブズとウォリアーズの試合が予定されとったけど、延期になった」


マリコ「NBAまで!?」


サチコ「ティンバーウルブズのコーチ、クリス・フィンチが『今日試合するのは正しいことやない』って言うた」


マリコ「スポーツまで巻き込まれてるんやな」


サチコ「翌日の試合では、プレッティさんとグッドさんのために黙祷が捧げられた」


マリコ「黙祷...せめてもの弔いやな」


サチコ「で、プレッティさんの家族のためのGoFundMeが立ち上がって、1日で100万ドル集まった」


マリコ「100万ドル!?1億円以上やん」


サチコ「人々の怒りと悲しみが、それだけ大きかったんや」


マリコ「で、連邦政府は?」


サチコ「最初は強気やったけど、批判が高まってきたら態度を変えよった」


マリコ「変えたんか」


サチコ「トム・ホーマンっていう国境担当責任者をミネソタに派遣して、2月中旬にOperation Metro Surgeの終了を発表した」


マリコ「終了!作戦やめたんか」


サチコ「やめた。約700人の職員を段階的に撤退させるって」


マリコ「撤退...負けを認めたんやな」


サチコ「負けたというより、世論に押された」


マリコ「世論?」


サチコ「Quinnipiac大学の世論調査で、有権者の80%がプレッティさんの射殺について独立調査を支持しとる」


マリコ「80%!めっちゃ高いやん」


サチコ「しかも、共和党員の56%も同意しとる」


マリコ「共和党員も!?トランプの支持者やのに」


サチコ「さすがに今回はやりすぎやと思ったんやろ」


マリコ「で、トランプ政権の支持率は?」


サチコ「移民政策への支持が急落して、不支持が53%に達した」


マリコ「過半数が反対してるやん」


サチコ「してる。ガーディアン紙の報道では、75%以上がICEの改革または廃止を支持してる」


マリコ「廃止!?なくせってこと?」


サチコ「それくらい信頼を失ったんや」


マリコ「でもさ、サチコ。これって、アメリカだけの問題なん?」


サチコ「...ええ質問やな」


マリコ「日本には関係ないん?」


サチコ「関係大ありや」


マリコ「どう関係あるん?」


サチコ「まず、日本も移民の受け入れを拡大しとる」


マリコ「ああ、技能実習生とか」


サチコ「技能実習生、特定技能、留学生。色々おる」


マリコ「で?」


サチコ「もし日本でも、移民に対する取締りが強化されたらどうなる?」


マリコ「...同じようなことが起こる?」


サチコ「起こる可能性がある。特に、権限が曖昧なまま強化されたら」


マリコ「怖いな」


サチコ「しかも、日本には連邦制がないから、地方が国に対抗する手段が限られとる」


マリコ「対抗できへんの?」


サチコ「難しい。アメリカみたいに州が連邦を訴えるっていう選択肢がないねん」


マリコ「じゃあ、国がやりたい放題できるってこと?」


サチコ「制度上はそうなりやすい」


マリコ「それ、まずいやろ」


サチコ「まずい。だから、今のうちに法整備が必要なんや」


マリコ「法整備...どんな?」


サチコ「武力使用基準の明確化、ボディカメラの義務化、第三者機関による監視、市民の撮影権の保護」


マリコ「市民の撮影権?」


サチコ「今回の事件で、市民のスマホ映像が真実を明らかにしたやろ」


マリコ「せやな」


サチコ「でも、もし警察が『撮影するな』って言うて、スマホを取り上げたら?」


マリコ「...真実が隠される」


サチコ「隠される。だから、市民が公権力を撮影する権利を法律で守らなあかん」


マリコ「なるほどな」


サチコ「あと、もう一つ重要なことがある」


マリコ「何?」


サチコ「連邦と州の権限のバランスや」


マリコ「バランス?」


サチコ「アメリカでは、連邦政府が強すぎて、州が対抗できへん場面がある。でも、逆に州の権限が強すぎても問題や」


マリコ「どういうこと?」


サチコ「州によって人権保護の水準が違ったら、住む場所で命の価値が変わってまうやん」


マリコ「...それはあかんな」


サチコ「あかん。だから、全国一律の最低基準が必要なんや」


マリコ「難しい問題やな」


サチコ「難しい。でも、考えなあかん」


マリコ「でもさ、サチコ。今回の事件で一番ショックやったこと、何?」


サチコ「何やと思う?」


マリコ「看護師が撃たれたこと?」


サチコ「それもショックやけど、もっとショックなことがある」


マリコ「何?」


サチコ「《《政府が平気で嘘をつくことや》》」


マリコ「嘘...」


サチコ「『テロリスト』『暗殺者』『襲撃してきた』。全部嘘やった」


マリコ「映像で嘘がバレたのに」


サチコ「バレてからも、最初は開き直っとった」


マリコ「最低やな」


サチコ「最低や。でも、これが権力の本質なんや」


マリコ「本質...」


サチコ「権力は、都合の悪い真実を隠そうとする。だから、私らが監視せなあかん」


マリコ「監視...スマホで?」


サチコ「スマホでもいいし、投票でもいいし、声を上げることでもいい」


マリコ「声を上げる...」


サチコ「黙ってたら、権力はやりたい放題や。でも、声を上げ続けたら、変わる可能性がある」


マリコ「ミネソタみたいに?」


サチコ「ミネソタみたいに。作戦は終了したし、CBP司令官は解任されたし、世論も動いた」


