48話『悪魔祓い』
(ふーむ)
危険な仕事だとかいう悪魔払い? 悪魔祓い? が果たしてどんな仕事なのかと思いながら異端審問官の二人の後を追って集合住宅のとある一室までやってきたのだが、なんか思ったよりも作業は単調だった。
優しげな口調で話すシスター・テストロッサが悪魔憑き患者? と面談を行い、その間に一々癇に障る事を言ってくるシスター・ジュエルと一緒に魔法陣を描いたり物の配置を変えたりする。
床に描いている魔法陣は悪魔を調伏する為に使用される特殊な幾何学模様の魔法陣で、憑依されている人の肉体と憑依してる悪魔の魂を引き剥がす為により相性の良い力場があると錯覚させる作用があるらしい。カブトムシトラップみたいなもんだな、多分。
そんな単純な罠に悪魔が引っかかるとは思えなかったのだが、どうやら悪魔に限らず生物に憑依する霊の類は一様に頭があまり良くないらしい。
自我が希薄で、だからこそ憑依霊は憑依先の人格して物を喋るんだとか。憑依した後は大した目的意識もなく、眠った人間の体を操縦して人間ごっこをする存在とのこと。
なーんか。ホラー映画とかで付いた憑依のイメージより大分スケールの小さい話で肩透かしである。憑依したはいいものの、肝心の憑依元が馬鹿だっつーのはなんかなぁ。
人に憑依する化け物っつったら、言葉巧みに人を騙して暗躍したりするべきだろ。インテリ系であれよ、人に取り憑くならさ。
「退屈か」
「えっ」
「退屈であろうな。私も最初に任務に就いた時はこんなものかと考えたものだ。悪魔に限らず、幽霊などこれまで一度も目にした事が無かったからな」
「はあ」
「奴らは確かに知性の欠片もない愚鈍な存在だよ。人の肉体は脆いからな、本体丸々乗り移ることは叶わない。人に憑依する悪魔は魂を千切り、存在規格の小さい分体を対象に埋め込むから知性も力も総じて弱くなる。侮るのも分かるさ」
「……」
「だがそれは宿主の中にいる間のみの話だ。肉体という檻から放たれれば本体の力を少しずつ引き出し脅威度が増していく。私達が行うのは宿主から抜けた後の悪霊との」
「お待たせしました。どうぞこちらへ」
話の途中でシスター・テストロッサが悪魔憑き患者さんをこの部屋に連れてきた。
患者さんは俺のイメージする悪魔憑きと違い清潔な見た目をしていた。特に髪が乱れてる様子もないし体型も普通、服も普通、口汚い言葉を吐くでもない。寝不足が祟って目元にクマが出来てるくらいだ。
「下がれ」
「えっ」
ボーッと二人の会話する様子を眺めていたらシスター・ジュエルに下がれと言われた。十分魔法陣から離れた位置に居たのにまだ下がれと? これ以上下がったら壁に背中がぶつかるんですけど。
「いいか? これから何が起きても恐怖するな、絶望するな。悪霊はそれらの感情を餌にし、それらを貪る為に攻撃をする。無心であり続けろ……と言っても無理だろうな。お前みたいな子供には厳しいか」
そう言ってシスター・ジュエルが俺の後ろに木の椅子を設置した。そこに座れと? 何もするなと? ムカつくな。てか子供じゃねーし。
「もし僅かにでも恐怖を感じたらこの薬を飲め」
「む。あ、それ渡されてます」
「なに? 先程はそんな事言っていなかっただろうが。報告くらいちゃんとこなせよ新入り」
「……へーい」
一々言い方に刺があるんだよな。もっと優しく物言えないわけ? 絶対同僚に嫌われてるよこの人。
てか、俺別に新入りでは無いんだけど。まだ候補生止まりなんですけど? もしかして既に異端審問官入りしたと勘違いして厳しくされてるのかな。
