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本差の物思い

初出 : 2015/10/27



新撰組あまり知らない頃に書いたのでご容赦願いたいです。

本丸(ここ)にやってきて、一番初めに見た顔が昔なじみの顔で、柄にもなくほっとした。

だからって開口一番、あ、堀川はまだいないよ。は、ねーと思うんだが。


俺が来たときには、もう大和守もいたが、加州が言うにはそれでもその時点で存在が確認されていた打刀の中で最後にやってきたらしい。

そう、文句を言う程度には、こいつも寂しかったんだろう。

実際、国広がいなくて俺も調子が狂いそうだしな。


まあ、国広の代わりに、加州…は、いろいろと忙しいみてぇだったが、大和守と、それから…之定がよくそばにいた、と思う。

大和守はともかく、之定に対しては初めはどう接していいのか正直わからなかった。

藤四郎らが言ってるような、兄弟刀、とは少し違ぇ気がしたんだ。

なにせ、打った刀匠からして違うし、時代だってうんと離れてる。

ただ、向うは気にした風もなく、少しばかりほかの刀剣に対するよりも、気さくに接してくれてたように思う。

主が言うように、弟分ってのが正しいんだろうな…。


と、こんな感じで[[rb:この本丸 > うち]]では同派は和気あいあい?と過ごしてるんだが。



「兼定、何考え事してんの。

堀川が来たってのにさー。」


俺の羽織の端をつかんで小走りに進む大和守が文句を言う。


「あー、いや、その国広のことなんだが。」


あいつ、ここになじめると思うか?


その言葉に、足がピタリと止まる。


「そうだね…。そこは、少し僕も心配かな…。」


だって、あいつ、味方(僕たち)以外受け付けなくなってたもんね…





****************





堀川が、急に倒れたとき、オレは驚きすぎて動くことが出来なかった。

全員でひとしきり騒いで、ひとまず、本体のある刀掛の前に寝かした後にようやく頭が回りだした。


「…そういやぁ、最近堀川ぼーっとしてること多くなかったか?」


加州に大和守も言われてみれば…、という顔をしている。


「…俺の、せいかもしれん。」


そう力なく呟いたのは長曽祢さんだった。

全員の視線を受け、続ける。


「最近、自分のことを贋作だという声が妙に聞こえてくる、と言っていた。


俺は、気にすることはない、主の期待に沿えるよう働いていれば大丈夫だと返したんだがな。」


それが、この結果だ。と肩を落とす。


「でも実際長曽祢さんの方がよく言われてる気もするけど…。」


おずおずと切り出した大和守に皆がまた頭を抱える。


「あー、気のせいかもしれねぇが」


もしかして、主の態度のせいか?


オレの言葉に、沈黙が広がる。

長曽祢さんに、目で促されて、続ける。


「近藤さんは、長曽根さんのこと何か言われても、俺は信じてるからなぁって切り上げるだろ。


でも、主は、言わせとけ、って無視している。」


そりゃあうちの主だって、こいつのこと信じてるさ。


「だが、態度に出さない分、堀川は拠り所を失ってる…って言いたいのか。」


言葉を引き継いだ長曽祢さんに黙って頷く。


「堀川が言ってたんだ。主が、こいつが俺にとっての堀川国広だって宣言してから意識がはっきりしだしたって。」


「で、今のこの状況はその逆ではないか、ってことだな?」


でも、と大和守が声をあげる


「それじゃあ、解決策はない、ってこと?」


再び沈黙が広がった。


「いや、方法はあることにはある。」


視線が声の主に集まる。


「なに、こやつに堀川国広だって自信を持たせればよいのだろう。」


「でも、それができる土方さんには、僕ら伝えるすべがないじゃない」


オレも、加州も大和守の言葉に頷く。

と、長曽祢さんがこっちを見てニヤリとした。


「ほれ、ここに土方歳三の()()がいる。


脇差の本分は、本差の()()

自信を付けさせるには、ぴったりの刃選じゃないか?」


その予想外の言葉に、オレはポカンと口を開けるしかなかった。

呆然としていたのは、加州たちも同じだったが当事者でないだけ立ち直りが早かった。


「そうねー。丁度俺らの中じゃ、()()()、だし?


お世話されても違和感ないよね。」


「そうだね、清光。


そうだ、兼定。これから堀川のこと、国広って呼びなよ。


…。ねえ、兼定?聞いてる?」


大和守に覗きこまれて、ようやく復帰した。


「ん?あぁ。すまん、聞いてなかった。


っていうか、どういうことだよ、長曽祢さん!?」


「だーかーらー、兼定は、堀川のこと国広って呼んで、堀川にお世話されてればいいの!」


ね?と確認する清光に頷く長曽祢さん。

いやいや!おかしくね!?


「国広って呼ぶのは、まだわかる。わかるんだが…


なんで世話にならないといけねーんだ!」


「「「だって最年少だし(から(な))」」」


さすがに頭にきて、つかみかかろうとした。


「のもだけど、一番の目的は堀川に、居場所を作ることだよ。」


「それにものを頼むには名を呼ぶだろう?」


「あと、一番頼りにされてるって実感できるよね。」


「お前ら、からかうのが目的じゃなくてちゃんと考えてんのな…。」


「え?もちろんからかうのも…ちょ、やめろって、兼定、痛い!」


一度ひっこめた手を伸ばし馬鹿なことを言う加州の頭を鷲掴みにする。


「はぁ、わかったよ。そうすりゃいいんだろ。」


まぁ、オレにやれることがあるなら、やらねぇとな。


***********************




「まぁ、そう仕向けたのはオレたちなんだけどな…。


でも、そうしたからこそ、函館の後もしばらくあいつは自我を保ててた。

酷なことをしたかもしれねーが、オレもあの直後に一人になってたらどうなってたかわかんねーしな…。」


こんなこと、大和守に言っても仕方ないんだが。


「なじむっていうのもそうだが、その…ほかの国広もいるだろう。


今まで話してた感じだとたぶん、あいつらなら受け入れてくれるだろうが…」


「堀川の方が、ってことか。


そこはなるようになることを信じるしかないんじゃないかな…。」


「それもそうだな。


じゃ、さっさと行くか。」


お互いに先につこうと牽制した結果、最後には駆け足になって之定に怒られるのも、

山姥切と山伏(国広の兄弟)がちゃんと国広を受け入れてくれるのも、

蜂須賀のことを思い出したオレたちがまた頭を抱えるのももう少し後の話。

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