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バカはしんでも治らない(編集中)  作者: すし河原たまご
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サラVSヨウ(7)

『お嬢・・・お嬢!起きてください!』


『ん、んー・・・何、ウェイン・・・?』


サラは目を擦りながら起き上がる。

目を休まる為に寝転がっていたはずが、いつの間にか寝てしまっていたようだ。


『見えてきましたよ。王都!』


『・・・!』


その言葉を聞き、サラの目が大きく開く。

ウェインはよく見えるようにカーテンを手で持ち上げ、そこからサラは顔をひょこっと出す。

まだ王都までの距離は遠かったが、しっかりとサラの瞳には高く頑丈そうな壁がずらっとそびえ立っているのがうつる。


『あれが王都・・・!』


寝起きとは思えないほどに目は大きく開き、キラキラした瞳で遠くから王都の大きさに驚きながら眺めるサラ。

その姿を見てウェインとオットは嬉しそうに笑顔を浮かべた。

それからしばらくは荷台からあまり顔を出さないように、ウェインが少し開けたカーテンの隙間から王都を囲む壁を目に焼き付けた。


そして、馬車は壁を見上げるくらいまでに王都の南門に近づいた。

南門は基本的にウツロの森へ向かう道しかなく、門の前には冒険者達がウツロの森へ向かう準備などをしているのが見えた。

ウェインは振り向き、サラへ声を掛ける。


『お嬢、そろそろ王都に着くんですが、入るまでの間は顔を出さないようにお願いします』


『わかった・・・けど、流石に王都入ったら顔を出していいんだよね?』


『・・・じ、実は王都でもあまり顔を出して欲しくなくてですね・・・』


ウェインは気まずそうに返答する。


『・・・何で、何で顔を出しちゃダメなの?』


『えっと、それは・・・』


『これじゃあ、王都に来た意味ない・・・』


しょんぼりするサラの姿を見てウェインは申し訳なさそうに目を下に向ける。

すると、それを黙って見ていたオットが正面を向きながら口を開く。


『ウェイン、もういいだろ』


『オットさん・・・?』


『お嬢、思いっきり顔を出す事は無理ですが、前のカーテンはそのまま少し開けとくので、そこから覗いて見てください』


『オットさん・・・!』


体をオットの方へ向けて口を挟んでこようとするウェイン。

それをオットは左手をウェインの右肩にポンっと乗せて止める。

そして、サラの方へ振り返る。


『ただし、お嬢。何が起きてもしっかり受け止めてください。いいですね』


『・・・うん、わかった!』


真剣な眼差しでそう言ったオットに対して、サラは力強く返事をした。

そして、サラは王都に入るまで荷台に引っ込んだ。

ウェインはカーテン越しに荷台を心配そうに見つめる。


『お嬢・・・』


『ウェイン、(カシラ)も覚悟を決めてお嬢を外に出したんだ。俺達はそれを信じるだけだ』


『・・・はい』


そんな大人2人の会話が御者台から荷台にいるサラの耳に入る。


(初めての王都、楽しみだけど・・・何が待ってるんだろう・・・)


期待と不安を持ちながら馬車は王都へ近づいて行く。


そして、馬車は南門の目の前まで来た。

先程も言ったが南門は基本的にウツロの森への道しかない為、北門、東門、西門と比べて馬車や人通りは少なく空いていた。

門の前には門番の騎士が何人か立っていたが、サラを乗せた馬車は滞りなく門をくぐる。

すると、馬の足音がカコッカコッと、硬いものの上を歩く音に変わる。


『お嬢。王都に入りました』


オットは閉まっていたカーテンを再び少し開け、サラに声を掛ける。

サラは空いた隙間から両目を覗かせた。

その瞳に最初にうつったのは、石造りで建設されたでかい建物達。

そんな建物が何棟も並んでいる光景。

次に人。

とにかく、人。

その目まぐるしい数の人達が、でかい建物に出入りしたり、道を歩いている光景。

10年間、20人ほどの小さな集落で過ごしてきたサラにとって初めてみる王都の中は、まるで物語の世界の中を見ているような、そんな光景だった。


王都は中央の王城がある大きな広場へ向かうように、北門、東門、南門、西門から広々した通路が伸びていてる。

通路は馬車が通る道と人が歩く道で分かれており、その十字の形をした通路を区切りに、4つの区間に分かれている。


北東には住宅街、北西には食料などを売っている屋台や食事処、宿屋などがある区間、南東には様々な学舎がある区間、南西には冒険者ギルドと工房、武器や服などを売っている区間と分かれている。


ウェイン達が王都に来ている目的は虚獣(きょじゅう)を倒した際に落とす魂石(こんせき)の換金、武器の修理、食糧の確保だ。

その為、最初に向かうのは冒険者ギルド。

そこで、魂石(こんせき)を売り、資金を得る。


南門の入り口を少し進むと、馬車は一際大きな建物の近くに止まった。

サラはそれには気にも止めず、荷台から王都の光景を眺める。

すると、オットは御者台から降り、荷台の後ろに回るとカーテンを開け、サラへ声を掛ける。


『お嬢。そこの袋、取ってもらってもいいですか?』


『・・・これ?』


サラは袋を持つと、重そうにオットの元へ届ける。


『大丈夫ですか、お嬢?』


『お、重い・・・袋の中、何が入ってるの・・・?』


魂石(こんせき)ですよ。これを冒険者ギルドに売るんです。それじゃあ、行ってきます』


オットはサラから受け取った袋を片手で軽々しく持ち、カーテンを閉めてギルドへ向かう。

サラは再び正面の空いたカーテンから両目を覗かせ、左前に見えるオットが向かった一際大きな建物を見つめ、ウェインにしか聞こえないくらいの声で話しかけた。


『ねぇ、ウェイン。これが冒険者ギルドなの?』


『そうですよ、お嬢』


振り返り、ウェインもサラにしか聞こえないくらいの声で喋る。


『ウェインが言ってた通り、他の建物よりも大きいね・・・!』


笑顔でそう言ったサラに微笑み頷くウェインだったが、少しずつ神妙な面持ちになりゆっくり口を開く。


『・・・初めての王都はどうですか、お嬢。楽しいですか?』


『うん!楽しいよ!大きい建物が沢山あって、人だってこんなにいて・・・私、王都に来てよかったよ!』


『そうですか・・・それなら、良いんですが・・・』


声を弾ませ嬉しそうなサラを、ウェインは変わらず神妙な面持ちで見つめた。

すると、冒険者ギルドからオットが出てくるのが見えた。

手には魂石(こんせき)の入っていた袋を持っていて、中は換金した魂石(こんせき)に変わり、食糧などを買う際に必要なお金が入っていた。

オットはその袋を荷台に置いて御者台に座ると、再び馬車は動き出し、冒険者ギルドを通り過ぎていく。


サラは通り過ぎた冒険者ギルドが気になり、ふと後ろを振り返るとカーテンがちゃんと閉まり切っておらず、隙間ができていた。

その隙間から片目を覗かせると、ギルドの入り口で若い新米冒険者らしき青年がこちらの馬車を睨んでいた。


(あの目・・・)


それは王都に行く際、すれ違った馬車に乗っていた若い冒険者達がウェイン達を睨んでいた目と似ていた。


(何で、そんな目で見てくるの・・・)


サラはその視線に耐えられず、直ぐにカーテンをしっかり閉め、荷台に引っ込んだ。


続く


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