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バカはしんでも治らない  作者: すし河原たまご
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ライバル

アカサは模擬戦の怪我を治療するために医務室に向かう。


「失礼します」


ドアを開け医務室に入るとショートヘアでメガネをかけた綺麗な女性が座っていた。


「あ、きたわね。さぁアカサ君、ここに寝そべって」


彼女はこの学校で生徒達が戦闘などで傷ついた体を治療してくれるリン先生だ。

希少な回復の[魔法(スペル)]持ちで、医療に関してはトップクラスだ。


「今日も体ボロボロね」


「そうっすね・・・」


沈黙が続く中、先生が口を開く。


「・・・さっきシーク君も来たけど、あんなに傷だらけの彼を見たのは初めてよ。強くなったのねアカサ君」


「まぁ・・・でもドルト先生が止めずにあのまま戦ってたら、負けてましたよ・・・」


「・・・ふふっ、似たようなこと言うのね。あなた達」


「えっ?」


バチン!とリン先生はアカサの背中を強めに叩く。


「はいっ!終わったわよ。もう暗いんだし早く寮にもどりなさい」


「いっ!そんなに強く叩かないでくださいよ。ありがとうございました。それにしてもさすが英雄、[命殿](メイデン)の一番弟子。もう体動かしてもどこも痛くないですよ」


「・・・ありがとね。でも師匠はもっと早く的確に治療できるから・・・まだまだね」


リン先生は少し、しゅんとした顔になる。


「何言ってるんですか。先生がいるから安心して模擬戦ができるんです。もっと自信持ってください」


謙遜しているがリン先生がこの学校にいるから無茶な模擬戦ができてると言ってもいい。

それほど凄い力を持ってる人だ。 

ただ、たまに・・・


「ずびっ、ずびっ、ありがどねぇ〜。ごんな私を褒めてぐれでぇ〜・・・ずびっ、ずびっ」


めちゃくちゃ情緒不安定になる。

顔がもう涙と鼻水でぐちゃぐちゃだ。


「お、落ち着いて先生!顔がすごいことになってますから!」


「うわぁ〜ん!ごめんね〜!生徒に気をつかわせるなんて、こんなんだから30過ぎても結婚相手が見つからないんだぁ〜〜!このままじゃ100歳過ぎても医療の事ばっか考えててずっと独り身の師匠みたいになっちゃうよ〜!うわぁ〜ん!」


ついに師匠の事までディスり始めた。

こうなるともう止まらない。

アカサは露骨にめんどくさそうな顔をする。


「あ、じゃあもう帰りますね。治療ありがとうございました。失礼しましたー!」


アカサは扉をガッと開けガッと閉め小走りで帰る。


「うわぁ〜ん!あのクソババァ、もうちょっと弟子に優しくしてもいいじゃないのよ〜!うわぁ〜ん」


リン先生の声は廊下を出てしばらくしても聞こえてきた。


「ふぅー危なかった」


─また、師匠になんか言われたんだな。まぁ、しばらく1人にしてれば落ち着くだろう。


アカサはやれやれと寮へ帰る。


シークは先に治療を済ましてる。

もう部屋にいるはずだ。


ガチャ


扉を開けると風が顔に吹いてきて一瞬、アカサの髪が乱れる。

シークはベランダから外を眺めていた。


「・・・シーク」


「アカサ!・・・こっち来なよ。風が気持ちいいよ」


アカサは何も言わずにベランダに出る。

しばらく沈黙が続き風で揺れる木々の音だけが聞こえる。

そして、ようやくアカサが口を開く。


「・・・ライバルだってさ」


「えっ?」


「ゴウに言われたんだ、模擬戦の後・・・俺はずっとおまえの背中を追いかけてた。でも今日、初めて隣に並べた気がした。それに気がついて俺はおまえ・・・シークが追い抜く存在に変わった」


「アカサ・・・確かに最初は力の差はあったと思う。ただ、君の成長速度は異常だった。今日だって先生が止めずにあのまま戦ってたら結果は分からなかった。それほどまでに今日のアカサは強かった」


シークは居合を受けたお腹に手を当てながら話す。


「・・・だから、僕からしたらとっくにアカサのことをライバルと思ってたよ」


「そ、そっか」


アカサは照れくさそうに返事をした。


「あっ、そうだ。そういえば医務室行く前にドルト先生に呼び止められてたよね。あれ何だったの?」


「ああ、あれは・・・」



♢♢♢



『じゃあ今日はここまでだ。各自怪我した人は医務室に、そうじゃない人は速やかに寮に戻るように』


『ありがとうございました!』


アカサ達は挨拶を済ますと各自行動に移す。

ドルト先生に言われた通りアカサは医務室に向かおうとすると、


『アカサ、ちょっといいか』


『あっ、はい』


アカサは剣を壊した事を怒られるんじゃないかと、不安そうに先生に近づく。


『な、なんすか』


『あの構え・・・居合はどこで知ったんだ?』


真剣な顔で聞いてくる。

剣を壊したことじゃないと知るとアカサはホッとし、いつも通り喋る。


『あ、あー、あれはシークから聞いたんですよ。ほらあいつ英雄オタクじゃないですか。それで同部屋なんで、毎夜いろんな英雄のこと話してくるんですよ』


『それだけか?』


ドルト先生は詰める。


『え、えっーと後は・・・』


─ 何なん、この人こえーよ!何、そんなに居合するのがダメだったのか!?『居合の構えした人は死刑!』とかそんな怖い事、学校に入る時言われたっけ!?


