表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

26/42

第25話 邪神の眷属のアジトへ!



 オレが右手の傷を治している間、名もなき小さな村は復興に勤しんでいた。境目である柵を立て直し、無事だった家畜を繋ぎ直し、傷ついた家も直した。



 みんな慣れっこと言ってはいたが、やはり手際がいい。出来る範囲で手伝いたかったけど、みんなが気をつかってくれたので、治すのに専念した。



 傷もミオンさんのチカラのおかげで、手のひらが貫通するケガも予想以上に早く治った。完治した次の日、空が白み始めた頃――



「ふたりが戻る頃には、この村も元通りさ! ほい、コレおやつ」



「アヤトさん、どうかお気をつけて」



 保存食を貰い村の人たちに見送られ、ミオンさんと馬に跨り、邪神の眷属の居場所に向かった。



「あの村はステキなところですね。とても居心地がよかった」



「オレも拾われた先があそこで、ホントによかったですよ」



「あそこに住むのも、一考の余地アリですね……」



「ギルドの仕事がなければ、ですね」



「アヤト殿。実を言うと私は、ギルドを追い出されたのです。あの掃討戦ハントにて、ゴブリンと通じてると」



「えっ? それは……申し訳ありません」



「あの場ではゴブリンとの共闘こそ、正しい道だったと自負している。責めるつもりはありません。地位に縛られない今、自由を楽しむのも悪くありませんしね」



「……その自由になった行き先が」



「そう、ここです。邪神の眷属はここに出入りしていたのを確認しました」



 村から北西にある、モサモサ大森林の外れの屋敷に到着した。さっきまで明るかった空は陰り、雷鳴が鳴っている。しかし不思議と雨は降っていない。



「……では行きましょうか」



「待ってろよ、ハル。……オレのコト、忘れてないよな?」



 馬から降り向かう。両脇にある墓地を横目に、閉ざされた門を開けようとするも開かない。


「やっぱりカギが掛かってるか……。あの、ところでミオンさん」



「は、はい」



「すごい震えてるんですけど、もしかして具合が悪いですか?」



 いつの間にか、後ろにミオンさんがいた。馬に乗ってるときとは逆の立場だ。オレの肩に置いてる手がすごい震えている。



「いえ、とととんでもない!」



「いやいや、マジに帰ったほうがいいですよ!」



「連れてきたのはわわわ私です。アヤト殿をひとりにするワケには――」



 そのとき、墓前の土が泡立つように盛り上がった!



「ひぃッ!」



「ミオンさんちょっ、抱きつかないで、動けないです!」



 墓前、土の中。やっぱり出てくるのは……ゾンビか!?



「ブ……ブブ……」



「ぴぃぃーッ!」



「なにその声!?」



 土の中から小さな声がするよりも、ヤカンが沸騰したような悲鳴にビックリした。いや出てこられても、がっつり抱きしめられて動けない!



「来るなよ、今襲ってくるな……」



 やがて盛り上がった土は破れ、小さな影が飛び出す!



「ブッブブー!」



 ゴブリンが あらわれた!



「って、ゴブ夫かーい!」



「ブッブッブ、驚いたゴブ?」



「オレは安心したよ。オレはね」



 ミオンさんの震えが止まった。まだオレの肩に手を置いているけど。



「……ミオンさん」



「ひゃい」



 振り向くと、見たコトのないくらい縮こまっているミオンさんがいた。



「怖いんですか? オバケとかゾンビとか、こういう雰囲気」



「……はい」



 別にただ風邪引いたとかじゃなくて怖がりなだけかあ。……でもそれ大丈夫なのか?



