表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

17/42

第16話 エルフの娘、イズミ



「あっはは! アヤトくんのなんやそれ、小っさいわあ〜」



「んもう、そらそうよ。イズミさんは森に住んでるんだから」



 アルラウネの食糧調達のため森の奥へと向かったオレは、イズミさんの提案で大物勝負をするハメになった。



 その勝負とは、制限時間内にどっちが大きな獲物を連れてくれるかのモノだ。



 結果は当然、オレの負け。イズミさんは悪路も暗がりも、見通しがきかない木の群れもなんのその。地の利を活かしてスイスイと進み、1メートルは有に超えるあるリスを獲ってきた。



「うわあ、でっかいリスだねえ。ありがとさん。アヤトさんのもおいしそうだよ。デザートにちょうどいいわあ」



「オレのはデザート代わりか……」



 ふつうサイズのハズなんだけど、さすがはファンタジー世界。とんでもなくデカいリスが居てもおかしくないんだな。



「ほたらアタシを食わんでも、これで満足するやろ。さっ、ぼちぼち行こか」



「そうだな。じゃな、アルラウネ」



「ほんとにほんとに、ごめんね。ほんでもって、ありがとねえ」




* *  *




 今度こそアルラウネと別れ、イズミさんが住まうエルフの里へと赴く。赴いてはいるハズだが、進めど進めど景色は変わり映えしない。そりゃ森の中だけども。



「暗いなー。アヤトくん、退屈やな〜って顔しとるで」



「そりゃあ、まあ。木陰でずっと暗いし、木ばっかりだし……」



「はあ〜! けったいなコト言うわ。アタシみたいなエルフの女の子と歩くの、ニンゲンの夢ちゃうんか!」



「シチュエーションがね……」



「アタシの棲家に連れてくってシチュエーションがかいな!? 嫁入り前の実家のあいさつと思わんと!」



「いや、こんな鬱蒼とした森で歩くのがってコトよ。てか出会ってちょっとしか経ってないのに、そんなふうには思えないわ!」



「アタシを助けたっちゅう運命の出会いを果たしたうえに、いっしょに飯まで獲ったのに!?」



「野蛮でびっくりしたけどな……。あのリスの急所を的確に突いてて」



「血なまぐさいエルフはエルフじゃないっちゅうんか! はあ〜、偏見やで偏見。これがエルフや。お淑やかなエルフはおらん。現実見なアカンよ」



「なるほどね。……ところで話変わるけど、こんなトコで喋ってていいの? ヤバいバケモノたちに居場所を教えてるモンじゃないのお?」



「ふふん、もっともな指摘やな。でもな、森のモンは知っとる。アタシらエルフの強さをな」



「ドジを踏まなきゃ?」



「おうおう言ってくれるやないか。大物勝負で負けたクセに」



「アウェー戦じゃな、分が悪いよ」



「にひひ。地の利を活かすのも実力のうちやで!」



 進んでいると木の密度が減り、陽が差してきた。明るい性格のイズミさんと話してるのもあって、釣られて気分も明るくなってくる。



「おつかれさん。そろそろ着くで、全男子があこがれるアタシらの棲家にな!」



「いきなり人間が来ても、パニックにならないか?」



「心配ご無用。みんな知っとるよ。……ほいっ!」



 突然、イズミさんは左足と両腕を上げるポーズをした。まるで一粒で300メートル走れそうな力強さだ。



「そ、そのポーズは……?」



「家のカギみたいなモンや」



 すると陶器が割れたような音が鳴る。森の中では似合わないそれは波が引いては打ちつけるように、何度も交差し合い、響き渡る。



 次第に木々の緑葉は赤く色づいて、印象をガラッと変える。まるで紅葉したみたいだ。



「これにて到着」



「なんだコレ、すげえ!」



「んふふ、たまげたやろ。これは解錠魔法、『遍く紅葉(ミノウ・ルージュ)』やで。こないに赤い葉っぱやと外から目立ってしゃあないからな、普段は緑の葉っぱで誤魔化してるんや」



「はあ〜、キレイだな。オレ紅葉って好きなんだよなあ」



「ええよな、アタシも好き! もちろん赤く見えるんは、アタシらの棲家の中におるときだけや」



 落ち葉を踏みしめ、また歩く。棲家に着いたとは言っていたが、周りを見渡しても未だに人影は見えない。



「まあ言いたいコトはわかるで。建物もなんもあらへんって思っとるやろ。そらそうよ、エルフはツリーハウスに住んどるからな」



「ツリーハウス? あっ、ホントだ。木の上に家がある!」



「おーい、スイタ! どや、儲かっとるかー!」



 ツリーハウスに向かって、より大きな声で呼ぶと、窓が開きエルフの女の子が顔を出した。



「ボチボチやで、ボチボチ。そっちはどうや?」



「アタシは命、儲かったで!」



「隣のニンゲンに助けてもろたんか。そらラッキーやな。いやあにーちゃん、あんがとさん!」



「いやいや……。大したコトは」



「ンな謙遜すな、こんなふうに胸張れ胸ェ!」



 イズミさんが胸を反らして手本を見せてくれた。ゆ、揺れてる……。



「イズミ〜、にーちゃんが目のやり場に困っとるやないか」



「あっはは! なんや、にーちゃんまで紅葉かいな? こっち見てみ、うりうり〜」



「あ、頭をぐりぐりするな!」



「ぶはははっ! いやー、こらおもろい。いじりがいがあるわ」



 イズミさんの友人と別れたあとは、また進む。広場のような開けた場所に出たけど、誰もいない。静かだ。一面落ち葉が敷き詰められてるだけだ。



 いや、静かというよりかは、岐路に立つような独特の緊張感が漂っているような。たとえば就活時の面接前みたいな。



「こうも静かとは思わなかったな」



「なんやその目は。まま、ええわ。いつもは賑やかなんよ、ホンマやで。んでもな、今はちょっとな」



「おー、イズミ! 帰りよったか!」



「うおお、ビックリ……!?」



 不自然に盛り上がった落ち葉の中から、エルフの男が現れた。オレは驚いたのは突然出てきたからではない。股間に青葉1枚だけ身につけ、あとは産まれたばかりの姿というコト。



「ヘンタイだーーッッ!!」



「あっはは! サカイ長老言われとるで、ウケるな!」



「そう褒めてくれるなや、にーちゃん」



「いや褒めてない褒めてない!」



 てかイズミさん、長老って言った? この99パーセント全裸のヘンタイに? 金髪がよく似合うイケメンだけども。



「んで要件はわかっとるで、アヤトくん。キミ、ハーピーの子供を探しよるんやろ?」



「そうですけど……、どうして知ってるんです?」



「ふたりの会話は筒抜けなんや。エルフは木と共に生きる民、木と喋るコトくらい朝メシ前や」



 だからさっき、イズミさんはもう知ってるって言ったのか。



「ええで。仲間を助けてくれた礼や、その質問に答えたる」



「おおっ!」



「調べた結果……、よくわかりませんでした! いかがでしたか?」



「中身の薄っすいブログかよ!」



「ありゃー? 長老も知らんかったかー。まいったなー」



「でも、もうひとつの質問には答えられるで。なぜこんなに静かなのか……ってのは。それはな――」



 長老は上げてた口角を下げ、真顔になる。いや、ほぼ全裸だから説得力も薄いけど。



「近々戦争する予定なんや。近くて遠い隣人、ダークエルフとな」



「……戦争〜!?」



 いつもにこやかなイズミの顔が曇る。どうやらマジらしい。でも……多いな、こういう争い。また巻き込まれそうだ。ハルを探したいだけなのに。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