砂から覗くチンアナゴ
ころぷく、ヒトデ、クマノミの三匹は、
にぎやかに海を進んでいました。
ころころ。
すいー。
ひら、ひら。
それぞれの動きは違うけれど、
なんだか、いい感じです。
やがて、
砂が広がる場所にやってきました。
そのとき。
ひょこ。
「……?」
ころぷくは、目をこらします。
ひょこ。ひょこ。
砂の中から、
なにかが出たり、引っ込んだりしています。
「な、なにあれ……」
ころぷくは、思わず
ぷくーっとふくらみました。
クマノミは、
ちょっとわくわくした声で言います。
「おもしろそう!」
ヒトデは、
ゆっくり近づきました。
すると――
すっ。
細長い体が、
砂の中から、まっすぐ伸びました。
チンアナゴです。
でも、すぐにまた、
すーっと隠れてしまいます。
「……かくれちゃった」
ころぷくがつぶやくと、
少し離れた場所で――
ひょこ。
また、出てきました。
ころぷくは、
できるだけやさしく声をかけます。
「あの……こんにちは」
しばらくの沈黙。
それから、
ほんの少しだけ、顔が出ました。
つぶらな目が、
ころぷくたちを見ています。
「……こんにちは」
とても小さな声でした。
「ぼく……すぐ隠れちゃうんだ」
その子は、
ちょっと恥ずかしそうに言いました。
クマノミが、元気に言います。
「いいじゃん!おもしろいよ!」
「ぴょこって出てくるの、かわいい!」
すると、その子は
また、すこしだけ出てきました。
「ほんと……?」
ころぷくは、
やさしくうなずきます。
「うん」
「ぼくは……すぐ
ぷくーってふくらんじゃうし」
ヒトデも言います。
「ぼくは、ゆっくりしか進めない」
クマノミは、笑います。
「ぼくは、このへんから離れられないしね!」
砂の中のその子は、
少しだけ考えてから――
すっ、と、さっきより長く体を出しました。
「ぼくは……ここにいるのが好き」
「でも、ちょっとだけ……
外のことも気になる」
ころぷくの胸が、
ぽわっとあたたかくなりました。
(いっしょだ)
「よかったら……」
ころぷくは、
少しドキドキしながら言います。
「いっしょに行きませんか?」
その子は、
びっくりして、少し引っ込みます。
でも、また、ひょこっと顔を出して――
「……ちょっとだけなら」
その言葉に、
みんなの顔がほころびました。
ころぷくは、そっと言います。
「ぷくっと……」
みんなで声をそろえます。
「よくできました!」
砂の中から、
まっすぐ伸びるその子の影も、
仲間の輪の中に、
ちゃんと入りました。
見えたり、隠れたりしても。
そこにいるだけで、
ちゃんと、まるでした。




