表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
バカはしんでも治らない(編集中)  作者: すし河原たまご
62/64

サラVSヨウ(14)

時刻はお昼過ぎ。


休憩の為、日課の虚獣(きょじゅう)退治を一旦終え、集落に帰ってきたウェイン達、みんなと昼食を食べるサラ。


いよいよ明日は待ちに待った学校の入学式。

入学式は明日の午前中。

その為、サラは今日の夕方には王都に着き、王都の宿で一晩を過ごす予定だった。


つまり、みんなからしたら、3年間学校に行ってしまうサラと過ごせる最後の時間。

いつもは各々の家で食事を済ませていたが、今日は入口の所にある集落の広場的な所に集まり、みんなで食事をする事にした。


食事を終え、サラとウェイン達が談笑し、オットが1枚の紙を見ている中、1人食事を取らずに集落の外へ出掛けていた父親が帰ってきたのにウェインが気づく。


『あ、(カシラ)!どこ行ってたんですか?ご飯食べ終わっちゃいましたよ』


『ごめん、ごめん。街道までお客さんを迎えに行っててね』


『え!?だ、誰か来るんですか!?』


オットが聞く。


『うん』


『か、(カシラ)!先に言っといてくださいよ!心の準備が!』


集落に10数年ぶりの来客。

オット達はもちろん、サラもあたふたする。


『そんな慌てなくても大丈夫だよ。みんな会ったことある人だから』


『会ったことある人・・・?』


ムクロに住むツミビトであるオット達と会ったことある人は限られていた。

オット達は直ぐにある人物の顔が浮かぶ。


すると、カタカタと馬車の車輪が回る音が聞こえてくる。


『ん、来たかな?』


段々と音は近くなっていき、集落にある大きな荷物なども乗せられる質素な馬車とは異なり、人が乗る専用の綺麗な馬車が集落の開いている門の目の前で止まった。

そして扉が開くと、ビシッとした服を纏い、頭にはシルクハットのような帽子、そして右足が義足の紳士風なおじ様が微笑みながら姿を現した。


『お久しぶりですね、みなさん。大きくなりましたね』


『ディ、ディアロ様!!』


姿を現したのは元英雄、そしてサラが通う学校の理事長ディアロだった。

オット達は子供のようにディアロの下へ駆け寄り、嬉しそうな表情で口を動かす。

それを微笑ましそうに一歩後ろで眺める父親にサラは声を掛ける。


『お父さん、あの人誰?』


『ん?ああ、あの人はディアロ様。元英雄でサラが明日から通う学校を始めた人だよ』


(あの優しそうなおじいさんが学校を始めた人・・・そして、元英雄・・・!)


サラは視線をオット達に囲まれてるディアロへ戻す。


『・・・何でウェイン達はあんなに嬉しそうなの?』


『ディアロ様は昔、ウェイン達にオーラの使い方だったり、戦い方を教えてくれた人なんだ。ここ数10年は忙しかったのか中々集落に来る機会が無かったから、ウェイン達は嬉しいだろうね』


『ふーん』


まるで大好きなおじいちゃんに久しぶりに会い、話を聞いてほしい孫のようにはしゃぐオット達。

いつもしっかりしているみんなが子供のようにはしゃぐ姿を初めて見たサラは、驚きつつも安心した。

父親や自分以外にも心を許せる相手がいる事に。

そして、それと同時に少し嫉妬する。

今まで自分だけに構ってくれていたウェイン達が、自分を差し置いて他の人と楽しそうにしている姿を見て、思わずムッとしてしまう。


『・・・ん?』


すると、ディアロがそんなサラの視線に気づく。


『みなさん、少しいいですか』


オット達をかけわけサラに近づき、声を掛ける。


『あなたがサラさんですか?』


『は、はい・・・!』


『そうですか。この度は学校に入っていただきありがとうございます。これからよろしくお願いしますね』


『・・・!!』


サラにとって集落以外の人との初めての会話。

家族同然のウェイン達が心を許している人物だったが、それでも少し不安で緊張していた。


しかし、杞憂だった。


ウェイン達に囲まれてよく顔を見れていなかったが、目の前に来てサラは理解した。

ウェイン達が心を許している訳を。


ディアロの瞳には無かった。

王都で人々がウェインに向けていたあの嫌な目が。

この人はウェイン達がツミビトと知っているのに1人の人間として・・・1人のシロビトとして見ている。

微笑み、少し垂れたディアロの目を見てサラはそう確信すると、嫉妬なんてものは直ぐに消えた。


(この人だ・・・この人みたいにみんなを見て欲しい!その為には私が凄い冒険者にならなきゃ!)


