サラVSヨウ(4)
(は、ははっ・・・!これだよ、これ!この身体の奥が熱くなるような感じ!初めて戦った時・・・いや、あの時以上だ!)
サラの凄まじいプレッシャーに充てられ、額から冷や汗が流れる。
しかし、ヨウは自分が冷や汗を流している事には気づかず、嬉しそうな表情でサラから放たれるプレッシャーを浴びる。
ヨウは改めて気合を入れ、槍の持ち手を強く握り構える。
すると、サラの身体がピクっと動く。
(来るっ!)
ヨウは僅かなサラの動きを感じ取り、間合いに入られないようにと槍を突こうとする。
しかし、サラの踏み込みは速く、既に間合いへ入られる。
ヨウは突くのを辞め、すぐさまガードに徹する。
(ぐっ!さっきまでとは力も速さも全然ちげぇ・・・!)
サラは以前として、槍を払うように攻撃をしてくる。
しかし、その攻撃は先程までとは違い、鋭く速い。
まるで大きな鎌で刈り取られるような、そんな攻撃だった。
そんな凄まじい攻撃を嬉しそうに楽しそうに受けているヨウに対し不快な気持ちになったサラは、口を開き声を荒げる。
「何で、そんな顔してるの!私は怒ってるの!その顔をやめて!」
「ははっ!そいつは無理な話だ!約1年、俺はずっと待ってたんだ!お前と本気で戦える日を!笑うなと言われる方が無理だ!おらぁ!」
凄まじい攻撃の僅かな隙をついて、サラの本気で戦う姿に興奮し感化されたヨウの鋭いひと突きがサラの顔を掠める。
サラの攻撃の手が若干止まると、ヨウは追撃しようと構える。
サラはそれに気付き後退するが、直ぐに地面を蹴り、間髪入れずにヨウヘ再度攻撃を仕掛けた。
(・・・外の世界で・・・集落以外で初めて私を見てくれたシーク先輩をバカにしたあなたは、絶対に許さない!!)
♢♢♢
王都から南東、ウツロの森近くにムクロと呼ばれる男女15人程が住んでいる小さな集落がある。
そこはサラの父親がつくった集落で、サラはそこで赤ちゃんの頃から生活していた。
サラ以外は皆んな20近くの大人で、決して裕福な暮らしとは言えなかったが、温かいご飯、暖かい寝床、それなりの生活を優しい大人達に囲まれ、何一つ不自由なくサラは成長していった。
ただ、成長していく内に一つだけ不満が出来る。
『お父さん・・・お外に出たい』
夕食を食べている最中、目の前に座っている父親へサラは顔をぷくっーと膨らませ、不満げな顔でそう言った。
『外は虚獣が出るから危ないよ』
優しい声でそう返すと、スープを一口スプーンですくい飲む。
『・・・それは何回も聞いた』
『それじゃあ・・・』
『私、もう10歳だよ。虚獣だって怖くない。小さい頃から特訓だってしてきたもん・・・!』
サラは少し怒りながらパンをかじる。
そんなサラに困りながらも、父は持っているスプーンを机に置き口を開く。
『・・・虚獣との戦いは何が起こるかわからない。どんなに強い人でも命を落とす事はある。そんな危険なこと、サラにはしてほしくない』
『・・・』
『サラは私の宝物なんだ。絶対に失いたくない。お願いだ、わかってくれサラ。今はまだ、集落の中で過ごしてほしい・・・』
『・・・わかった』
優しい声、そして悲しい目をしてそう言った父を見て、心の底から自分のことを大事にしてくれているんだと感じたサラは素直に返事をした。
『ありがとう、サラ・・・それじゃあ、ご飯食べちゃおうか!』
『うん・・・!』
その後は仲良く食事をし、一緒のベットで眠った。
サラの言う『外』とは、家の外ではなく集落の外という意味だ。
サラは生まれてから10年、集落の外へ一度も出たことがなかった。
先程も言っていた虚獣に襲われたら危険だから、というのも理由の1つだ。
ムクロはウツロの森の近くにあるということもあり、虚獣が森から出てきて集落を襲うなんて事が多々あった。
(何でお父さんはこんなとこに集落をつくったんだろう?もっと、安全な所につくればよかったのに・・・)
サラは度々そう思うことがあったが、父に問いかけることはなかった。
それからサラは、外に出たいという気持ちを抑えながら1日1日集落の中で過ごしていく。
そして数日経ったある日。
サラは集落の入り口である大きな木の門の前で、大人達が馬車に荷物を積んでいるのを見つけると、近寄り声を掛ける。
『ウェイン・・・』
『お嬢!どうしたんですか?』
サラが声を掛けたのは、この集落の長である父親の次に腕っぷしが強く、信頼されているウェインという好青年だった。
年齢は20歳で、他の大人達もそれくらいの年齢だったが、ウェインが特に小さい頃からサラのお世話をしていたからか、サラにとって歳の離れた兄のような存在になっていた。
『また、王都に行くの?』
『はい!魂石も溜まってきましたし、そろそろ食糧も尽きそうなので』
ムクロに住む人達は虚獣と戦い、倒した際に落とす魂石を王都で売り、お金に変えて生活をしていた。
『・・・』
サラはウェインの顔をじっと見つめる。
『そんなに見つめても、王都には連れていきませんからね!』
『・・・ケチ』
サラは首をプイッと横に向ける。
すると、サラは遠くからこちらへ歩いてくる父を見つけると、その場を小走りで去っていった。
その様子を見ていた父親は、癖毛でボサボサな髪をわしゃわしゃしながら近寄り、ウェインに声を掛ける。
『準備はどうだい?』
『頭!もう、終わります!』
『そうですか、ご苦労様・・・いつも悪いね。辛い役目をおわせて』
労いの言葉をウェイン達に掛けると共に、申し訳なさそうな顔でそう言った。
『何言ってるんですか、頭!頭のおかげで普通に暮らしてられるんです。このくらい、何でもないです!』
それに対し、ウェインは元気な声でそう返した。
そして、馬車に大量の魂石が入った袋と食糧などを入れる木箱を入れ終わると、ウェインともう1人の大人はグレー色のドクロマークが入った少しボロボロの白いマントをなびかせ馬車に乗り、2人で王都へ向かった。
その様子をサラは遠くから羨ましそうに眺めていた。
続く