今更『私は候補生です』って打ち明けたら態度は軟化するだろうか。……そういう事はさっさと言えと言われるのがオチか。黙ってよっと。
(うーむ)
話し合いにシスター・ジュエルも加わり、完全に三人だけの輪が出来上がってしまった。蚊帳の外にいる俺はすることも無いのでただ漠然と平和な景色を眺める。暇だなぁ。
……異端審問官が着る服って、修道服とかなりデザインが異なるのな。
シスター・ジュエルはハーフパンツでシスター・テストロッサもミニスカになってるし、ダブルブレスト? って言うんだっけ。ボタンが二列付いてるタイプの上着を身につけてるし。あと頭に被ってるのが頭巾じゃなくて、ジュエルは単なるフードでテストロッサは軍帽みたいな帽子になってる。
最早コスプレだろ。申し訳程度に十字架の装飾があって、十字架のネックレスまで下げて執拗に教会アピしてるただのコスプレだ。聖職者が着る服ではないよアレは。
全体的に白いのは相変わらずだけど、なんか修道服と言うよりどこぞの軍服みたいなイメージだ。
……いや、ガチ軍服でスカートなんて穿かないか。じゃあなんて言うんだろうな、ああいう服装。
「さて。それでは儀礼詠唱を行いますが、シスター・セーレも参加しますか?」
「えっ」
「やめておけ。どうせ詠唱の文言など覚えてないだろう。立たせるだけ無駄だ、私達だけでとっとと仕事を終わらせるぞ」
「……覚えてますけど!」
勝手に決め付けられて流石に腹が立ったので椅子から立ち上がりわざとジュエルの肩にドンッと肩をぶつけて隣に立つ。肩をぶつけたジュエルから小言を吐かれるが一切無視して、テストロッサが口を開くのに合わせて俺も口を開く。
『ミルティア・ハシュラの名において、
大いなる父、母、
親愛なるイブの恩寵と施しを受け、
星の嬰児、
大天使ユグラヘルの祝福、
我らを導く使徒トロスとシドラ、並びにすべての洗礼された魂に力を。
私たちの使命、この身に宿る主の権威を以て無明の闇を撃退するここを誓言します』
詠唱が進むと魔法陣に色が宿り、魔力の奔流が始まって周囲の空間が揺れる。これ、一応は大魔術って括りになる作業らしいがなるほど発動するとこうなるのか。
凄いな、魔力に対する抵抗力が高い俺でも肌がピリピリする。中にいる人は平気そうみたいだけど、両隣の異端審問官さん達も相当激痛だろうによく耐えられるものだ。
『私たちはお前を追い出し、
お前が誰であろうと、
不浄の霊であろうと、
哀しき悪霊であろうと、
愚かしき悪魔であろうと、
おぞましき邪悪であろうと、
例外なく裁き、例外なく傷つけよう』
突如として魔法陣の中にいた悪魔憑きさんが白目をむきそのまま意識を失い項垂れる。
今口にしたのは取り憑いてる中の存在に直接痛みを送り込む詠唱なんだっけか。
憑依対象が苦痛を感じる間もなく気絶したのは、単に一瞬で意識を保てる痛みの限界を超えた激痛が内側の霊体からフィードバックされた結果だろうな。可哀想に。
『私たちの主ミルティア・ハシュラの名において、
お前が先行きを失い、星の揺籃から追い払われますように。
原初の罪を体現せし大淫婦、
その穢れを清めし女の血は聖なる毒にならん。
罪なき子羊の尊き血に触れる事は能わず、
お前の嘆きによりそれらの罪は贖われん』
「うがっ!? ああぁがあああぁぁぁぁぁっ!!?」