『こちらこそ、よろしくお願いします!』


サラは気合の入った声で頭を下げると、ディアロはうんうんと頷いた。


『ところで、何でディアロ様はここへ?』


ウェインが聞く。


『私はサラさんを迎えに来たんですよ』


『お嬢を?』


『私がお願いしたんだ。サラが学校に行きたいとディアロ様に手紙を出した時にね』


と、父親が会話に入る。


『そういえば、いつだかは忘れましたが結構前に冒険者ギルドでの手紙の受け渡しを(カシラ)に頼まれて何回かしましたね。あの相手、ディアロ様だったんですね』


この世界では基本的に手紙はポストのような物に入れ、配達員が馬車で街や村などに届けていた。

ポストは大きな街などに配置されており、村や集落に住む人達は近くの大きな街まで手紙を出しに行くか、配達員が手紙を届けに来た際にお願いするかのどちらかだった。

そんな中、ムクロはツミビトの住む集落という事もあり、手紙が届く事も当然、出す事もゼロに等しかった。

出したとしても連絡する相手はディアロしかいなかった為、父親とディアロは何か連絡をとる際は冒険者ギルドを通してするとあらかじめ決めていた。

父親はそのやり取りを2週間に1回、食糧などを買う為に王都へ行くウェイン達にお願いをしていた。


『私はあまり王都に行くのは控えたいし、送る為だけに片道約2時間の移動をウェイン達にお願いするのもアレだったから、ディアロ様にお願いしたんだ』


『私も久しぶりにみなさんに会いたかったですからね』


ディアロのその一言にウェイン達が嬉しそうな表情をする中、オットが手を上げる。


『あの、その学校のことなんですが、改めて学校の紙を見てて気づいたんですけど、入学式の前日に先生達と軽い模擬戦を行うって書いてあるんですが?』


『ああ、それなら問題ありません。サラさんの模擬戦はここで私と行うつもりでしたから』


ディアロはそう言うと、サラの方へ顔を向ける。


『そんなに緊張をしなくても大丈夫ですよ。私は手を出しません。現状の実力を測り、クラス分けの参考にするだけですから』


そんな事を聞いていなかったサラは少しうろたえたが、こんな事で一々うろたえてちゃ凄い冒険者になれないと直ぐに覚悟を決める。


『早速ですが、始めても構いませんか?』


『お願いします!』


それから、サラはディアロと軽い模擬戦を行い、模擬戦が終わるとディアロとウェイン達は会えていなかった間の積もった話をしながら、大いに盛り上がった。

その光景にサラはやっぱり少しムッとしてしまうが、それを父親はやれやれとなだめた。


そして、時間はあっという間に経ち、時刻を示す針は3時を指していた。

集落から王都までは馬車で約2時間程。

そろそろ出発しないと暗くなってしまう。

サラはディアロから渡された学校指定の白い制服に着替え、ディアロと共に集落の入り口にとめていた馬車の前に行き、父親達も送りに行く。


『それじゃあ、行ってくるね』


『うん、頑張って。後・・・ムクロ(ここ)で育った事は冒険者になるまでは言わないようにね』


『わかった』


『・・・それじゃあ、いってらっしゃい、サラ』


『いってきます!』


父親は少し不安そうに、そして寂しそうにしながらも微笑みながら送り、


『お嬢〜〜!!いっでらっしゃい〜〜!!』


ウェイン達は泣きながら送った。


そんな父親達にサラは気合の入った表情で、笑顔で手を振り馬車に乗った。



生きる為に罪悪感を持ちつつも、罪を犯してしまった罪人(ざいにん) ツミビト。

そんなツミビト達の愛を受けながら育った少女サラは10歳の頃、父親達がそのツミビトと知った。


父親以外は牢屋に入り、反省した事を知った。


その父親も自分を育てる為にまだ牢屋に入っていないと知った。


そんな父親達は今は毎日傷だらけになりながら、虚獣(きょじゅう)と戦っている。

それなのに、王都にいる人達はツミビトという理由でみんなを嫌い、恐がり、避けているのを知った。


そして、父親が自分を育てる為に牢屋に入らなかった事で余計にそうなっているかもしれない事も知った。


これは恩返しだ。

赤子の頃から母親がいなかった寂しさを埋めてくれたウェイン達、そして父親への。


これはツミビト達に愛を貰いながら育った自分にしかできない事だ。

みんなも本当は他の人と変わらない優しい人達なのだと知ってもらう事は。


(いっぱい虚獣(きょじゅう)を倒して凄い冒険者になって、みんなから感謝されて、お父さんが牢屋に入らず私を育てた事を良かったって思ってもらいたい。そして、ツミビトだって普通の人と変わらない優しさを持ってるって分かってもらうんだ!)


そんな思いを胸にサラは16歳になる年、冒険者になるべく、初めて集落外(そと)へと旅立った。


続く







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