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バカはしんでも治らない  作者: すし河原たまご
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トラウマ

[ウツロの森]


王都から南にまっすぐ進んでいくとある、横に広がる広大な森。

森には野生の動物、虚獣(きょじゅう)が潜んでいる。

森は東にある雪原エリアと西にある火山エリア付近まで広がっており、そちらへ近づくにつれ虚獣のランクも上がっていく。

森の中央辺りは、主にE級の虚獣が多く出現し、学校の生徒や新米冒険者などが実戦経験を積む場所としては最適だ。

森を抜けると、黒の大陸に繋がっている橋がかかった大きな崖に出る。



♢♢♢



約2時間後、ウツロの森の入り口付近に着く。

目の前には川が流れている。

アカサは馬車からすぐ降り、ゲロ臭いズボンをすぐさま洗いに行った。


「うわっ、冷た」


手をそっと川に入れると、あまりの冷たさに声が出てしまう。

この川は東にある雪原エリアから流れてきていた。


アカサは仕方なくズボンを脱ぎ、パンツ一丁で洗い始める。

しばらくするとシークが馬車の中から出て来て、背伸びをする。


「んー・・・っと、よく寝た。あれ、アカサなにしんての?何でパンツ一丁でズボン洗ってるの?」


シークは神力(シキ)を使った疲れ、レナの腹パンで一部記憶が飛んでいた。


「お前のせいだわ!お前が神力(シキ)使って未来見た時に、ゴウが吐く事教えてくれなかったからこうなってんだわ!」


ブチギレである。

アカサは洗ってるズボンを、勢いよくゴシゴシしながら唾を飛ばすぐらい怒鳴り散らかす。


「えーそんなことあったっけ?覚えてないや・・・ところで、なんかお腹が殴られたみたいに痛いんだけど、知らない?」


「自業自得だわ!」


アカサが怒鳴り散らかしてると、馬車からレナと大きな体が小さく見えるくらいぐったりしたゴウが、降りてくる。


「うぷっ・・・やっと着いた・・・」


「ほら、大丈夫?背中さすってあげるから」


「す、すまん」


レナはゴウの背中をさすりながら、アカサたちに声をかける。


「アカサ!シーク!みんなも着き始めたから、そろそろ集合みたいだよ!」


「分かった」


アカサは洗うのをやめ、冷たく濡れたズボンを履き、シークは顔に飛んできた唾を川の水で洗ってから集合した。



♢♢♢



「それでは、全員が着いたので今回の・・・どうしたアカサ、ズボンがびしょびしょだが?」


「いや、気にしないでください」


「そ、そうか」


ドルト先生は、言われた通り気にせず話を進める。


「今回の実戦の目的は、虚獣の魂石(こんせき)を3つ、持って帰ってくることだ」


魂石とは虚獣を倒した時に虚獣から出てくる石みたいなもので、主に武器や[アーティファクト]を作る際に使われる。


「そして、もし危なくなったら全力で逃げろ。学校を卒業して冒険者になった時、1人で行動することだってある。その時は誰も助けてくれない。あらかじめ自分の力量を把握して、敵わないと思ったら戦わずに必死に逃げる。それが、冒険者として生き延びていくコツだ」


何年間も冒険者として活動し、生き延びたドルト先生の言葉は生徒たちの心に重く刺さる。


「以上だ。リン先生は何かありますか?」


「ドルト先生の言う通り、敵わないと思ったら全力で逃げて下さい。仮に怪我しても、私が直ぐに治しますから」


初めての実戦という事もあり、回復魔法(ヒールスペル)が使えるリン先生も同行していた。


「よっ!流石、英雄の弟子!」

「リン先生のお陰で安心して実戦に挑めます!」


生徒たちから安心と信頼の声が上がる。

すると、


「皆んな!ありがとう・・・ありが・・・ずびっ・・・ありがどねぇ〜〜!」


リン先生は嬉しそうに泣き始めた。


「リ、リン先生!?お、落ち着いて下さい!」


「わだしはこんなに生徒達から信頼されてるんだ〜!見てるか、あのクソババァ〜!出発前に顔出してやったら、『妾は忙しいのじゃ。妾の所に来ている暇があったら生徒達と話して、信頼される先生になるんだな』とか言いやがって、クソババァが〜!何で、100歳過ぎてるのに小ジワの1つも無いんだよ〜!私が頬でもつねって増やしてもいいんだぞ〜!」


