夜遊び
俺様は政弘ってんだ、夜露死苦。髪の毛は茶髪に染めて、丸刈り。首にピアスもやってんだぜ。どうだ、イカすだろ。
今日は街中で夜遊びしてんだ、文句あっか。
おっ、向こうからサラリーマンが歩いてくらあ。ちっとばかし威かして小遣いでももらうか。
「おいコラァ。テメ、誰に断ってこの道歩いてやがんだよ、ええおいコラ聞いてんのか無視すんなよくそったれ、人の話聞けよおいコラ、なあオイどこ見てんだよ金よこせやコラ、おい無視かよくそが」
へっ、あいつビビってやんの。俺様に話かけられて口もきけずに通りすぎて行きやがったぜ。あんなふぬけ野郎、最近多くて困るんだよなあ。そんなに俺様が恐いのか。我ながら恐ろしいぜ。
そういやこの辺りも変わったよなあ。ほんの少し前までは遊ぶところなんてなかったのによお、今じゃネオン街だぜ。目が眩しいぜ。っておいおい、あのキャバクラの前にいるねえちゃん、やたらかわいいじゃねえか。ちょータイプなんですけど。
「ちょっと、そこの彼女。もし良かったら遊ばない? それが無理だったら強制的に電話番号教えてもらうけどー」
「きゃあ、何こいつ。マジブサイクっつうかマジなんかウケる」
「な、なんだと。もういっぺん言ってみろこのくそアマめ。テメ、ただじゃ済まさないからなコラァ」
「しっしっ、どっか行きな」
なめやがって……。俺様はもうマジぶちギレだ。ここまで俺様をぶちギレさせたやつはこれまでの人生で約八人目だ。こいつ、生きては帰さん。突然飛びかかって、この鋭利な武器でコロしてやる……。
「オルァアアアア!」
「いやああああああ!」
どうだ、ざまあみろ。接客に必要な服をズタズタに引き裂いてやったぜ。俺様をバカにするからだ。
「こら、政弘!」
おっ、誰だ誰だ。俺様を呼びつけにするやつは。コロスぞコラ。
「すみません、うちのがやっちゃったんですね。弁償させて頂きます……」
「ホント、まいっちゃうよねー。もうちょっとで私のお肌が傷ものになるところだったんだから」
んだとコラ。テメェが俺様をぶちギレさせたのが悪いんだろコラ、なあコラァ。
「すみません、すみません」
テメェ、いつまで謝ってんだよ。こんなやつしばき倒せってんだよタコが。
いてっ! テメェ、殴るなよくそったれ。首根っこを掴むなバカ。コロス、絶対テメェはコロス。死ぬまで許さねえ。
「こら、お前あれだけ外に出るなっつたろ」
はあ? んなこと知るかよボケが。いつ言ったよアア?
「お前に外に逃げ出されると探しに行かされるのが面倒なんだよ。しかも問題ばっか起こしやがって」
うっぜ。俺様の勝手だろうが。そもそも俺様が、お前らの家族にしてくれと頼んだ覚えはないね。
「なあ、お前。にゃーにゃーかわいく鳴いちゃってさあ。嫁がブサかわいいからってお前を拾ったけど、性格は絶対にかわいくないよなあ……」