「ふたりだったら平気かなと思って。けどやっぱり怖いものは怖いです」



「意外とあっさり認めるんですね」



「どうしてでしょうね、ギルドマスターだった頃ならきっと認めなかったでしょうが……、重い荷が下りたからでしょうか。いや、下ろされた、という表現のほうが正確か」



 ミオンさんは笑う。苦笑いとかではなく、その表情は晴れていた。



「ただのミオンは、こんなモノです。頼りにさせてくださいね、アヤト殿」



「オレも頼りにしてますよ」



 突然、歪んだバイオリンのような軋む音がした。またミオンさんがびっくりしてる。



「解錠、完了ゴブ」



 門が開いてる。ゴブ夫がカギを開けてくれていた。さすがに器用だ。



「あの屋敷にゴブの仲間が囚われているらしいゴブ。また協力してほしいゴブ」



「またよろしくな。ゴブ夫も頼りにしてるからな」



 門を潜り、入り口に立つ。重厚感のある扉は思いきり押しても開かない。



「やっぱり開かないな」



「おかしいゴブね、この門カギがかかってないゴブ」



「正面から来てるのに、誰も襲ってこない?」



 違和感が多い。幸い敵もいないし、色々試してみよう。



「まさか上げるとかはないと思うけど……」



 屈んで扉の飾りをつかみ、車庫のシャッターを上げるようにする。開いた。なんだコレ。



「お見事です!」



「コントかよ……」



 中の暗がりに、人影とともに赤い眼光が揺らめく。邪神の眷属か!?



「うおおお!」



 オレたちを見るなり雄叫びを上げる! てかコイツも門の開け方わかんなかっただろ!



「来るか……ってあれ?」



 オレたちに脇目も振らず、外に出ていった。



「そこの男、待て!」



 ミオンさんが引き止めた。



「おまえ、他に仲間はいないのか!?」



「い、いねェよ。もうやられた!」



「邪神の眷属なんだろう? それが最後のひとりというワケか」



「ああ、そうだよ。邪神なんかもう拝まねえ。こんなトコ、アジトにできるワケなかったんだ。バケモノの棲家だったんだよ!」



 男は頬がこけてガリガリだ。



「おい」



 オレは男に、村長が持たせてくれた干し肉を与えた。



「食えよ。その代わり、食い終わったら聞きたいコトがある」



「あ、ありがてえ!」



 男は一瞬でペロリと食べ終えると、目から赤い光が消え失せた。



「邪神への信仰がなくなりましたね」



「ありがてえ、助かった! ところで、聞きたいコトって?」



「この屋敷にハーピーはいるか?」



 男はオレをジッと見て、頷いた。そのあとに口をゆっくり開く。



「いたぜ。ハルって名前のハーピーが。今度は俺が訊いてもいいかい?」



「ああ」



「……アンタがアヤトか?」



「ハルが言ってたのか!?」



「やっぱりそうか。じゃあ助けに行くんだろ、だったら気をつけな。ここにゃバケモノがいる。俺たちは気づかなかった。邪神のチカラを得ても、通用しなかったんだ」



 男は遠くを見つめた。



「みんな死んだよ。アルカトラ王国市内を襲うって出ていったヤツらは運がよかった。皮肉なモンさ、殺しを躊躇してたほうが、この屋敷で先に死ぬんだからな……」



「はッ」



 ミオンさんはイジワルそうに鼻で笑う。



「安心しろ。そいつらはふたりのエルフに全滅した」



「……ははッ、因果応報だな。脱獄犯ごとぎが強靭なチカラ欲しさに、邪神なんかに唆されるのが悪いんだけどよ」



「ならば、今からただの人間として変わればいいだろう。立場もなにもない人として」



「アンタ、高貴な身分の人間かい?」



「今はなにもない、ひとりの人間だ」



「へッ、救われるねえ。せっかくだ、恩人サマの無事を祈ってるよ」



「神にか?」



「ったく、底意地の悪い……」



 男は膝をついて両手を組む仕草をして、そそくさと去って行った。



「……行きましょうか、アヤト殿」



「はい」



 バケモノがいるという屋敷に、オレたちは足を踏み入れる。ハル、待ってろよ。ゼッタイ助けるからな!







「ブブ、蚊帳の外ゴブ……」



「まあ……元気出せよ」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