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第23話 ハルへの手がかり!



 ゴロツキの襲撃によって、和やかだった村の敷地内はボロボロだ。低い柵は倒され、木造りの家は傷つき、屋内では生活の一部だったものが散乱している。



 オレがもっと早く帰ってきたら、結果は違ったのかもしれない。しかし幸いなのが、誰も死者がいないコトだ。転がってるゴロツキどもは知らんけど。



「アヤトくん、君がそんな顔をする必要はないよ」



「村長……」



「またイチからやり直すさ。それよりも誰も死ななくてよかった。もう夕方だし、また明日からがんばろう」



「そうですね。……あいててっ!」



 今になって、ゴロツキに刺された右手が痛んだ。



「アヤトさん、どこかケガを!?」



 サリナさんがテキパキとオレの身体中を触って確認してくれている。



「右手なんですけど……」



「この濡れてるのはもしかして……」



「いててっ。ええ、そうですね」



「ご、ごめんなさい。手を出してもらっていいですか」



 サリナさんは袖口を口で破り、それをオレの手に結んでくれた。



「ムリしてはいけませんよ」



「ありがとうございます」



 村長が腕を組んで生温かい眼差しをオレたちに向けていると、村人のキジムが叫んだ。



「また来るぞ!」



 馬に跨った人がこちらに向かってくる。ゴロツキなどではない。遠目でもわかるその凛々しさに見覚えがある。



「ミオンさんだ!」



 オレに気づいてくれたようで、馬上で手を振っている。オレも手を振り返した。



「アヤトさんの知り合いのかたですか?」



「ええ。少しだけの間ですが、お世話になりまして」



「それってワーロ・ハークのギルドマスター、癒し手のミオンかい? なんだってこんなヘンピなトコに……」



 ミオンさんが壊れた柵の外まで来ると、木の杭を踏んで埋め、そこに馬を繋いだ。



「ようこそ。ギルドマスター・ミオン様。わたくしどもはおもてなししたいのですが、今はこの通りでして……」



 柵を乗り越えたミオンさんに対して、村長が突然ペコペコし出した。



「あなたが村長ですか。頭をお上げください。これはギルドの不手際とも言えましょう。上納金を納めないと守らないというルールを作ったアルカトラ王国の……」



 ボロボロになった村を眺め、眉間にシワを寄せている。



「そ、それで御用件は? 申し訳ありませんが、カネのほうは……」



「いえ。要件は半分達成できず」



「半分、ですと?」



「私は邪神の眷属を追っていました」



 当然のように転がっているゴロツキどもを、雑に親指でさす。



「このド畜生どもは、最近勢力を広げている邪神の眷属。ここから南にある王国市内に攻め込むという動きをキャッチしたのですが……」



 垣間見えた口の悪さに驚いていると、オレに向かって手を伸ばしてきた。なにか握っている。



「アヤト殿、お久しぶりですね。これをお渡しします」



「ええ、お久しぶりです……?」



 ミオンさんから、大きな緑葉を受け取った。葉には赤い塗料で絵が描かれている。ゼッタイ血だ。



「驚きました。私がこの生きるに値しないクソッタレどもを追っていたところで、ふたりのエルフが現れたのです」



「なんと! これは蛮族の血塗り絵図ではないですか!」



「厳ついネーミングだな……」



 イズミさんとミヤコさんだ。てかオレたちの援護をしながら、ミオンさんも助けていたのか。



「ええ。彼女たちはジェスチャーで伝えてきたのです。筒状のものを首にさげたニンゲンにこれを渡せと」



「この葉っぱが重要なのかな。ところで言葉ってわかりました?」



「わかりませんでした。しかし彼女たちは笑っていました。……まるでソレを楽しんでいたよう」



 ミオンさんは真っ赤な葉を見せてきた。紅葉したものではない。もっとドス黒い赤だ。



「敵の血で染めた鏖殺みなごろしの若葉。全滅した部隊のリーダーの目に乗せるものです」



「うわあ……」



「私もあれだけ強くなりたいものです。もしくは仲良く……。しかし異界語召喚士バベルサマナーのあなたならば、エルフと信頼を築けたのでしょう?」



「ええ。いい人たちでしたよ」



 血塗り絵図を眺めると、そこには倒れた棒人間にX《バツ》が重なっていた。



「なるほど、倒したってコトですね。ホントに助かったなあ」



「見ましたか? 次に……これを」



 ミオンさんから再び葉っぱと、それから鳥の羽が渡された。羽柄から見て上から黄、白、黒という配色。間違いない、ハルの羽と同じ柄だ!



 葉っぱには、倒れている棒人間から矢印が伸び、羽のような絵が描かれている。ゴロツキの仲間が持っていたみたいだ。



「詳しくは聞きませんが……。どうでしょう、私と邪神の眷属をともに追いませんか? 目星はついています」



「やっと手がかりが見つかったんだ。すぐにでも!」



「しかしその手では……」



「ミオンさんのチカラがあれば!」



「ダメなんです。実は――」



 ミオンさんはすっかり暗くなった空を見上げた。大きく大きく手を伸ばし、まるで星をつかむように握りしめた。



「空が……曇っているのです」



 そんなコトはない、雲ひとつない空だ。ただ今まで気にしなかったが、元いた世界よりも星が少ないし、赤い星が妖しく輝いている。



「こんなにも空が暗いのに、神は……星は輝かない。なにも応えてくれない。おお、癒しの神ロウハイレンよ、我が声に応えたまえ!」



 ミオンさんの指パッチンは、癒しのチカラがある。しかしオレの手から痛みは引かなかった。



「今や神の姿は消え、代わりにあの赤い妖星が輝いている。この通りただちに傷は癒せず、今の私にできるコトは、傷の治りを進めるしか」



 悔しそうな表情とは裏腹に、両手で指パッチンを連発している。顔と行動のギャップがすごい。



 ところで、星と神様の関係ってなんなんだろう。



「なので、今日は休んでください。念のため、私が番をします」



「ギルドマスター様に番をさせるなど、滅相もありません!」



「いえ、私はなにもしていないのだから、これくらいは。村長殿も休んでください」



「おおッ、なんと頼もしい。まさに救いの神のようだ!」



「大仰ですよ。神が微笑まぬのなら、人間たちでがんばるしかないのです」



 ミオンさんはオレのほうを向いて、微笑んだ。



「アヤト殿。あなたのケガが治り次第、向かいましょうか。きっと、ハルちゃんもさみしがっているでしょうから……」



「ええ。それを言うなら、ルークもさみしがっていますよ」



「ふふっ、どうでしょうね。では、お休みなさい」



 ミオンさんは一礼したあと、座っている馬の背中にもたれ、短剣の手入れをし始めた。



「……ではアヤトさん。お言葉に甘えて休みましょうか」



「はい。サリナさん、またお世話になります」



 今日はゆっくりと休もう。荒れてしまった家は、それでも安らぎを与えてくれるだろう。サリナさんがそばにいてくれるなら……。



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