ゴウVSカタン
子供の頃、誰しもが一度は大なり小なり夢を持ったはずだ。
◯◯になりたい!
◯◯をしたい!
と。
もちろん、子供の頃に何となく思っただけの事、本気で叶えようとする人は多くはないと思う。
ただ、中にはその理想・・・夢を本気で叶えようと努力する人もいる。
しかし、成長していくたびに現実を目の当たりにして、人は挫折しその夢を諦める。
♢♢♢
「おらぁ!」
ゴウは直進的に向かってくるカタンに両手剣を振り下ろした。
カタンはそれを紙一重で避けると、両手に持っている短剣で2回斬りつけ、直ぐに距離をとる。
(2回斬られたが、そんなにダメージはない・・・ただ、このまま斬られ続けられるのもまずいな)
カタンは身軽さを生かし懐に潜り込み、短剣で斬りつけ直ぐに距離をとるヒットアンドアウェイの戦いをする。
(ギリギリだったけど何とか避けれた。俺の体じゃ、あの両手剣を一発もらっただけでおしまいだ・・・)
対してゴウは、威力のある両手剣を力のまま振り、一撃で仕留めようとしていた。
両者、遠い間合いから睨み合う。
(俺の力で2回斬ったくらいじゃ、そんなにダメージを与えられないのは分かってる・・・分かってるけど、くそっ、平気そうな顔しやがって!)
カタンは再び勢いよく突っ込んで攻撃を誘う。
ゴウは今度は両手剣を横に振った。
それに対して、カタンは舌打ちをしながら仕方なく高く跳んで避ける。
何故なら、その斬撃はスライディングで避けるには低く、中途半端に跳べば足を斬られる、そんな絶妙な斬撃だった。
ゴウは横に振った両手剣に振り回されることなく、持ち前の力で制御して、すぐさま空中にいるカタンへ両手剣を縦に振った。
ガードする事はできる。
ただ、カタンの武器は短剣。
両手剣を正面からまともにガードすることは難しい。
それに、カタンの体格ではガードした所でそのまま叩きつけられて大ダメージを負うことは、自分でも理解していた。
(くそっ!)
カタンは唇を噛み締め『負ける』そう思った瞬間、前髪の隙間からゴウの顔がチラッと見えた。
(・・・ふざけんな・・・何、笑ってんだ・・・ふざけんな!!)
カタンの中で怒りの感情が爆発する。
「舐めんなぁ!!」
怒りの声を発すると、カタンは空中で体を捻りゴウの斬撃を避けた。
そして、懐に潜り込んで今度は4回斬り、すぐさま距離を取る。
「ぐっ!」
ゴウは斬られたところを抑え、少し苦しそうな表情になる。
すると、
「何笑ってんだよ、デカブツが!俺のこと見下してんだろ!チビだから!非力だから!」
カタンは声を荒げ始めた。
「急にどうしたんだ?俺は別に見下してなんかない!笑ってたのはただ・・・」
「黙れ!」
カタンは前髪をくしゃくしゃして、怒りをあらわにする。
「こっちは必死でやってんだ!お前らデカブツと違って、一撃でも貰ったら終わりなんだよ!」
カタンは力強く地面を蹴った。
(さっきよりも、速い!)
