サラVSヨウ(13)
それから、サラは学校に通える年齢になるまでの間、集落で今まで通りの生活を過ごす。
朝起きて、午前中は大人達に稽古をつけてもらい、午後は自由に集落内で過ごす、そんな生活を。
そんな中、サラが15歳になる年、その生活に1つの刺激が加わる。
その刺激とは、虚獣との戦闘だ。
ウェイン達が王都で持って帰って来た学校開校の紙には、学校で何を行うかざっくりだが書かれていた。
その中にあった『2年生からは虚獣との実戦を行う』、この一文を見た時から父親は決めていた。
入学までに一度だけで良いから、サラには虚獣と戦って対峙する事に慣れてもらいたいと。
そして、サラにE級の虚獣を倒せる実力がついたと判断した父親は、入学まで約1年と迫っていた今日、初めてサラを連れて森へ入る。
『みんな、準備はいいな』
集落の門の前でオットがそう問いかける。
そのオットの後ろには槍を持ったサラと父親が立っていた。
そして、その3人の眼前にはウェインと集落に住む男女20人全員が武器を装備し、その問いに静かに頷いた。
『・・・門を開けろ!』
オットがそう指示を出すと、集団から男2人が飛び出し、紐を引っ張る。
門はゆっくりと上へ上がり、段々と外の景色があらわになっていく。
門が完全に上まで上がると男2人は紐を固定し、再び集団に戻る。
『よし・・・行くぞぉー!!』
『『『うおおぉぉーーー!!』』』
オットの気合いの入った声に、負けじと他の人たちも声を上げ、武器を掲げた。
そこへ、
『いや、みんなは留守番だよ』
と、父親は微笑みながらオットの肩を掴み、そう言った。
『えっ・・・?』
オットは頭の言っている事がよく分からず、2度、3度とみんなの声がうるさくて耳を塞いでいたサラと微笑む頭がいる後ろ。
そして、オット同様、頭の言った事がよく分からず、目を点にしているウェイン達を交互に見る。
そして、落ち着いたのか、再びサラと頭を背にし、ウェイン達に向けて口を開く。
『ごほんっ・・・みんな、準備はいいっ─』
『みんなは留守番だよ』
遮るように再び言う。
『・・・マジですか?』
『うん』
振り返ったオットに曇りのない返事を返す。
行く気満々だったウェイン達は団結し、声を上げる。
『自分もいきたいです!』
『俺もだ!』
『私もよ!』
そんな声に頭は落ち着いて対応する。
『でも、全員が行ったら集落の見張りはどうするんだい?』
『『『ぐっ・・・!』』』
『それに、森は広いけどたまに冒険者に会う事がある。大人数で行って、目立ちたくないんだ』
『『『ぐっ・・・!』』』
納得する理由を言われ、口を閉じるウェイン達。
そんな中、オットが口を開く。
『じゃあ頭、何人くらいならついて行っても大丈夫ですか?』
『うーん・・・1人かな』
『『『・・・!!』』』
その瞬間、団結していたウェイン達にヒビが入り、すごい気迫で睨み合う。
そこへ、前に立っていたオットが首をゴキっゴキッと鳴らしながら、ウェイン達に近づく。
『さて・・・ついていけるのは1人・・・覚悟は出来てるな?』
皆は武器を地面に置いて輪になり、握った片拳をもう一つの手で包み込むようにし、胸の前で構えた。
『よし・・・始めるぞ』
オットの一言。
皆んなの瞳に、拳に力が入る。
そして・・・
『さいしょーは!ぐー!じゃんけん・・・!』
先着1名の席を賭けて、熱いジャンケンが始まった。
(やれやれ。みんな、サラが学校に行くってなってからベッタリだな・・・)
サラが学校に通うと決まった日、ムクロのみんなは素直に喜んだ。
しかし、翌日、みんなは気づく。
『あれ?学校に通うと言うことは、卒業するまでお嬢に会えないんじゃね?』と。
それに気づいた日から、みんなは今まで以上にサラの事を愛で始めた。
そして今日、そんなサラが初めて虚獣と戦う。
何としても同行したい。
しかし、それに同行できるのは1人。
みんなに気合いが入るのは必然だった。
そのジャンケンの様子をサラは嬉しそうに笑顔で見守る。
自分はこんなにも愛されているんだと。
そして、この人達に恩返しがしたい、改めてそう強く思った。
白熱したジャンケンは20人程が同時にしているせいであいこが何回も続き、約10分後、ようやく決着が着く。
『やったぁぁーー!!』
拳を掲げ、歓喜の声を上げたのはウェイン。
ウェインは嬉しそうに、地面に座っているサラへ近づく。
『お嬢!自分やりました!』
『ん?もう、終わった?』
『飽きてる!!』
みんなのジャンケンをずっと見てる事に流石に飽きていたサラは、地面に座り指でお絵描きをしていた。
もっと、『ウェインが来てくれるの!?やったー!!』的な事を想像してたウェインはガックリする。
そしてそこへ、
『決まった?』
『あっ、頭!』
『長くなるかと思って他の用事をしてたんだけど、ウェインの声が聞こえてきたから戻って来たんだけど』
『はい!決まりました!自分が行きます!』
『そっか。じゃあ、行こっか!』
『あっさり!!』
もっと、『ウェインに決まったんだ!安心だね!』的な事を想像していたウェインはガックリする。
(で、でも自分には熱い闘いを繰り広げたオットさん達がいる!みんななら、自分に祝福の言葉を!)
そう信じ、後ろを振り返る。
みんなは微笑えんでおり、ウェインへ歩み寄ってくる。
そして、先頭にいたオットはウェインの肩へ手を置く。
『ウェイン・・・』
『オットさん・・・!』
『今日の昼飯に虫が入ってたら、ごめん』
『その未来はみんな次第で変わりますよね!?』
微笑みながらも、真剣な目つきに見えたウェインは慌てるようにツッコむ。
『ふっ、冗談だよ。俺達の分もお嬢の勇姿、しっかり見届けるんだぞ!』
『・・・!はい!』
かくして、サラの初めての虚獣退治は父親とウェインが同行という形になった。
父親とウェインはドクロのマークが描かれた白いマントを羽織り、少し緊張気味のサラを連れて集落を出て森に入っていった。
結果としては、何とか1人でE級の人型ジンを倒す事に成功した。
危ない場面はあったものの、父親とウェインが手を出す事はなく、無事集落に帰還した。
その日の昼食はいつもよりも少し豪華な食事が出され、みんなでサラの虚獣初討伐を祝った。
ちなみに、ウェインの食事に虫は入っていなかった。
それから、サラは入学までの残り1年間に3回だけだが、再びE級の虚獣と戦い、見事倒して見せた。
そして、あっという間に1年が経ったある日、集落に1人の男性が訪れる。
ビシッとした服を纏い、シルクハットのような帽子を被り、右足に義足をつけた紳士風で優しそうな見た目のおじさん。
そう・・・訪れてきたのはサラが通う学校の理事長であり、元英雄のディアロだった。
続く。