気を失ったはずの悪魔憑き患者が叫び出し、その背中からモヤのような物が排出される。患者の叫びはモヤの叫びへと変わり、不定形の黒が段々と赤に変色し始めて肉を帯び魔法陣の描かれた床に縛り付けられる。
「ここから先は離れていろ、シスター・セーレ」
「え? 今から弱体化の詠唱を言うんじゃ?」
「見えないのか間抜け、もう既に悪魔は体外に排出され具現化している。お前は邪魔だ、さっさと視界から失せろ」
「……」
言い過ぎだろ。失せろはないだろ流石に。
イライラするわぁ。こんなペーペーの下っ端が馬鹿みたいな長文を記憶してることに褒めの一つも無いのかよ。必死に覚えたんだぞ? やる気なくすわ、マジで。
「「偉大なる主に平伏せし十二の大公、
天の神、海の神、冥府の神、
太陽の神、戦の神、鍛冶の神、
地の神、満月の神、新月の神、
蝕の神、季節の神、知恵の神、
旧代の王座が失われたこの星であなた以外の神はいない。
あなたは万物の超越者であり、
絶対の支配に終わりはない。
私たちは謙虚にあなたの栄光にひれ伏します。
あなたの力によって私たちを救ってください。
邪悪なる霊の暴虐から、
彼らの罠から、彼らの嘘と、彼らの悪行から」」
『ガ、グ、ガギャッ……!?』
肉を得た悪魔(と思しきもの)が苦しそうに呻き、バリバリと音を立てて肉の表面が抉れて心臓のようなものが浮かび上がる。
アホみたいに長文な詠唱だが、どうやらこの長文には呼吸で区切る毎に異なる効果が反映されるらしい。
最初の宣言云々は神様の力を魔法陣に集約させて俺らの魔力を聖属性? の魔力に変換する詠唱。
次の傷付ける云々は生物を乗っ取ってる霊体に直接痛みをぶち込む詠唱。
三つ目の罪云々は霊体を引きずり出して物質化させ、魔法陣に束縛する詠唱。
四つ目の神云々は霊体の弱点を表出させるか、或いは死の概念を付与し殺せる存在に堕落させる詠唱。
といった具合に一つ一つがそれなりに強力な作用を齎す詠唱なのだが、もうちょい文章を短くできないものかと思ってしまう。馬鹿みたいじゃんね、敵の真正面で長文ポエム読んでる絵面。
「「聖なる我らの大いなる主よ、
あなたの力強い加護により罪なき子羊を救うために。
あなたに捧げる聖なる血を不浄の輩に奪われないために。
私たちは清らかなる魂を通してあなたに懇願します。
私達の主ミルティアによってそうありますように」」
長かった儀礼詠唱もようやく最後の一節前まで唱えられた。心臓部を抉り出された悪魔は弱々しく唸りながらギョロギョロとカエルのように目玉を動かし異端審問官タッグに怯えたような目を向ける。
さも大ピンチって感じの反応を示してるけど、俺の学んだ知識によると悪魔祓いを行っても完全には悪魔を殺しきれないんだよな。
っていうのも、さっきシスター・ジュエルが言っていたように人に取り憑いてる悪魔ってのは本体から分かれた雑魚トークンみたいなもので、死んでも本体にさした影響は与えられない。多少本体の肉が抉れる程度のダメージしか与えれないらしい。
それだけでも十分すごい事なのはわかるのだが、本物の『悪魔』とやらを見た事がないから具体的にどれくらい凄いことなのかは分かりかねる。
現状だと罠にハマった間抜けなカエルもどきだもん、見くびるなって言われても無理があるぜ。
分身体がこのザマじゃ、本体もぶっ叩こうと思えばぶっ叩ける程度の強さしかないんじゃないかなって思っちゃう。
「「邪悪なる者に永ば」」
『ギャグガアアアアアァァァァァッ!!!』
「ッ!?」
トドメの詠唱を口にする刹那、突然悪魔が暴れ出し肉を触手のように変化させてテストロッサの胴体を打った。