マリコ「でも、二人は帰ってけえへん」


サチコ「...帰ってけえへんな」


マリコ「レネーさんは3人の子供を残して死んだ。アレックスさんは人を助ける看護師やった」


サチコ「せやな」


マリコ「その命が、こんな形で奪われるなんて」


サチコ「許されへん」


マリコ「許されへんよな」


サチコ「許されへん。だから、忘れたらあかん」


マリコ「忘れへん」


サチコ「忘れへんで。レネー・グッドさんとアレックス・プレッティさんの名前を」


マリコ「...サチコ、最後に一つだけええか」


サチコ「何や」


マリコ「私、今回の事件でな、アメリカのドラマが嫌いになったわ」


サチコ「なんで?」


マリコ「だって、ドラマやと、捜査官はかっこよくて、正義のヒーローやん」


サチコ「まあ、そうやな」


マリコ「でも、現実は違う。現実の捜査官は、市民を撃って、嘘をついて、証拠を隠す」


サチコ「...全員がそうやないで」


マリコ「分かってる。でも、今回のは酷すぎる」


サチコ「酷すぎるな」


マリコ「私、これからドラマ見る時、ちゃんと考えるわ。これはフィクションやって」


サチコ「それは大事やな」


マリコ「フィクションと現実は違う。ドラマは綺麗やけど、現実は汚い」


サチコ「汚いけど、向き合わなあかん」


マリコ「向き合う...どうやって?」


サチコ「まず、知ることや。今回みたいに、何が起きてるか知る」


マリコ「知る...」


サチコ「そして、考えることや。これは正しいんか、間違ってるんか」


マリコ「考える...」


サチコ「最後に、行動することや。投票でもいいし、SNSで発信でもいいし、デモに参加でもいい」


マリコ「デモ...私、デモ行ったことないわ」


サチコ「行かんでもいい。自分のできることをしたらいいねん」


マリコ「私のできること...漫才で伝えることか」


サチコ「それや」


マリコ「じゃあ、今日の漫才、ちゃんと伝わったかな」


サチコ「伝わったと思うで」


マリコ「ほんまに?」


サチコ「ほんまや。マリコが真剣に語ったからな」


マリコ「私、珍しく真面目やったな」


サチコ「珍しくやなくて、いつも真面目になれ」


マリコ「無理や」


サチコ「無理言うな」


マリコ「でもな、サチコ。最後の最後に一つだけボケてええか」


サチコ「...もうええけど、何や」


マリコ「ICEって、やっぱりアイスクリームの方が好きやわ」


サチコ「そっちに戻るんかい!」


マリコ「バニラとチョコレートやったら、私はチョコレート派」


サチコ「どうでもええわ!」


マリコ「でも大事やろ。人生の選択や」


サチコ「全然大事やないわ!今日の話、全部台無しやんけ」


マリコ「台無しやない。締めや」


サチコ「締めになってへんわ!もうええ、終わるで」


マリコ「ちょ、待って。まだ言いたいことある」


サチコ「もうないやろ」


マリコ「あるねん。私な、今日の漫才やって、一つ分かったことがあんねん」


サチコ「...何?」


マリコ「スマホは大事やなって」


サチコ「...まあ、それはそうやな」


マリコ「だから、私も常にスマホ持ち歩くわ」


サチコ「今までも持ち歩いとるやろ」


マリコ「いや、今までは連絡用やった。でも、これからは証拠用や」


サチコ「証拠用...何の?」


マリコ「サチコが私をいじめた証拠」


サチコ「いじめてへんわ!ツッコんどるだけや」


マリコ「ツッコミという名のいじめや。これは人権侵害や」


サチコ「人権侵害やない!漫才や!」


マリコ「私、国連に訴えるわ」


サチコ「国連に訴えるな!もうええわ、ほんまに終わるで!」


マリコ「あ、最後にお客さんと視聴者の皆さんに一言ええか」


サチコ「...何?」


マリコ「もし、おかしいと思うことがあったら、スマホで撮ってください」


サチコ「...急に真面目やん」


マリコ「真実は、誰かが記録せな消えてしまうから」


サチコ「...ええこと言うやん」


マリコ「でも、サチコの悪口は撮らんでくださいね」


サチコ「悪口言うてへんわ!」


マリコ「言うてるやん。今も『もうええわ』って」


サチコ「それは悪口やなくて諦めや!」


マリコ「諦め...サチコ、私のこと諦めたん?」


サチコ「諦めてへんけど、疲れてきたわ」


マリコ「疲れたらあかん。民主主義は疲れるもんやねんから」


サチコ「誰がそんなこと言うた」


マリコ「サチコが前に言うてた」


サチコ「...言うたっけ」


マリコ「言うてた。『民主主義のコストや』って」


サチコ「ああ、言うたな」


マリコ「だから、サチコも頑張って」


サチコ「頑張るわ。あんたをツッコむために」


マリコ「よろしくお願いします」


サチコ「ほな、終わるで」


マリコ「ちょっと待って」


サチコ「まだあるんかい」


マリコ「レネーさんとアレックスさんに、黙祷してええか」


サチコ「...ええで」


マリコ「じゃあ、皆さんもご一緒に」


サチコ「黙祷」


(数秒の沈黙)


マリコ「ありがとうございました」


サチコ「ありがとうございました」


マリコ・サチコ「サチコ・マリコでしたー!」


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