「・・・よし、それでは準備できた者から行動開始!」


リン先生の相手が面倒だったのか、ドルト先生は師匠の悪口を言い始めたリン先生を無視して、実戦開始の合図をした。

生徒達もリン先生を無視して、各々森へ入って行く。

アカサは森へ入る前に3人に声をかける。


「それじゃあ、また後でな」


「うん!また後で!」


「が、頑張ろう!」


「おう!」


時刻はお昼前。


4人はバラバラに森へ入り、初めての実戦が始まった。



♢♢♢



アカサは虚獣と戦えるこの日を待っていた。

虚獣と対峙するのは初めてじゃない。

しかし、その時はオーラの使い方も知らず何もできずに、ただ目の前で母親が殺されるのを見てるだけだった。

その時から弱い自分が嫌いになり、ひたすら強くなることだけを考えてきた。

そして、オーラの使い方を学びやっとここまで来た。


ガサガサッと、前にある茂みが音を立てる。


─ 今日、虚獣(きょじゅう)を倒してあの時の弱かった自分はもういないことを証明してやる!


「アー」


不気味な鳴き声を発しながら、茂みから虚獣が出てきた。

その姿は人の形をしており、大体身長が170センチくらいの大きさだ。


「・・・人型のジンか」


[虚獣 ジン]


その姿は人間と同じ姿をしており、大きさは個体によってバラバラで、見た目も強さによって少し変わる。

E級、D級のジンは何も持っておらず、素手で襲いかかってくるが、C級から上は黒色の剣や斧といった様々な武器を持って襲いかかってくる。


アカサは剣、体にオーラを纏い戦闘体制に入る。


─ 落ち着け、ジンは学校でやった模擬戦通りに戦えば倒せる相手だ。しっかり相手の動きを見ながらやれば・・・


息を整え、落ち着こうとするアカサ。

しかし、自分の足が震えている事に気づく。


─ 何だこれ・・・まさか、怖いのか虚獣が・・・


アカサは震えている足を必死に止めようとする。


─ くそ、何のためにここまでやって来たと思ってんだ・・・!虚獣(こいつ)らを倒すために、力の使い方を学んできたんだろ!なのに、身体が思うように動かない・・・!


昔、対峙した虚獣(きょじゅう)とは姿も大きさも全く違った。

しかし、虚獣(きょじゅう)の黒く影のような身体、赤い瞳、それらがアカサの足を震わせる。


「アー」


そうしてる間にもジンは不気味な声を発し、襲いかかってくる。

手のひらを広げ、叩くように振り下ろしてくる。


「くっ!」


何とか後ろに跳んで避ける。


─ 身体が思うように動かない・・・手足が震える・・・このままじゃ・・・


『僕はとっくにアカサのこと、ライバルだと思ってたよ』


トラウマで手足が震える中、シークのこの言葉が頭に浮かんだ。


─ ・・・ははっ、そうだ、何ビビってんだ俺は・・・こいつより強い奴とやって、そいつからライバルって言われたんだ。俺は、あの時とは違う・・・強くなってんだ。E級の虚獣なんかにビビってられるか!!


アカサの手足は自然と震えが止まり、自信を取り戻したアカサは改めて剣を構える。


「アー」


再び、ジンは叩くように手のひらを振り下ろしてくる。


「あいつに比べたら全然遅い!」


アカサはそれを避けながら、横を通り過ぎるようにジンの胴体を斬る。


ザシュ


「アー・・・」


その一撃でジンは倒れ、煙のように消えていく。

そして地面には魂石が落ちた。

アカサはそれを拾い、そのまま強く握りしめた。


─ やっと・・・やっと虚獣を倒せた・・・あの時もこの力があれば助けれたのに・・・母さん・・・。


アカサは初めて自分の力で虚獣を倒すことができ、強くなったことを実感して少し安心した。

しかし、悲しい過去は簡単には忘れられない。

あの時自分が強ければ、あの時父親が助けてくれてたら。

アカサはそんなことを思いながら、しばらくその場に立ち尽くした。


続く


























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