「テストロッサ!?」
「大丈夫です! 彼女を安全な所に!!」
テストロッサが指示を飛ばし、素早く頷いたジュエルが患者さんを担いで大きく横に飛び退く。そのまま部屋の外に追い出し、施錠魔術をかけて扉が開かないよう細工して彼女は自身の服に腕を突っ込んだ。
「「我に力を!!」」
異端審問官二人が単語を唱え、手に握っていた小さな銀を武器に変える。
アレは単語を唱える事で武器に変換される『可変聖器』ってアイテムだ。
ジュエルさんは二振りの剣、テストロッサさんは盾を手に持ち悪魔を睨む。剣士と盾役か、確かにバランスの良い編成だな。後方支援系の味方が欲しいって言った気持ちも理解できる。
「くっ、やはり未熟者に手伝わせたせいで魔力に綻びが生じたか!」
えっ? なになに、俺のせいで儀式が失敗したと言っておられる? 本当だとしても傷付くんですけど、本人がいる場でそういう事言うのやめようよ。
「こうなる事が分かっていたからっ、お前には余計な事をしてほしくなかったのだがな!!」
「うぜぇ……」
俺に向けて悪態を吐きながらジュエルが悪魔の方へと突貫していく。
えー……。めちゃくちゃ心の傷に塩を塗り込んでくるじゃん。うるさいなあ本当に。やっぱ嫌いだわ、この人。
シスター・ジュエルが双剣で悪魔を斬り、シスター・テストロッサが悪魔の攻撃を盾で受ける。
二人の連携は実に噛み合っていて、個々人の体捌きもさすが戦闘職と言わざるを得ないほどに綺麗で潜り抜けてきた修羅場の多さを想像させられる。
しかし、相手の悪魔は彼女らの攻撃をモロに食らってもまるで傷ついている様子が無い。
悪魔の肉質はあまり硬そうには見えないのだが、ジュエルの持っている剣はなまくらなのだろうか。それとも単純に筋力不足で決定打に欠けているとか?
むっふっふ。
決定打に欠けるという話なら、つまり俺の出番って事ですね。ここまで色々とお預けを食らっていたが、ようやく活躍の機会が与えられたというわけか。
俺を死地に送り込むなんてリエルの性根は本当に腐りきってるなって思っていたが、中々に粋なことするじゃないの。力を示せってわけね?
仕方ない、色々教えてもらった恩はあるしここはリエルの顔を立ててやりますか! 散々な物言いをしてきたジュエルに手を貸すのは癪だが、俺は寛大なのでな。過去の事は水に流し……。
「でしゃばるなセーレ、本当に愚鈍だなお前は!! 無能の分際で変な事をしようとするな! そこで座っていろ!!!」
うん。死ね〜〜〜〜〜〜〜〜〜???????
死ね〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜???????????
なんなの。折角苦戦してるから手を貸してやろうって思った優しさ溢れる俺に対してその言い草なの? 誰かに愛されることが無いタイプ? 人に善意を向けられないまま大人になっちゃったから親切心とか理解出来ないタイプか。聖職者やめろよもう、向いてないよあんた。
クッソ〜。このシスター・ジュエルとかいう女、頭から爪先までクソムカつく〜!
半人前が出しゃばるなって意見はわかるよ? 俺が死んだら自分らの責任になるって側面もあるもんな、気にするのはよ〜く分かる。でもさ、言い方ってのがあるじゃん。今の文言で"無能の分際"って単語を使う必要あったかな? 無かったよね? 息を切らして戦いながらも悪口を言うとかどんだけ性格悪いわけ?