アカサはパニックになりながらも質問に答える。


『え、えっと後は・・・シークの話を聞いてるうちに確か母がその構えを見せてくれたことを思い出したんです。俺がちっちゃい頃・・・』


『お母様が!』


『はい・・・』


アカサの表情は懐かしそうに笑っている。

しかし、どこか悲しげな表情でもあった。


(・・・なるほど。いや、それだけであんな完璧な居合が出来るのか?)


『そこから今までずっと居合の練習はしてきたのか?』


『いや、そこからちょくちょく教えてもらいながらやってましたけど、母が病になってからはやらなくなりました・・・その後、母が亡くなってからはシークからリョーマの事を聞かなきゃ思い出せないくらいには忘れてましたね・・・』


『そうか・・・すまなかったな。辛い事言わせてしまって。それでは、医務室行ってから寮に戻るんだぞ』


『いやいや、全然大丈夫です。それじゃ医務室行って来ます』



♢♢♢



こんな感じでどこで居合を知ったか、どれくらい練習してたかをあの後聞かれていた。


「・・・へー、そんなこと聞かれたんだ。確かに英雄リョーマのこと話してた時にそんな事言ってたね・・・っていうかアカサ、英雄のこと嫌いなのに英雄の技使うんだね〜」


シークはこっちを向きニチャチニャしたムカつく顔で見てくる。


「なんだその顔は、別にいいだろ!」


「そうだね〜。そんなの個人の自由だもんね〜」


さらに煽ってくるシークのムカつく顔をアカサは何とか無視すると、シークは急にスンッと表情を戻し、口を開く。


「・・・そう言えば、アカサって何で英雄の事嫌いなの?」


「ん?何だよ急に」


「いや、出会った頃は聞かないようにしてたんだけど、この1年間僕が英雄の話をしても嫌々ながら聞いてくれたし、本当はそこまで嫌いじゃないんじゃないかなぁ、って」


「あれはお前がしつこいから、仕方なく聞いてただけだ!」


「じゃあ、嫌いなの英雄?」


「・・・」


─ 英雄・・・むしろ前は好きな言葉だったかもしれない・・・だって、英雄(それ)は母さんが親父によく言ってた言葉だったから。


「ああ、今も嫌いだし、嫌いな理由なんて簡単だよ。俺は知ってるから、大切な人を見捨てて英雄になった奴がいる事を・・・」


「・・・それって、アカサのお父さんの事?」


「・・・あいつは俺や母さんを見捨ててまで英雄になる事を選んだ・・・!家族を見捨ててまで欲っする言葉なんて無くなった方がいい・・・!」


怒りで声が少し震える。


「アカサ・・・」


「・・・そっから英雄なんて言葉嫌いになって、そのまま英雄自体も嫌いになった、以上」


「そっか・・・」


1年越しにアカサが英雄嫌いな理由を聞いたシークは、寂しそうに言葉を吐く。


「・・・まぁでも、今日の昼にも言ったけど前よりは嫌いじゃ無くなったよ。この1年でお前にいろんな英雄の事を聞かされて、凄い英雄もいる事を知ったからな」


「・・・!そっか!」


シークは笑顔で嬉しそうな表情を浮かべる。


「僕はいろんな人に英雄の凄さを知って欲しいんだ。誰かが苦しんでたり、困っている時に救ってくれる人達がいる事を。そして、僕はそんな英雄になりたい!誰かが困ってたら助けるし、見捨てたりなんか絶対にしない!僕の知ってる英雄は・・・僕のことを救ってくれた英雄はそんなんじゃなかったから!」


シークは空に向かって、力強く宣言するように言葉を放つ。

そして、アカサの方へ顔を向ける。


「だから、僕はアカサの事も見捨てないよ。絶対に!」


「・・・!」


側から聞いたら根拠のないただの発言だ。

しかし、1年間同じ部屋で過ごし、お互い切磋琢磨し合った仲だからこそ、何故かシークの言葉がスッーとアカサの中に入っていく。


「・・・そうだな。お前はそう言う奴だよな」


「僕が困ってたらアカサだって助けてくれるだろ」


「まぁ・・・気が向いたらな」


「おいおい!そこは助けるって言う所だろ!」


─ 本当、不思議な奴だ。シークと話してると自然と落ち着く。


いつの間にか、父親への怒りはどこかへ消えていた。

心が落ち着いたアカサに眠気が襲ってくる。


「ふぁ〜・・・もう寝ようぜ」


「そうだね」


2人は部屋に戻りベランダの扉を閉め、ベットに潜る。


自分達を見て笑っている不気味な存在に気づかず・・・。


「ふふっ・・・ようやくですね」


続く


























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