ゴウが両手剣を振る余裕もないくらいの速さで近づき、カタンは両手に持っている短剣で連続攻撃をする。
「ぐっ!」
いくら非力なカタンの攻撃といえど、凄まじい猛攻。まともにくらい続けるとまずいので、ゴウは必死にガードする。
「反撃してこいよ!俺の攻撃なんて効かないだろ!デカブツには!」
♢♢♢
カタンには夢があった。
それは冒険者になること。
きっかけは子供の頃に家族で王都の外へ出かけた際、虚獣に襲われそうなところを冒険者に助けてもらったのがはじまりだった。
この世界ではよくある話だ。
それから、カタンは冒険者を目指し始まる。
体力をつける為に走ったり、筋力をつける為にトレーニングを始めた。
しかし、中々筋肉はつかず、身長も160センチいかずに止まってしまう。
確かにカタンの両親は細身で身長も高いとは言えなかった。
それでもカタンは両親を恨まず、必死に冒険者になる為に努力をして学校に入った。
学校に入る際に行った先生との模擬戦の順位は下から数えた方が早かったが、それでもカタンは諦めずに、
『学校に入れば、俺みたいにチビで非力でも冒険者になれる!』
そう思って入った。
しかし、待ち受けていたのはどうしようもできない現実だった。
周りはデカいやつばっかで、カタンの次に身長の低い男性でも170センチはあった。
その時点で少し心は折れる。
そして入学式を終え、昼食を挟み、午後。
生徒同士での模擬戦があった。
カタンは初め、片手剣を選んだがどうにも上手く振ることができず、仕方なく短剣を選ぶことに。
対戦相手は180センチくらいあるまぁまぁガタイのいい男。
カタンは短剣を振り必死に攻撃するが、男は平気そうな顔でその攻撃を耐える。
そして、見下すようにニヤニヤしながら片手剣を振り下ろした。
しかし、それをカタンは簡単に避けて見せる。
男は必死になって剣を振るが、一向に当たらない。
それからどちらも倒れる事はなく先生が止めに入り、カタンの初めての模擬戦は引き分けという形で終わった。
授業が終わると対戦相手だった男はカタンを呼び止め、人気のない所に連れて行く。
『何してくれてんだ、チビが!』
男はカタンの服を掴み投げる。
カタンの背中は壁に激突した。
『ぐっ!何すんだ!』
『何すんだじゃねぇよ!お前のせいで恥をかいたじゃねぇか!虫みたいに鬱陶しく動きやがって!俺の方が強いんだから、さっさとくたばっとけよ!』
『何でお前の方が強いって分かるんだよ!初めの模擬戦では入学前の順位が近い人と戦うんだろ!』
『はぁ?何言ってんだ?』
男は見下すようにニヤニヤする。
『お前みたいチビで非力な奴が、俺より強いはずないだろ。現実を見ろよ』
『はっ、現実を見るのはお前もだろ。お前はそんな奴に一撃も当てられなかったんだからな』
カタンもニヤニヤしながら、男を煽る。
『う、うるせぇ!そもそも、お前なんかが冒険者や騎士になれるわけないだろ!』
『っ!そんなの分かんないだろ!俺は冒険者になる為に必死にやってきたんだよ!』
カタンは怒り、男のお腹に思いっきり拳をぶつけた。
『はっ、きかねぇよ。おらぁ!』
『ぐぁ!』
男はカタンのお腹を蹴り、吹き飛ばす。
『冒険者になる?ははっ、笑わすなよ。人にすらまともにダメージを与えられない奴が虚獣を倒せるわけないだろ。これ以上、惨めな思いしたくなかったら、さっさとこの学校からいなくなるんだな。お前は冒険者にはなれない』
男はそう言うと、見下すように笑いながら去っていった。
(くそ、くそがっ!たまたま体がデカく生まれただけのくせに・・・笑いやがって、見下しやがって!絶対にゆるさねぇ!)
カタンは地面に座り、怒りの涙を流した。
その日から、カタンは男を見返す為に努力する。
あの男に何を言われようが、無視し続けた。
そして、ある程度のオーラの扱いを学び、何回も模擬戦を繰り返していくうちにオーラの量も増えていき、身体能力が上がったカタンはある程度ダメージを与えられるくらいまでになっていた。
しかし、それでも他の人よりは力が弱い。
カタンは斬っては避け、斬っては避けを繰り返し、じわじわと毒のようにダメージを蓄積させ、ようやく自分を馬鹿にした男を倒すことができた。
(・・・勝った・・・は、ははっ、何だよ・・・こんなもんかよ、デカブツが!)
それからカタンの中では、体格がいい奴、身長が高い奴が虚獣のように敵に見え始める。
見下されないように、笑われないように必死に強くなろうとした。
♢♢♢
(1回1回の攻撃が弱いなら100回、それでもダメなら1000回斬ればいい!俺にはそれしかできないんだよ!)
カタンの猛攻は、さらに激しくなる。
「ぐっ!」
苦しそうな表情はしているが、それでもゴウは倒れない。
「ははっ、こんなに斬ってんのにまだ倒れないのかよ!もう逆に笑えてくる、自分の力のなさに!」
カタンは乾いた笑いをしながら必死に攻撃をする。
乱れる前髪の隙間から見えるカタンの目は少し潤んでいた。
「本当に羨ましいよ!そんな恵まれた体を持ってたら冒険者になろうとしても、夢を持ったとしても見下されないし笑われない!お前にこの気持ちは一生分からないだろうな!」
カタンの猛攻は止まらない。
続く