え? あ、どうしよう。ちゃんとどつき回したくなってきちゃった。ボコれない? ボコってはいけない? 先輩っていう存在。全然敬ってもいいからその代わり思う存分にボコらせてくんないかな、本気で。
「どういう事だ!? 刃が通らないぞ!」
「体表に魔力の膜を形成しているのでしょう! 物理的な攻撃を多用する点から使用できる魔力の大凡を費やし防御力を底上げしているのかと!」
「そういう手合いか!」
「魔力膜の綻びを見つけてそこを重点的に攻めましょう!」
「分かった!!」
攻めあぐねながらも悪魔の振るう猛威を凌ぎつつやり取りを交わす二人。
ジュエルさん、人格が終わってるだけで戦闘技術自体は卓越してるんだよな。人格破綻者に武器を与えるとか、上層部の見る目の無さにドン引きですわ。
「ッ! 速さが増しましたよ!」
「攻撃も先程より重くなっている! 存在規格が膨れ上がっているな!!」
「光魔法を使います! 陽動を!!」
「了解!」
カエルと人の中間みたいな見た目だった悪魔の肉体に毛が生え始め、頭からは角が伸び始める。見た目がどんどん人型に近付いているのに、明らかに人間では無い何かに変貌していく様は確かに恐ろしくもあった。
……けど、ちょっとかっこいいな。アニメに慣れた現代人だからか、明らか異形の存在を前にしているのに恐怖より『どんな風に変身するんだろう?』という興味の方が強くなっている。
変身形態を持つ敵とか、全形態を目に収めたいって思うのが普通だもんな。男の子なのでワクワクしちゃいます。
「九列封印解錠! 聖霊拘束、一時凍結。敵を刺し留めよ、聖杭!」
ジュエルが空間を飛び交いながら攻撃を与える傍らでずっと詠唱を唱えていたテストロッサが両手を広げて前に突き出し魔法を唱える。
テストロッサの両手の平から光が集約し、光の杭となって彼女の手を離れた。
光の杭は悪魔の右腕に命中し、悪魔は腕ごと壁に刺し留められる。悪魔は光の杭を引き抜こうとするが、空いた手でそれに接触すると指先が消失してしまうようだ。
貫いた対象を磔にし、引き抜こうとしたら指が弾け飛ぶ魔法か。めちゃくちゃ強力だな、命中したら勝ちって感じじゃん?
「どれくらい保つ?」
「私の魔力量では精々5分程度が限界です」
あ、時間制限はあるんだ。まあ5分も拘束出来るって考えたらめちゃくちゃアドではあるな。追加攻撃しまくったり回復したり態勢を整えたりと、5分もあればやれる事は沢山あるし。
「ぐっ!?」
「ジュエル!!?」
えっ。折角のチャンスタイムなのにジュエルがフリーな方の腕にぶっ叩かれた。油断してたの? この状況で? 俺に偉そうなこと言ってた癖にいいのかそれで。
っと、ボーッと観察してるんじゃなく流石にこれは助けに入らないとな。
「よいしょっ」
「っ、貴様!?」
悪魔のぶっとい腕で殴り飛ばされ、そのまま壁に叩きつけられそうになったジュエルさんを受け止める。ぐえっ、飛んでくる人を受け止めたせいで背中を壁に強打した。痛い。
「いてて……大丈夫ですか? シスター・ジュエル」
「……ッ!」
「がふっ!?」
壁にぶつかって爆発四散するのを防いでやったというのに、ジュエルは俺の顔を見るなり思い切り腹を殴り付けてきた。
深々と拳が刺さったせいで嘔吐感を催し床に手をつく。う、動けねぇ〜……!
「何しているのですかあなたは!? こんな時に!」
「コイツが未だに邪魔をしてくるから動けなくしたまでだ!」
邪魔って。命の恩人相手に言う事かそれ? やっぱり人格が破綻してるな、良心の呵責とか微塵も存在しないんだなコイツ!!!
「こ、の……!」
「まだ動ける余裕があるか。それならば歯を食いしばれ」
「歯を食いしばれ!? 今度は顔面殴んの!? あんたなぁ! いい加減にっ」
「黙れ!」
鼻っ面をぶん殴られるのかと思い手で顔を守ったらもう二発腹をかなり強めに殴られた。両方とも内臓を揺らされる勢いだったので最早吐き気を通り越して呼吸困難に陥り体を丸めてしまった。
「お前の出る幕はないんだよ、そこで蹲っていろ!!」
「終わってる……コイツ、終わってる……っ!」
俺の恨み言を無視して再びジュエルが剣を構え悪魔の方へと走っていく。
決めた、何があっても必ず、絶対に、今日中にジュエルが嫌がる事を一つはやってやる。痛い目見させてやる。覚悟しとけよ、このクソアマがあぁぁ……!!!




