サラVSヨウ(8)
魂石を換金し、お金を手に入れたサラ達は王都の中心、王城がある王城広場へ道なりに進む。
広々とした広場に着くと馬車を止め、オットは再び御者台から降りた。
ここからは別行動をとるみたいだ。
オットは修理が必要な武器を直す為、南西エリアの鍛治工房へ。
ウェインとサラは食糧などを買う為、北西エリアへ。
オットは数本の壊れかけの武器と先程換金したお金を修理代分、別の袋に入れて工房へ向かった。
それを見送った2人は馬車を動かし、王都を囲む外壁ほど立派ではないが、高く頑丈そうな王城を囲む城壁の横を通り過ぎて北西エリアへ。
王都の北は住宅街や飲食店などがある為、南よりも人が多く、とても賑わっていた。
道の端には屋台が沢山並んでいて、嗅いだことのない美味しそうな匂いが、見たことのない食べ物がサラのお腹を刺激する。
午前中にムクロを出発し、ちょうどお昼時。
サラはお腹をすかしていた。
『ウェイン、お腹すいた・・・』
『そうですね。それじゃあ食糧を買うついでに、屋台で何か簡単に食べれそうなものでも買いましょうか』
『うん!』
それから、ウェインは目的の店の前に着くと馬車を止め、荷台に置いてある空の箱を持って食糧を買いに行った。
そして、買い終わると食料の入った箱を荷台に戻し、御者台に戻る事なく、近くの屋台で食べ物を買ってサラに渡した。
『お嬢。どうぞ』
手には焼いたお肉が棒に刺さっている食べ物を持っている。
『こ、これってお肉・・・!?』
『そうです。お肉です!』
『・・・!!』
ムクロでは基本的に集落内で育てている野菜、近くに流れている川から獲れる魚、そして王都で買ったパンなどを食べていた。
ウツロの森には虚獣意外にも野生の動物などが生息しているが滅多に見る事はなく、ムクロの人達にとってお肉はとても希少な食べ物。
もちろん王都で買って帰る事はできるが、1日、2日で食べてしまわないと腐ってしまうので、中々食べる機会は少なかった。
そんなお肉の刺さった棒をウェインは2本、サラに渡すと美味しそうに食べ始めた。
その後もウェインは食糧を買いに御者台から降りるたび、近くにある屋台で食べ物を買っては荷台にいるサラへ渡し、買い物を済ませいく。
目的のものを全て買い終えた2人は鍛冶屋に向かったオットと待ち合わせる為、王城広場へ戻る。
待ち合わせ場所にはまだオットの姿はなく、ウェインは馬車を道の端に止め、サラと一緒に屋台で買った食べ物を食べながら待つ。
サラはとても幸せだった。
初めての外の世界、初めての王都。
見たことの無い建物、数えきれないほどの人、食べたことのない食べ物。
夢が叶い、とても幸せだった。
ただ・・・1つ。
1つだけ王都にきて気になった・・・嫌だった事が頭から離れない。
『・・・ウェイン』
『何ですか?』
サラは荷台から御者台に座っているウェインに話しかける。
『・・・ウェインは嫌われてるの?』
『・・・急にどうしたんですか?』
『だって、歩いてる人達、皆んながウェインの事避けてるように歩いてるから・・・屋台の人だってウェインが来た時だけ怯えてるみたいだった・・・』
『・・・』
『何でなの・・・?』
『そ、それは・・・自分たちが・・・』
悲しそうな声でそう言ったサラへ、ウェインは言葉に詰まりながら口を動かす。
すると、ウェインは何かに気付き、サラへ顔を出さないように声を出さないようにと小声で言うと、少し開いていたカーテンを閉め、御者台から降りた。
困惑しながら荷台で息を潜めるサラの耳に、ウェインとオットではない男性の声が聞こえてくる。
『美味しそうな物、食べてんな』
『ええ、美味しいですよ』
ウェインは慣れた様子で答える。
声を掛けてきたのは若い新米冒険者。
その男性はサラが見た冒険者ギルドからこちらを睨んでいた人だった。
『ちゃんと、お金は払ったのか?』
『当たり前じゃないですか』
『当たり前か・・・おかしいな。その当たり前をしてこなかったのがお前らだろ?』
『・・・』
ウェインは何も答えない。
新米冒険者の男性は気にせず話し続ける。
『俺の実家は農業をしててな。親父達は毎日汗だくになりながら野菜を作りそれを売って生活してるよ』
男性は微笑みながら近付く。
『頑張って作った物にお金を払って買うのは当たり前だ』
次第に表情が変わる。
『だから・・・そんな当たり前も出来てなかった奴が普通に暮らしてるのを見てると腹が立ってしょうがない・・・!』
ウェインを睨み、怒りの声でそう言った。
周囲の人達は関わらないように見て見ぬ振りをする。
『今日もギルドで魂石を換金してたな。虚獣を倒して英雄気取りか?』
『そんなんじゃないです』
『じゃあ何だ?虚獣を倒して平和にすれば、いつか罪を許されるとでも思ってるのか?』
『・・・』
ウェインは目を逸らさず、男性を見続ける。
『何で普通に生活してる・・・何でずっと牢屋にいない・・・何でギルドやベテランの冒険者達はムクロが来ても何も言わない。[アクジン]じゃなくて[ツミビト]だからか・・・ふざけんな!』
男性はウェインの胸ぐらを掴む。
『あんな集落さっさと潰れちまえ!ずっと牢屋の中で反省してろや!楽しそうにしてんじゃねぇよ!』
男は声を荒げた。
ウェインは何も反抗せず、ただただその声を聞き入れ、荷台にいたサラは男性が何を言っているのか分からずただただ驚き、困惑していた。
すると、広場を警備していた騎士達が駆けつけて来る。
騎士達は興奮気味の男性を落ち着かせてウェインから遠ざけると、1人の騎士がウェインに近付き、羽織っていたマントをチラッと見る。
『そのマント・・・あまり問題は起こさないようにお願いします。ムクロだって目立ちたくはないはずです』
『はい、すいませんでした。気を付けます』
ウェインは頭を下げると、騎士達は新米冒険者の男性と共にその場を去って行った。
ウェインは御者台に座り、カーテンを少し開けてサラへ声を掛ける。
『お嬢・・・大丈夫ですか?』
『・・・ウェイン』
『・・・はい』
『嫌われてるのはウェインじゃなくて、集落に住んでるみんな、なの・・・?』
『・・・はい』
悲しそうな目で見つめそう言ったサラに、ウェインは小さく返した。
すると、遠くからこちらへ駆け寄ってくるオットの姿が見える。
オットは御者台に座っているウェインの様子を見て何かあったと察し、話を聞く。
『そうか・・・』
オットは話を聞き終わると、修理された武器を荷台に置いて御者台に座る。
『とりあえず、今日の目的は終わったから帰りましょう。お嬢、いいですね』
『うん・・・』
食料の確保、武器の修理という目的を終えた3人を乗せた馬車は王都を出て集落へ走り出した。
夢だった初めての外の世界、楽しく幸せだった。
しかし、王都を出る頃には幻だったかのように消え、サラの中には先程の男性の発言、そして買い物中、ウェインへ向けられていた皆んなの嫌な目だけが残った。
続く




