サラVSヨウ(5)
陽が落ちそうな夕方ごろ、ウェイン達が帰ってきた。
集落の入り口の門が開く音が聞こえると、サラは直ぐに家を出てウェイン達を迎えに行く。
『ウェイン・・・おかえり』
『お嬢!ただいまです!』
ウェインは元気に返事を返すと、馬車から降りて荷物を荷台から降ろし始める。
数人で荷物を降ろし終えると、1人がウェインに休むように言い、自分達は食料などを倉庫に運びに行った。
1人になったウェインにサラは駆け寄る。
『ウェイン・・・』
『どうしたんですか、お嬢?』
『王都ってどういう所なの・・・?』
『王都ですか?そうですね・・・まず、めちゃくちゃ広いです!』
『めちゃくちゃ・・・!?』
『めちゃくちゃです!まず、王都は頑丈で高い壁に囲まれていて、大きな門が構えてます。そして、その大きな門をくぐると、広々した通りがあり、様々な建物が建っています。その中でも最初に目に入るのは冒険者ギルドです!』
『冒険者ギルド?』
『はい!その建物が一際デカく、初めて王都に行った時は驚きました』
『ねぇ、ウェイン。冒険者ギルドって何?』
『えっと、冒険者ギルドと言うのは冒険者が仕事を・・・あっ!』
生き生きと喋っていたウェインだったが、突然口を手で塞ぐ。
『どうしたの?』
『・・・この前、頭にお嬢には外の事をなるべく話すなと言われてたのを思い出しました・・・』
ウェインは首を振りながら周りをキョロキョロと見回す。
『いいですか、お嬢。この事は内緒ですよ・・・!バレたら、頭に怒られちゃいます・・・!』
そう小声でサラに言うと、ウェインはその場を足早に去って行った。
(・・・お父さんのバカ・・・聞くくらい良いじゃん・・・!)
サラは顔を膨らまし、機嫌を悪くする。
(でも、冒険者・・・何でだろう、気になる・・・)
サラの中に冒険者という言葉が強く残った。
そして、その日の夜。
食事を済まし、寝床で寝る準備をしていたサラは、机に向かっている父親におそるおそる話しかける。
『・・・ねぇ、お父さん』
『どうしたんだい、サラ?』
『えっと、その・・・冒険者って、何・・・?』
『・・・どこで、その言葉を聞いたんだい?』
父親は机に向かったまま聞く。
『えっと・・・本!そう、本で見たの!』
サラはウェインに聞いた事がバレないよう、慌ててそう言った。
すると、父親はくるりと顔をサラの方へ向け、じっと見つめる。
『・・・』
『・・・』
『・・・ウェインに聞いたんだね』
『ち、違う!本!本で見たの!』
『そんな本ここにあったかな?それに、サラが本を読んだことなんてあったけ?』
『ひ、暇だったから読んだの!本は本棚の奥の方にあった!ウェインは関係ない!』
『・・・はぁー、全く、あの子は』
必死にウェインを庇うサラに押し負けた父親は、やれやれと頭をポリポリ掻いた。
『だから、ウェインを怒らないで!』
『怒らないよ・・・多分。・・・それで、何の話をしてたんだっけ?』
『冒険者って、何って話』
『そうだったね。そうだな・・・簡単に言うと、虚獣を倒して皆んなを守る人達のことかな』
『ふーん、そうなんだ・・・それじゃあ、お父さん達と同じだね!』
『うん、まぁ・・・そうだね』
笑顔でそう言ったサラに、父親は少し苦笑いで返した。
『冒険者・・・!』
そう小さく呟き、目をキラキラさせるサラの姿を見て父親はそっと口を開く。
『・・・サラ』
『何・・・?』
『外に、出たいかい?』
『・・・出たいよ。でも・・・お父さんを悲しませる方が嫌だからまだいいや!・・・私、眠いからもう寝るね。おやすみお父さん』
『うん、おやすみサラ・・・』
笑顔でそう言い眠りについたサラの小さな背中を、父親は悶々とした表情で見つめた。
そして、数週間が経ち、再びウェイン達が王都に行く日が訪れる。
サラはいつものようにウェイン達を見送る為、門の前にいた。
荷物を荷台に入れ終わり、出発の時が来る。
すると、遠くから父親もウェイン達を見送る為、こちらへ歩いてくる。
『準備は終わったかな?』
『はい!荷物も全部入れ終わってもう出発出来ます!』
『そうか、ご苦労様・・・』
父親はウェイン達に労いの言葉を掛けると、チラッとサラの方を見る。
『でもウェイン、まだ準備は終わってないよ』
『えっ?』
『・・・今日はサラも連れてってほしいんだ』
『!?』
サラ、ウェイン、そして周囲にいる大人達は驚きの表情になる。
サラは父親へ直ぐに駆け寄り、驚きながらも声を弾ませる。
『な、何で!?本当にいいの!?』
『うん。その代わり、ウェインの言うことは絶対に聞くんだよ』
『うん!分かった!』
サラは返事をすると、ウキウキで馬車に向かい荷台に乗り込んだ。
対してウェインは不安な表情でいた。
『頭・・・』
『ウェイン・・・君にはいつも辛い役目をおわせてしまって悪いと思ってる。そんな君にさらにこんな事をお願いするのはとても辛い・・・でも、ウェインだから安心してサラを任せられるんだ』
『頭・・・分かりました!自分に任せてください!お嬢のことは何があっても守りますから!』
『助かるよ、ウェイン』
元気に返事をしたウェインに頭を下げて感謝をした。
そして、ウェインともう1人大人が馬車に乗り準備が完璧に終わると、サラを乗せた馬車は集落の門をくぐり外の世界へと走って行った。
覚悟を決めてサラを外の世界へと送り出した父親だったが、馬車を見つめる目はとても不安そうで心配そうだった。
続く




